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幼馴染

オレは彼女を捨てて西に旅立つ。
もう会うことはないだろう。
思えば、オレたちの出会いは、
彼女がまだ幼かっだ頃に遡る。

初めの頃、彼女の母親は
オレが彼女に近づくことを嫌がった。
その頃のオレたちは、二人きりになれる場所でこっそり会うことが多かった。オレに会うと彼女は、それはそれは楽しそうに笑っていたな。

当時のオレは、彼女にあきられないように、いろんな衣装を身に纏い、彼女を楽しませたが、彼女はいつも

今回のも良かったけど、やっぱり普段通りのあなたが一番

と言っていた。確かに柄にもない、そんなカッコをしていた時期もあったっけ。

暫くして、オレは彼女の母親からも認められて、彼女のうちのパーティーには必ずよばれていたし、ときには彼女のお友達のうちにも一緒に出かけた。

一緒に泊まりがけの旅行にも、
何回となく行ったな。
特にキャンプ、楽しかった。
夜空にお星様がキラキラしてた。
2人で河原に腰掛けて、川の音を聞きながら、いつまでも星空を眺めていたっけ。

スティック状や小粒になって
箱に入ったオレを、彼女は華奢なハンドバッグに入れて、会社に連れて行ってくれたこともあった。

そして、どういう事情かわからないが、兎に角オレは、彼女の前から姿を消さなければならなくなった。
オレは、オレの代わりになりそうなヤツらを、彼女に紹介した。

うまい棒、コーンポタージュ、オニオンリング、

しかし、どいつもこいつも、オレの代わりになりはしなかった。

生きていれば、また出会えるはず。
それまで暫しのお別れね。

と彼女は、目にたくさんの涙を溜めて
コンビニの棚にあったオレを全て
買ってくれた。

あれから何年経ったのか。
風の噂に、キャラメルコーンのチーズ味なるものが出たらしいが、やはりオレの足元にも及ばないらしい。


(了)

擬人化されたスナック菓子と女の子が
手を繋いでいるイラスト

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