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#31 宙に揺蕩う

飛行機がフライト中に揺れるというのはよくあることである。

そんな時、機内での客室乗務員の態度は大事だろう。
少しでも機体が上下しようものなら乗客としては不安になるところだが、乗員が何事もないような顔で普段通りに仕事をしているのを見ると安心するものだ。

昔、ある航空会社のフライトで、気流の悪いところを通るので揺れるという男性乗務員のアナウンスがあったのだが、それはこんな感じでなされた。
(既にグワングワン揺れている状態である)

「あ、、あ・・・た、只今、気流の悪いところをヒコ、、飛行して、しています。(ここから早口)みなさま、お座席にお戻りになりシートべルトをお閉っ!」

そこまで言うと放送はガチャという音と共に切れ、「え?」と思っているとアナウンスしたと思われる男性客室乗務員が前の方からダダダっと駆けてきて私の横を通過して機体後部へ。

目で追うと乗員用の座席に向かっている。
しかしあろうことか、そこには既に座っている人がいたのだ。
恐らく乗客がトイレから出たところで乱気流に突入したので座ってしまったのだろう。
すると

「こ、ここは私の席です。(アタフタ)ご自分の座席にお戻りになってくださいっ!(アタフタ)」

と、先客を座席から引き剥がした後スバヤク座り、乗客とは違う4点式のシートベルトをガチャンと締め、腕を組んでフゥとひとつ息を吐いて目を閉じたのだった。
ゆっくりと向き直った私は

(・・・ダイジョブなんだろうか。。)

とココロに影が差し、かなり不安になったことを覚えている。
乗務員の平然とした態度もサービスのひとつであると感じた次第。

また別の時。
アフリカの某国の航空会社に搭乗。
搭乗券に座席ナンバーも無いので不審に思いながら聞くと

「お好きなところへどうぞ」

国際線なのに自由席なのだった。

そして一般的なヒコーキというものは滑走路の端まで行ってから、進行方向に向かい機体をゆっくりと巡らせ、一旦エンジンが静かになった後「では飛びますよ」という感じでエンジンが咆哮し始めるというのが儀式的なものだと思うし、またそこに荘厳な雰囲気さえ漂うと云うものだが、この機は滑走路に入り、旋回したかと思えば止まることなくいきなりゴォ〜〜っと加速し始め「あらよッ」とゆー感じで離陸したのだった。
せっかちな江戸っ子が機長だったのかも知れない。
🛫

そしてその飛行機が目的地に近づき、高度を下げる頃には天候が悪くなり、メチャクチャ揺れはじめた。

機体はフワッと浮いたかと思えば急に沈み込む。
翼は右に左に上下する。
波に揺蕩う枯れ葉のようである。
窓から外を見ても少し輝きを失ったマットな感じの白い雲がただ見えるだけ。。

着陸態勢に入ってもまだそんな状態が続き、視界がほぼ無い中での着陸となることを理解する。

「おい、、頼むぞ江戸っ子。」

普段は明るい(というかうるさい)ラテン系の乗客達も鎮まりかえり、息を潜め手を握りしめているのが分かる。
何故なら私がそうだったからだ。

今、どれほどの高度なのか目視できないが、かなり陸地に近づいている筈だ。
固唾を飲んで外を見ていると、突然雲が千切れ、視界がクリアになる。
と同時に目に飛び込んできたのは雑木林。
かなり低空を飛んでいる。
機体は未だに揺れている。

「えっ?ここどこ!大丈夫なのか?」

と思った瞬間、翼の下に鼠色の舗装された道が現れ、もの凄い勢いで飛び去ってゆく。

「滑走路じゃん!」

グンと高度が下がり、ドスンとタイヤが地面に当たる振動の後にエンジンの逆噴射音。
猛烈なGを感じながら機体は急激に速度を落とし、窓外の景色の流れ方が緩くなる。

これでもう安全と乗客全員がホッとするのと同時に座席のあちこちから人質が解放されたように、拍手と歓声が上がる。

「ブラ〜ボ! !」
「ブラ〜ボ! !」
「ブラボー! !」
「ぶらぼぉぉぉ! !」(←私)
👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏
🎊🎉(←これは嘘だが)
の大歓声であった。

江戸っ子キャプテン、なんとかグッジョブ!👍

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