東雲色に魅せられて。
今回は「早起き」について。
朝早く起きることが習慣になって久しい。農家になったことがやはり主たる要因で、早朝に収穫や出荷準備の作業を行う、いわゆる「朝仕事」が多いのは、就農した時点での予想通りではあった。それに加えて、個人的な趣味として早朝のランニング、いわゆる「朝運動」が、こっちは想定外だったけども定着した結果、朝仕事がない時期にも早起きするようになり、「通年で早く起きる人」になってしまっていた。
この「早起き」というやつは、習慣になればそれほど苦ではなくなる。さすがに真冬の氷点下はとてつもなく寒いので、走りながら「何故俺はこんなことを?」と思うことはあるけども、大抵の「早朝」は、静かで、きれいで、清々しいので、それを体感できることがモチベーションの一つになっていたりもする。
道路の交通量も少ないし、田舎なので元から人とすれ違うこともほぼ無い。空気も凛としているし、夜が明けていく空は見惚れてしまうほど。最近は、夜明けの空でも、「朝日が顔を出した後」よりも、「朝日が出る少し前」の空の方が好きだなということに気が付いた。朝日が出てしまうと、何となく「終わった」感が出てしまう気がするのだ。一日の始まりを告げる日の出のはずなのに。せっかく出てきた太陽に申し訳ないとは思うけど、「さぁ朝だよーもうすぐだよー!」という期待感をにじませる、日の出前のオレンジ色の空の方が好きだ。最近はそれを見たくて走っていたようなところもある。そういう明け方の東の空のような明るいオレンジ色を「東雲(しののめ)色」というらしい。覚えてから使いたくてしょうがない言葉だったのだけど、日常生活では一度も使う機会が訪れたことはない。今回ようやくの初利用。めでたい!
そんな僕の「早朝」も、ぼちぼち変わり目を迎えつつある。前にも書いたことがあったけど、「朝仕事」が始まる季節がもうそこまで来ていて、それはつまり「朝運動」の終わりでもある。実際すでに先月から始まっていて、例のソラマメの「秋まき」に手を出したことが大きかった。例年通りの「春まき」だと、収穫は6月末から7月初旬なので、これから追い込み作業が立て込んでくる。ただ、「秋まき」の場合は、播種時期が早い分、収穫時期も早いので、ちょうど今頃が収穫を迎える作型で、従来の「朝仕事」よりも早い段階で仕事があれこれ増え始めた。しかも5月は代掻き・田植という水田作業のピークとも重なり、なかなかにタイトなスケジュールを連日組むことを余儀なくされ、必然的に早朝の時間を、「朝運動」から「朝仕事」に使わざるを得ない日が少し前から増えていた。
上で書いた通り、早朝は清々しいので、「走る」のにはもってこいだけど、当然「働く」のにも当てはまる。最近は特に日中の気温が高いので、早朝の少しの肌寒さがかえってちょうどよかったりもするし、早朝に仕事をいくつかこなしておくと日中に余裕が出るので気が楽だ。それでもやはり「走りたい」という気持ちが抑えきれないこともある。
ここ数ヶ月は、月一のペースで「海」まで走っていたこともあり、先月は多少強引なスケジュールではあったけど、「月一」連続記録を更新してみた。2月から5月で4ヶ月連続を達成。ただ、6月になり、さっそく秋まきのソラマメの収獲が始まってしまったし、他にもあれこれ動き始まると、今月も行けるかどうかは微妙なところ。「朝運動」のシーズンオフ、「朝仕事」のシーズンインが、いよいよ到来してしまうのだけど、ついつい「朝の海」に想いは募る。
日の出のタイミングや雲の具合にもよるけど、朝方は波が少なく海面が穏やかで、そこに東雲色が反射する景色は、何度目でも、何分でも、見ていても飽きない。ただ、海まで行かずとも、いつものランニングコースや、畑やビニールハウスでも、たまの早朝にはその色の空を見ることが出来ることもある。東雲色に染められるソラマメを大人しく収穫するのか、それとも、穏やかに凪いで同じく東雲色に反射する海へと走るのか。どちらも贅沢な景色のような気もするけども、一つの朝にはどちらか一つしか選べない。豆か、海か。ソラマメか、空と海か。東雲の選択を迫られながらの早起き生活は、これからも続く。
とりあえず今回はこの辺で。またそのうちに。
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