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美しいこと

美しいこと 赤木明登

出版社 ‏ : ‎ 新潮社

塗師・赤木明登がものつくる人々との対話から紡ぎ出した15の物語。

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「美しい」ということほど、誰にでも経験できることはない。

「きもちいい」や「おいしい」や「うれしい」や「たのしい」や「あたたかい」や「やさしい」に近いけれど、違う、もうちょっと抽象的な感覚として、僕の中にプログラムされていたんだろう。でも同時に「こわい」や「すさまじい」や「かなしい」や「さびしい」や「いたい」、さらには「きもちわるい」や「きたない」や「みにくい」の中にさえ、「美しい」ことがあるのを子どもの僕は知っていた。そうなるともう、「美しい」ってどういうことなのかさっぱりわからなくなる。子どものころならば、考えずにすんだものを、大人になってからあれこれと思い悩むようになってしまったのは、いやはや、めんどうなものだと我ながら思う始末。考えても考えても、いろんな「美しい」を結びつけているのが何だかわからないのに、思いもよらぬところで、「美しい」を経験し、感動させられてしまうので困ってしまう。いったい「美しい」って何だろうと。


ひとつの物語が生まれる場所に、ひとつ「美しい」があるんじゃないか。何かと何かが出会って、振動が生まれ、さざ波となり、新しい物語が始まる。その生成の現場に「美しい」はいつも立ち会っている。喜びであれ、悲しみであれ、もっとささやかなものであれ、人の心をふるわせる物語とともに「美しい」は生まれ、現れて、形になったものはまた何かと出会い、別の物語を生み出していく。


人と人、人とものは、必要とするものどうし必ず出会うように最初からなっている。


世界がいちばん静かなのは、夜が明ける前の一瞬だ。


人が手で作り出すものには、その手を使ってものを作り出す人の内面、心の動き、感情、思考、精神といったすべてのものが現れてくる。

「美しいものとは、その人の内側にある精神がきちんと現れたものです」


本当に美しいものに辿り着けるのは、人間だけなのだ。あっちに揺れ、こっちに揺さぶられしながら、その芯には、たった一つの本当の美しいものが確かにあることを知っている。

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「美しい」ということを深く考えたことがなかったけど、紡ぎ出される言葉たちは、人柄が表れ、深さがあり、これも美しいといえるものだと思った。

本当に美しいものに辿り着けるのは人間だけなのだ。この想いを感じ取れるということは人間だけの感性であり、美しいことを美しいと感じられる心を育み、多くの美しいものに触れる時間をとりたいと思う。

私はよく友人にお花を贈ります。視覚的にきれいなのはもちろん、香りもよく、お花は生き物だからこそ、エネルギーがあり、その場にお花があるだけでその場が一気に華やかになる。時には季節を感じ、心豊かな時間を感じて欲しい。まさに「美しい」と思える時間を贈ることのできるプレゼントだと思っています。

私も意識的に「美しい」ものに触れる時間を増やしたいです。


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