なにわの近現代史 Part 1 ⑦「元祖アイドル・娘義太夫の大スター」
上方落語の『軒づけ』に登場する連中や、『寝床』でへたくそな一節を披露するの旦那さんに象徴されるように、歌謡曲が大衆に広がるまで、浄瑠璃(上方では専ら義太夫節を指します)は庶民の娯楽のひとつでした。中でも娘義太夫(今日では女流義太夫、女義といいます)は、明治中期から大正期にかけて、絶大な人気を誇っていました。若くて美しい女性が、情を込め、時には髪を振り乱して語る姿は昨今のアイドル顔負けで、多くの男性ファンが魅了されました。時には楽屋や自宅におしかけ、彼女たちの乗った人力車を、