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チア

まみこ先生のレッスンは応援歌付き。
レッスンが終わると

さあ、明日も頑張って!

と言って、彼女がセレクトした応援歌をピアノで弾いてくれるのだ。

今日習ったところ難しかったけど、
練習がんばるね。先生。

先生、来週の発売会、がんばります。

明日から仕事頑張れそうです。

まみこ先生の応援歌のおかげで、生徒たちは
レッスンに来た時よりも、元気になって帰っていく。

今日はとある団体の月一例会。
長い時間、会議が開かれた。会議の終わりにメンバーみんなで目標を唱和した後、まみこ先生の応援歌の演奏が始まった。曲は、今日のメンバーの為にまみこ先生が特別にアレンジした応援歌メドレー。弾むような演奏で、聴いてるみんなの心も弾んだ。

会合が終わり、部屋から出て来たメンバーは、

難しい課題だけど、なんとかやり遂げるよう、頑張ろう。

昨日から落ち込むことばっかりだったけど、
今日の演奏でやる気が出てきた。ありがとう。

など、みんな口々に、まみこ先生に感謝の言葉を捧げた。

そんなある日、まみこ先生は自転車で転んで
腕を骨折してしまった。レッスンや会合の演奏は、暫くお休みしなければならなくなってしまい、先生はみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

今日もぼんやりと、演奏予定だった曲の譜面を眺めていると、どこからか歌が聞こえてきた。その歌は、先生が小さな頃に通っていた教室の先生が、レッスンの終わりに、来週も頑張ってレッスンにこれるよう、まみこ先生に歌ってくれた歌で、先生が一番好きな曲だった。

だけど一体だれが歌ってるの?空耳かな?

どうも歌声は外から聞こえ来てるようだ。まみこ先生は、窓を開けてベランダに出て、下にある芝生広場を見てみると、
そこには、生徒のみんなと例会のメンバーがいて、あのまみこ先生が一番好きな応援歌を歌っている姿が見えた。歌が終わるとみんなは

先生、早く良くなって!

しっかり治して!

と口々に励ましの言葉を叫んだ。

まみこ先生はお礼の言葉を叫ぼうしたが、胸がいっぱいで、ただただみんなに向かって、お辞儀をするのが精一杯だった。

(了)








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