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カニャクマリ~シスターを聴きながら~

コーチンでまったりした後に向かったのが、インド最南端のカニャクマリだった。列車に乗って夜に着き市街地までのバスを探したが、ちょうど良いのがなくてリキシャーで行くことにした。リキシャーのドライバーは私が日本人だと知るとジャッキー・チェンを知っていると話し掛けて来た。ジャッキー・チェンは日本人ではないと教えると日本人を教えてくれと言われたので、私は役所広司の名前を出した。そして、「ムービースター」だと教えてあげた。

そうこうしているうちにカニャクマリの市街地へ着いた。いつものように安い宿に行きたいとドライバーに告げる。彼がリキシャーで何軒か連れて行ってくれて窓から海の見えるホテルに泊まることにした。700ルピーだから特別安くもないが、最上階の部屋で景色が良かったから即決した。部屋に入るとやはり疲れが出てきたので明日朝の日の出を見るためにも私は早く寝ることにした。

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そう、ここカニャクマリは世界でも数の少ない、インドでは唯一の海から太陽が昇り、海へと太陽が沈む街なのだ。私はここに来ようと決めた時から温めていた計画を実行することを楽しみにして、夜の海を眺めるのをそこそこに眠りについた。

朝起きて、明るみ出した窓の外を覗くと、目の前には海が広がりそれだけでも気分が良い。私は日の出を見るために身支度を整えて外に出た。ガイドブックで調べてあった日の出スポットに近くと、ちょっとした人混みが出来ていてすぐに分かった。ただ、これだけ人が集まっているのに辺りはとても静かだった。私は人混みの端っこに場所を決めるとイヤホンを取り出して耳に付けた。そして、携帯の音楽プレーヤーを起動してあの曲かける。この場所にぴったりであろうあの曲を。そう、ポルノグラフィティの『シスター』だ。中学生の頃から聴いているお気に入りの曲をBGMとして、目の前で昇って行く太陽と、それに向かって祈る人々を私はそっと眺めていた。

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計画が無事に実行出来たことに感動しながら、私は今日の予定を考えた。ここにはあと一泊しかしないから日の入りの時間にサンセットスポットへ行く前に何カ所か回っておこう。一度ホテルへ帰り洗濯物を干してから私はガイドブックのカニャクマリのページを破ってポケットに入れた。

カニャクマリにはインドの偉人であるヴィヴェーカナンダを祀る岩場があり、ボートに乗って行くことが出来る。私はまずそこを目指した。ボード乗り場に着くとすでにたくさんの人が並んでいた。チケット売り場で見たところによると、少し料金を上乗せすればファストパスのようにすぐ乗れるようだったが、そこまで急いでもないので私は普通に列に並ぶことにした。幸い私の前には楽しそうに遊ぶ子供達がいたので、それを眺めながら列を進むとそれ程時間が長く感じなかった。安全ベストを手渡されてボートに乗りほんの数分で岩場に着くと、そこもなかなかの人混みだった。

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ここでは写真撮影禁止の場所が多かった。建物の中で瞑想が出来るので、少し参加して、私はボート乗り場に向かった。

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昼食を食べた後、有名な寺を見ようと思ったが先にサンセットポイントの海岸を下見することにした。カニャクマリはからっとした気候だが、最南端なのでやはり暑い。リキシャーを使うほどの距離ではなかったが、私は汗をかきながらサンセットポイントを探した。そして、とても綺麗な海に出会った。もし、夕方にしか来なかったら、きっとこれほど感動しなかったに違いない。私はこの海を誰かに見せたくて何枚も写真を撮った。

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結局、数時間海を眺めて夕方になった。サンセットポイントにはそこそこ人が集まり、やはり静かに海に沈む太陽を眺めていた。日の出ほどの美しさは感じなかったが、多くの人たちと一緒になって夕日を眺めるのはなんか心地よかった。この日は夕日を見てから、バススタンドで明日のバスの時刻を聞きお寺にお参りしてカレーを食べて寝た。

次の日はお寺の裏から日の出を見た。ここにもたくさんの人が集まっていて熱心にお祈りをしていた。私も祈ってみた。それから、真珠のネックレスを売り歩いている人がいたので本物かは怪しかったが家族へのお土産に買った。そしてまた、とりあえずお寺に行った。ここは少し暗めだったことくらいしか記憶にない。

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午後にはバスに乗るのでホテルをチェックアウトしてバススタンドに向かった。最後にまたあの海が見たくなったのでそこで売店のおじさんに荷物を預け、私は海へと歩いた。

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私の取る写真では伝えきれないほど綺麗な海。また行ってみたいと思える景色を前に少しの間佇み、私はバススタンドに向かった。

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