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「未来の自分とご対面」改訂版

※こちらは、2020年7月のオンライン個展内で発表したファンタジー私小説に修正を加えたものです。


未来の自分とご対面


どことなく自分に似た顔立ち・背格好・雰囲気の人。
厳密に言えば、ちょっと歳をとった「自分のような人」。

人混みの中で、そういう人をやたらと見つけてしまう日。

わたしはたまに、そんな日に出くわした。
そして、そのたびに何故か心が躍るような気持ちになった。


ある駅のホーム。
人間の群れ。
前方に目を向けるとその中に。
・・・いた。

ピンク系のジャケットにフレアスカート、茶色いロングヘアをハーフアップにしてメイクは濃いめ、前髪はしっかり切り揃えてある。
あれは、未来の自分がどこかで会社勤めをしている場合。
かもしれない。


彼女とすれ違い、わたしはずんずん進む。
・・・いた。

黒を中心にした全身モノトーンのコーディネートに前下がりのショートヘア。
おそらく絵が入っているであろう大きな黒いバッグを抱え、立っている。
足元も黒いサイドゴア。
あれは、未来の自分が今とは少し違うタイプの絵を描いて生きている場合。
かもしれない。


その後もわたしは次々に見つける。
「かもしれない」未来の自分を。
気分が憂鬱になるような今日の曇り空に少しずつ晴れ間がのぞくかのように、なんだか楽しくなってくる。


その時、一人の女の姿が目にとまる。

ネイビーブルーのロングワンピースを身に纏い、
足元は水色のストッキング、真っ赤な靴。
髪型は肩に付くか付かないかくらいのボブ。

「彼女も未来の自分かもしれない」
そう思い顔立ちを確認しようとするが、見ることができない。

彼女の顔面が、赤と青のドレープカーテンで覆われてしまっていたからだ。
カーテンは軽やかに、そして不気味にゆらゆらと揺れた。
胸元には琥珀色に煌めくペンダントがかかっていた。


わたしは何かを思い出す。
少なくとも「未来の自分探し」はもうしないほうが良いんじゃないかと思った。
そして、駆け足でその場を去った。

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