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「自慰行為を報じる日本のメディア」の巻

■反日デモと18回目の謝罪
 2004年4月に起こった中国での反日デモに関して、アメリカのメディアは予想以上に冷静だった。基本的には中国に非があるという論調で、"The Washington Post" など主要紙は一貫していた。そんな中で、"The New York Times" や "The Los Angeles Times" には、「しかし、日本もちゃんと謝るべきだ」、というような記事もあった。だが、誤解してはいけない。両紙は民主党支持を表明しており、それは読者も知っている。『朝日新聞』が不偏不党を謳いながら、戦前・戦後と、偏向報道を率先して行ってきたマヤカシとは全く異なるのだ。
 4月21日付英国誌 "The Economist" によれば、日本による公式謝罪は17回を数えるという。中国は更なる謝罪を要求していたが、時を同じくして、韓国の盧武鉉大統領(当時)が、日韓基本条約を無視し、日本政府をユスっている。アメリカでは交通事故の際に、"I'm sorry."と言った瞬間に賠償責任が発生するとさえ言われている。無意味に謝罪すれば、財布を開かねばならないということが、日本でも常識になるべきだ。
 しかしその翌日、小泉純一郎首相(当時)はアジア・アフリカ首脳会議という大舞台で、18回目の謝罪をした。これは、日本政府の「大人の対応」だと一応評価しておこう。因みに "The wall street journal" は、4月25日付社説で、この謝罪を「心からのもの」と評している。そして一連の問題について、「北京が謝罪する番だ」と明白に断じ、調子に乗りすぎた中国政府を諌めていたのだ。 

■報道してはいけない「自慰」行為
 ところで4月24日に、ロサンゼルスのダウンタウンで、支那人と韓国人による、千人規模の反日デモがあったらしい。「らしい」というのは、地元のテレビニュースでは、JR西日本福知山線の脱線事故は大きく報道していたが、反日デモについての報道はなかったからだ。なんと私はそれを、日本からの報道で知ったのだ。
 5月に入って、当時勤務していた学校の校長と歓談する機会があり、その話題を出したら、校長も「初耳だ」と言って目を丸くしていた。そう、在留邦人も、その場に出くわさない限り、わからないようなデモが、日本では報道されていたのだ。
 アメリカ、特にカリフォルニア州では、デモなどの示威行動は、日常茶飯事である。一々報道などしない。もしも、本気ならば、ダウンタウンよりも、日本人が多く住み、日系企業や商店が多いサウスベイ地区でする筈だ。要するにこのデモは、時局便乗型の「露出狂による自慰行為」のようなものだ。ニュース番組での報道はちょっと無理だろう。
 因みに私は当時コリア・タウンに住んでいたが、全く平穏であった。領事館に緊急時のメール配信登録をしていたのだが、当地で問題になっていた、高速道路での発砲事件や、外国人相手の詐欺については、細かく注意喚起を受けていたが、反日デモの連絡はなかった。
 支那人や韓国人による反日イベントを、どんなものでも一部マスコミが嬉々として報ずるのは、自虐趣味を国民に押し付けているのと同じだ。異常趣味がニュースに馴染まないのは、どこでも同じだと思うが、日本ではNHKでさえ、その常識がない。嘆かわしい話だ。

■何の遠慮がいるものか
 その異常趣味の原因は、中国・韓国への、滑稽なまでに度が過ぎた遠慮だ。
 学部生時代に初めてアメリカに行ったとき、羽田発の中華航空を利用した。勿論、一番安かったからだが、既に成田空港は開港していたのに、中華航空は羽田からしか飛んでいなかった。継子扱いは、同社が台湾のフラッグ・キャリアだったからだろう。晴天白日旗を掲げる飛行機が、五星紅旗のそれと、新空港を一緒に使うのはマズいと、誰かが考えたのだ。当時、まだ半官半民だった日本航空が、台北、高雄便だけを、子会社の日本アジア航空に運航させていたのも、同じような理由からではないか。これを配慮と言うなら、余りにも浅はかである。今も昔も香港では「2つの中国」の飛行機が、毎日何便も離発着していたし、今では日本の空港でも同じように両国の飛行機が肩を並べているが、何も起こってはいない。        
 アメリカは中華民国と断交し、2つの中国を否定したとはいえ、「台湾関係法」を制定し、安全保障に大きく関わって、中国の侵略行為を抑止している。それでいて、中国政府は煙たがりつつも、何もすることはできない。何でもアメリカに追随する必要はないが、日本ももう少し見習っても良いのではないか。

■その気になれば味方にできる米国世論
 一般的なアメリカ人は、事実や正義を重視する。卑怯者が一番嫌いだ。だからこそ、外務省の失態で、真珠湾攻撃が「奇襲」になったことが奇禍となり、FDRは、戦争を嫌がっていた国民の怒りを結集できたのだ。
 アメリカでは、中国のみならず、韓国の教科書が国定だということも知られている。日本で自由に(本当は、そこが問題なのだが)採択される教科書との違いは認識されている。だからこそ、2004年のいさかいについては、冷静な報道がなされたのだ、と思う。
 5月8日の中韓首脳会議で、連中は、日本に「正しい歴史認識」を求めたが、こういうチャンスを捉えて、官房長官がメディアに登場し、「歴史的事実を、国家が決めた歴史認識で歪める様なアンフェアを、自由を愛するわが国は許さない」と述べ、アメリカ世論の支持を得るべきだったのだ。
 ところがそんな時、与党の幹事長が雁首揃えて韓国へ参上し、観光名所「秘宝館」じゃなかった、反日名所「独立記念館」を神妙に拝見しているようでは、お先真っ暗である。そしてその無用の遠慮は今も続いている。

『歴史と教育』2005年6月号掲載の「羅府スケッチ」に加筆修正した。

【カバー写真】サンフランシスコのチャイナタウンに翻る中台国旗。自由の国を象徴する光景?(撮影筆者)

【追記】
 アメリカ人が「事実や正義を重視する。卑怯者が一番嫌いだと書いたのは、私の間違いだったのだろうか。2020年の大統領選挙を見る限り、過半数の選挙民はトランプ大統領を選んだが、その半分にも満たないバイデン派の人々、ビッグテックの対応を見ていると、本当に卑怯者だらけではないか。自他ともに認める、世界のスーパーヒーロー・アメリカはどこへ行ってしまったのだろう。

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