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「『全米人気No.1』の野球チームにいたもうひとりのスズキ選手」の巻


 2003年8月2日の夕刻。某球場に行ってみると、長蛇の列。これみんな、チケットを買い求める人。もちろん、男性が多いが、女性グループや家族連れ、お年寄りの姿も結構見られる。下の写真に写っている左端は、電話やネットで前売り券を申し込んでおいた人の列。この日は、試合後に花火大会があるので、夕涼みの客が多かったのか…と思いきや、このプロ野球チーム、観客動員数全米No.1を誇るのだ。

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 もちろんニューヨーク・ヤンキースではない。
 実はこの球場、サクラメント・リバーキャッツのホームグラウンド「レリー・フィールド(Raley Field)」なのだ。
 サクラメントは、現在はサンフランシスコ・ジャイアンツの傘下だが、当時はオークランド・アスレチックスの3A(Triple A)のチームで、マイナー・リーグ観客動員数がトップだったのだ。
 最初にこの記事を書いた2005年は駄目だったが、あの頃オークランドは結構強かった。『マネーボール』の時期だ。しかし、ヤンキースでも来ない限り観客は少なく、人集めに苦心していた。ところが弟分のリバーキャッツは、こぎれいなスタンド、毎試合のように行われる子供向けのイベントやプレゼント(Give away)、芝生の外野席など、魅力あふれる演出で、多くの観客を動員していたのだ。

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 州都サクラメントには、メジャー球団が近くにないし(一番近いオークランドでも車で2時間はかかる)、バスケットボール(サクラメント・キングスの人気は地元ではすさまじいものがある)がオフシーズンになる夏には、スポーツファンや家族連れの受け皿になるという利点もあるだろう。
 正面のスコアボードは、お世辞にも見やすいとは言えないが、大画面のビジョンで選手を紹介するのは、メジャー級のサービスだ。ホームプレートから見て右側に見える金色の橋が架かっているのが、チーム名の由来となったサクラメント川である。
 スタンドは、傾斜が緩く、非常に見やすい。観客を入れることを考えて、全部大阪球場(もう歴史用語になってしまった)のように、急傾斜になっているオラクル・パーク(サンフランシスコ・ジャイアンツのホームグランド)よりも、広々とフィールドを見ることができる。
 この日、サクラメント・リバーキャッツは、タコマ・レイニヤーズに大敗したが、2003年度はリーグ優勝を果たした。
 そして2007年5月20日。久しぶりに、サクラメントの球場を訪れ、対フレズノ・グリズリーズ(当時はサンフランシスコ・ジャイアンツの3Aだった。現在はコロラド・ロッキーズのA+級)戦を観に行った。実はその時にはお目当ての選手がいた。
 もうひとりのスズキ選手、カート・スズキ(Kurt Suzuki)である。

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 ハワイ出身の日系人であるスズキがオークランドのアソシエーションにいると知ったのは、2007年の春、スプリングキャンプ中の試合(つまりオープン戦)をたまたまラジオで聞いていた時だ。相手チームはどこか忘れたが、少なくともシアトル・マリナーズではなかった。にも拘らず「スズキ」の名前が聞こえたのだ。「イチローを話題にしているのだろう」と思っていたのだが、しばらくして、「さぁ、打席にはカート・スズキ」とハッキリ聞こえたのだ。
 MLBの公式サイトを調べて、本当にもうひとりのスズキがMLB機構内に存在し、彼がキャッチャーであること、2007年はメジャーの当落線上にいることがわかった。
 残念ながら、開幕メジャーはならなかったが、サクラメントでは、特に打撃面で活躍し、クリーンナップを打った。
 この日は指名打者での出場。残念ながら無安打に終わったが、間もなくメジャーに初昇格。レギュラーのキャッチャーがトレードに出され、彼は晴れてその座を暖めることになった。因みに、当時サクラメントにはやはりハワイ出身のシェーン・コミネ投手、そして、多田野数人投手もいた。
 その後、メジャー数球団を渡り歩いたスズキ選手。2021年のシーズンは、大谷翔平選手のいるロサンゼルス(アナハイム)・エンジェルスに所属。40人ロースターにも登録されている。もしかしたら二刀流とのバッテリーが見られるかもしれない。

拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「隠れた人気チーム」(2005年07月14日14:47付)、「もうひとりのSuzuki選手」(2007年09月25日19:31付)に加筆修正した。

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