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うつくしが丘の不幸の家

#うつくしが丘の不幸の家
#町田そのこ
#東京創元社
築二十五年の三階建て一軒家を購入し、一階部分を店舗用に改築。美容師の美保理にとって、これから夫の譲と暮らすこの家は、夢としあわせの象徴だった。朝、店先を通りかかった女性に「ここが『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」と言われるまでは―。わたしが不幸かどうかを決めるのは、家でも他人でもない。『不幸の家』で自らのしあわせについて考えることになった五つの家族をふっくらと描く、傑作連作小説。

ーーメモーーーーーーーーーー
たったそれだけ。そういうことって意外と多いのよねぇ。一生乗り越えられないだろうと思ってた問題だって、あるとき急にぱっと拓けたように解決することだってある。それって見る角度とか自分の心持ちとか、こんなことで?って笑えちゃうような些細な理由だったりするの。

やっぱり。椋本さんって、舌の教育を受けていない方なのよね。分かりやすくて濃い味を大量に食べることが何より素晴らしいと思ってる。たくさんの手間と食材を使った料理を味わって、その料理にどんなドラマがあったのか、どんな技巧が凝らされたのか、そんな風に料理を楽しむことを可哀相なことに教わってないのよ。

誰にどんな事情があるのか、どんな理由でそうしたのか、そんなことがは簡単に分かるものじゃないのよ。自分がまずたくさん経験すること、そして何度となく想像を巡らすことでようやく真実の近くまで辿り着くことができるの。それを怠ってる人に、そういう適当なことを吹聴されたくないわ!
それにねえ、あなたはしあわせがどうこう言うけれど、しあわせなんて人から貰ったり人から汚されたりするものじゃないわよ。自分で作りあげたものを壊すのも汚すのも、いつだって自分にしかできないの。他人に左右されて駄目にしちゃうなんて、もったいないわよ。

夢ってとっても乱暴な言葉だと思うの。言い換えれば我儘なのに、きれいな言い方をしているだけ。夢を叶えたい、っていうのは我儘を通したいっていうのと同じこと。それに、一生かけてでも叶えたいなんて言われたら、他人はそれをなかなか否定できないでしょう。ましてや、手助けすればどうにかなりそうなことなら、手を貸さざる得なくなるかもしれない。それって乱暴じゃない?夢なんて振りかざしていいものじゃないのよ。

ーー感想ーーーーーーーーーー

町田さんの作品は3作目。好きだなぁ~。
不幸の家と勝手に言われてるけど、そんなことは自分で決めるものだ!
住人たちの様々な物語。
その背景にはいろんな出来事があって、悩みがあって。
章ごとに全く違う生き方を見れて、おもしろかった。
町田さんの好きなところは最後ハッピーエンドとまでは言わないけど、
救いがあること。前向きになれること。希望があることを教えてくれる。
お隣の信子さんの存在が住人にとってはとてもありがたかったと思う。
愛に優しさにあふれている人は素敵だ。
でも、そんな信子さんにも若い頃には悩みがあって。
夢と言う言葉を乱暴だという視点は、今までなかったな。
自分がたくさん経験することで、
想像を巡らせることでようやく真実の近くまで辿り着く。
まだまだ私は経験も浅いけど、人からの話を聞くことで
私は自分が経験したかのように思えて、
真実とは違うかもしれないけど、
近くまで想像が巡らせれるようになったと思う。
信子さんの言葉が響いた本でした。

#読書記録 #萌本棚

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