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「サンフランシスコ名物のケーブルカーは動態保存のようなもの」の巻

 サンフランシスコ名物のひとつはケーブルカー。中国製のちゃちなケーブルカーのおもちゃは、みやげ物屋の定番だ。初めてこの地を訪れた1983年夏は、たまたまメンテナンス中で乗ることができなかった。だから、2回目の訪米で初めて乗ったときには、感激も一入だった。

 このケーブルカーは1873(明治6)年以来走り続けているという。日本に鉄道が初めて開通したのがその前年のことだ。動態保存という言葉はあるが、日本ではこういう思想は余り一般的ではない。交通関係のものに関しては、使えるものを大切に使うという発想が、日本では何故育たないのだろうか。できそうなことはいろいろありそうなのに、とても不思議である。もちろんランニングコストの問題もあるだろうが、サンフランシスコのように観光資源にできれば、それもある程度解決できるのではなかろうか。
 さてこのレトロな車両は、坂道に埋設されたケーブルを、車体に仕組んだ装置が掴んだり離したりして、箱が動く仕組み。運転手(Grip Manという)はそのたびに、レバーを力いっぱい動かすので、乗車中にそばにいたら吹っ飛ばされる。
 社外から外にぶら下がって乗るのが粋に見えるのだが、運転手や車掌に咎められることもある。早い者勝ちの、オープンデッキに座るのがベターだ。
撮影当時の片道$3.00という料金は、市バスや市電$1.25と比べてかなり高いのだが、骨董品に載るんだから仕方がない。我慢しよう。
 で、この写真。訓練走行を捉えたもの(2004年2月12日撮影)。車両に「訓練中」の垂れ幕が下がっている。そんなにお目にかかるチャンスはないように思われる。新人運転手がいることすら不思議な感じがする、まさに動く文化財である。

拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「訓練中」(2005年07月13日 10:33付)に加筆修正した。

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