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奇跡

#奇跡
#林真理子

男は世界的な写真家、女は梨園の妻
「真実を語ることは、これまでずっと封印してきました」

生前、桂一は博子に何度も言ったという。
「僕たちは出会ってしまったんだ」
出会ってしまったが、博子は梨園の妻で、母親だった。
「不倫」という言葉を寄せつけないほど正しく高潔な二人ーー。
これはまさしく「奇跡」なのである。
私は、博子から託された”奇跡の物語”をこれから綴っていこうと思う。

数々の恋愛小説を手掛けた林真理子が、一生に一度描かずにはいられなかった
”本当にあった”愛の物語。


「この指先で触れてみないと、その石肌の持つ性質が全て分からないんだ」
だから博子の肌に触れ、吸い込まれるような、というのは最大の賛辞なのだ。


互いが同じ感情同じ波で感じ合えること。これは奇跡かもしれないと思うほどの感動だった。


「綺麗だったんだろうな。博子ちゃんの着物姿は匂い立つほど美しいから」

「清之助さんにとって時間とは」という質問にこう答えている。
「ふつう、人生において時間の尺度は、生まれてから死ぬまでだと思うんですが、僕は表現者なのでそれよりもちょっと俯瞰して考えてみたいです。死ぬまででなく、時間が過ぎ去っても、普遍的に存在する、残る存在でいたいという思いがあります。衰えも時間とともに生まれるものだと思うので、衰えていくその事象さえも味方にできるように生きたい。時間とは自分をアップデートしていくためのものであり、また自分らしい生きざま、死にざまを含めて、すべてを残すために付きあっていかなければいけない生きもののような、友としてありたい存在だと思います」この記事について教えてくれた後、彼はこうつけ加えた。「これは今も作品が残っている、おじちゃんのことを言いました」


このストーリーを読んで私は"その時"だから2人が出会い、惹かれ、運命と思うほどの愛になったんだと思う。『奇跡』は”その時”だったんだと。”愛する”という行為を全うし、お互いの幸せを考え合う。これだけ惹かれあった人たちがいる。この人に出会うために生まれてきたとはっきり言えるほどの愛を紡げる人は、どのくらいいるのだろう。こんなにも愛おしいと思える人に出会えたことを私は素敵だと思った。

2人で過ごすときの心の豊かさが垣間見え、その自然で豊かな姿に人は惹かれるんだと思う。その姿をみている息子さんもこの3人の居心地が一番良いことだと幼いながらに母親の心境も悟り、その愛の近くで育ったことは財産だと思う。芸術家の田原さんの感性も知ることができて、田原さんから紡ぎ出される言葉は美しさを感じた。言葉は品格という優しさだと思うけど田原さんの紡ぐ言葉に、博子さんの上品さを感じ、この二人が紡ぐ愛の美しさを見させてもらった。田原さん博子さんの人柄が伝わるからこそ、その美しい感性の元で育った息子さんの歌舞伎を私は観てみたいと思った。


私は不倫について、他の人と違った解釈をしていると思う。世間とこんなに認識がずれているとアマゾンの口コミをみてさらに実感した。
少し前に作家さんが「不倫がダメとか、愛という崇高なことに条件をつけることだから、そっちのほうが不純な気がする」という言葉を見た時にはっとして、『愛に条件を付けることが不純』という観点でいうと、人間の本能的な欲に逆らうことは、自然の真意に反しているのかなと思った。
もちろん不倫となると、誰かを傷つけることになることが多いし、傷つけてまで自分が幸せになるなんてという意見もあると思う。反論する意見も理解できる。きっと反論する人達は、自分が守っている価値観を覆されて怒りを覚えるんだろうなと思う。でも、その価値観はあなたの価値観であり、他の人にとっての幸せはそれぞれ違うから、自分の価値観を相手に強要することは違うと思う。
私は不倫を肯定するわけではないけど、私はこの「不倫」という枠を外して『奇跡』を読んだから、素敵な愛のストーリーに捉えられたんだと思う。もし不倫という枠を外してみれない人には、この私が感じた感覚は分からないのではないかな。読む人の価値観によって捉え方が変わる本だと思った。

彼女の田原さんへの愛に触れ、私も大切な人を大切にしよう。感謝しよう。そんなお互いを真っすぐに想いあえる関係を築こう。これから2人で真っすぐな愛を育んでいきたいと思った。久々にこんなにふわふわとした感覚になったな。そんな記念日の今日。彼に感謝と愛を素直に伝えたいと思います。

#読書記録 #萌本棚

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