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monsterイタリアでの出来事① フィレンツェ編

red monster

いつも愛読しているLoris_M.さんの記事を読んで15年前のイタリア滞在中の記憶が蘇った。

Loris_M.さんは記事で「イタリアに住んでいる日本人と友達になったら精神衛生上良く無い」とおっしゃっている。

その理由はイタリア語を上手く話す日本人の存在だとおっしゃる。
共感できる事がmonsterにもあった。
monsterはイタリア滞在中、自分よりも上手くイタリア語を話す日本人と友達になったのはただ1人の青年だけだった。
一度目の滞在でフィレンツェに50年以上住む日本人ご夫妻を日本を発つ前に紹介され、とてもお世話になったがお友達と言うにはおこがましい。
語学学校で知り合った友達は今でも付き合いがあり、数年をかけて職を得てフィレンツェに滞在している人もいる。今となっては何の苦労も無いくらいに彼女達はイタリア語を話す。
怖がりの私は留学序盤の不安要素を少しでも無くしておきたくてある程度勉強をして行ったので語学学校では少し彼女達より先のクラスに入り留学をスタートした。
自尊心の強い私はその状況に満足していた。
語学学校に一緒に通う彼女達から「monsterちゃん、ここが分からないの、教えて」と可愛く頼られる事が嬉しかった。そして「私はみんなよりリードしているんだな」と認識した。

フィレンツェ滞在3ヶ月目の9月上旬、まだ真夏の刺す様な陽射しの週末に神戸出身の友達とヴェネツィアを訪れた。帰りのユーロスターで関西弁丸出しで喋っていたら、同じく関西弁を話す青年が話しかけてきた。
「すいません、関西からですか?俺、こっちに住んでてもう何年も日本人と喋ってなくて…関西弁がめっちゃ懐かしくて…この席空いてます?座って良いですか?」と聞いてきた。
関西弁が懐かしいなんて言われて断れるはずも無く、「空いてるしええんちゃう?次の駅までは大丈夫やろ」と指定席の空きを指して向かい合わせにして延々と喋り続け、青年はボローニャで降りてお別れとなった。
この青年をここでは、そうだなぁ…イルカとしておこう。180センチを超え鍛えられた体格に反して人懐こくて聴き心地の良い声の持ち主だったからピッタリだ。
イルカはイタリアに22才から滞在していた。語学学校へは通わず、イタリアで実現したい夢があり、その夢の為にリストランテの皿洗いバイトから厨房補佐、料理人をしたりファッション業界でもバイトをしていて勘の良さを買われ正社員になり、ヴェネツィア帰りの電車で出会った時にはイタリアに住んで4年になると言っていた。

イルカは先に述べた様に恵まれた体格を持ち、人懐こさ、関西のノリの良さ、頭の回転の速さ、そして私にとっては聴き心地の良い声だった事もあって一目惚れとは言わないが「可愛いな」と思った。
6つ年下のイルカは電車での出会い以降、時々メールをくれたり電話をかけてくれる様になった。すごく嬉しかった。
秋も深まってきた10月、イルカがフィレンツェまで会いに来てくれた。
その日の夕食、トラットリアでオーダーの時にイルカは私のイタリア語を「子供が話すイタリア語みたい」と言った。イルカは親しみを込めて言ってくれたと後で分かったが、私はとても恥ずかしかった。イルカの前ではイタリア語を話したくないと思った。
トラットリアのスタッフが料理を運んでくれたり何か質問したりしてきても少ない単語でしか返答しなかった。
元々言葉は通じれば良い、スキル不足だとしても身振りや表情で何とか相手を嫌な気持ちにさせない様に頑張ってきた。それでだんだんと話せる様になってきた事が嬉しい時期に「子供みたい」と言われて恥ずかしかった。しかも年下の男性にその様に言われて…
今だったら「子供みたい?それって、可愛いって事やんな?」と有無を言わさぬ圧で返せるのだけれど当時私は32才、人生でいちばん自尊心が強い時期を迎えており、どうしようも無かった。扱い要注意のmonsterだった。

その夜は何となく険悪なまま、イルカは私の下宿に近いB&Bに宿泊し、翌日を迎えた。
朝のバール。はい、またイタリア語でオーダーのお時間がやってきました。
モゾモゾと小さな声で大好きなハチミツ入りのコルネットとカフェラッテをオーダーしたが、カウンターの向こうから「なんて?ジャム入り?え?違うの?あぁ、ハチミツのほうね」と朝から陽気なバールのスタッフに大きな声で聞き返され、イルカからは「どーしたん、朝やし元気無いん?」と心配される。「ちゃうねん、あんたが隣に居るとイタリア語話しにくいねん」とは言えず、曖昧な笑顔で「ううん、大丈夫」とか何とか言って誤魔化した記憶。
この日は夕方にフィレンツェ中央駅にイルカを送りに行った電車の待ち時間で言い合いになった。

以下、フィレンツェ中央駅待合室からホームでのやり取り

イルカ「monster、イタリア語上手くなりたいんやったらもっと喋らなあかんで」
monster「そんなん、わかってる。ほっといて」
イルカ「わかってへんやん。全然イタリア語喋らへんやん、じゃあ今から日本語禁止な」
monster「わかった、じゃあ喋らへん」
イルカ「何でそんな機嫌悪いん?」
monster「……」
[電車が到着のアナウンス]
イルカとmonster、ホームに移動。
イルカ「ちょっとデカイ荷物だけ置いて戻ってくるから、ここで待ってて。まだ帰らんといてや」
monster、頷く。
イルカ「最後にmonsterの機嫌悪い顔見て帰るの、俺嫌や。フィレンツェ来て会えて嬉しかったのに何か機嫌悪そうで…」
monster「ごめん」
イルカ「monster、笑って」
monster、半泣きで「無理。ごめん、機嫌悪くて」
[列車発車のアナウンス]
イルカ「monster、元気でな、また連絡するから」と言って私の両頬を大きな手で挟み、キスされた。
颯爽と電車に乗り込むイルカを泣きながら発車した電車を見送った。
その場から動くことが出来ないmonsterの横を清掃車に乗ったおじさんが通り過ぎて行く。しかしすぐにバックして戻ってきた。monsterの横で停車し、「お嬢さん、悲しいお別れだったのかい?涙でbella orientale の顔が台無しだ」と言ってまた進んで行った。
(私はbella orientale を差別用語だと受け取っていない)

さて、その後イルカさんとフィレンツェ滞在中に会う事は無かった。メールや電話はたまにしていたけれど。

そしてmonster2度目のイタリア滞在、今度はボローニャでのイルカとのお話はこの次に。

baci baci baci 




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