東京都の不正をColaboが疎明したかもしれない件

令和5年7月4日
(7月11日更新 暇空さんの記事にリンクだけしました)

暇空さんが東京都に対し、Colaboが委託を受けたR3年度の若年被害女性等支援事業についての住民訴訟を提起しています。

この件で、Colaboは東京都側として補助参加しており、補助参加人としての答弁書を6月29日付で出しています。
この資料のお陰で東京都の不正が裁判で認識される可能性があるので、解説します。

具体的には、

  • 監査からの指示で行われた福祉保健局の再調査は適正なものでないこと。

  • 再調査が適正に行われなかった理由は公金の誤った支出を隠ぺいするのが目的であること。

以上2点が認められるかもしれません。

ポイントは「各種保険料」の内の法定福利費(社会保険料)です。
気になるところは他にも多々ありますが、それらは暇空さんが別の記事でやっています。

本稿はざくっと上記のことを解説するために論点を絞った記事であることにご留意ください。

念のために申し添えると、『実際』の資料を見た限りでは、そもそもColaboは東京都の事業費の認定自体を認めていないように見受けられます。
従って仮に東京都の公金管理が不適正であったとしても、Colaboが責めを負うべき事象が存在しているかどうかは未知数です。本稿を基にColaboを批判することがないようお願いします。

1、 「各種保険料」の捉え方の変遷

① 弁護団声明(2022年11月29日)

  • まず例の記者会見の資料。

上記ページ内の「Colabo及び仁藤夢乃さんに対する誹謗中傷等について」より
  • 会計は区別されているとのこと。当然ながら法定福利費(社会保険料)も区別されているはずです。

  • 結果としてこの主張は誤りだったようです。

② 監査結果(2022年12月28日)

  • こちら。

上記ページ内の「監査結果」より
同上。
給与と法定福利費(社会保険料)は連動するので一緒に論じられている。
按分の考え方も当然同じでないとおかしい。
  • 帳簿通りの支出はされているものの、人件費は按分されているが按分根拠が不明。法定福利費は按分されずに全額計上されているとのことで、適当な区分がなされていなかったようです。

  • ちなみに上掲画像の赤線部分は重要です。

  • 法定福利費(社会保険料)は『(給与と法定福利費を同一の人件費とカテゴライズした上で)按分の考え方に基づき按分すべき』と監査は明記しています。

以下、参考までに表3

③ 福祉保健局による再調査結果 (2023年3月3日)

  • こちら。

  • まず給与を見てみましょう。

再調査結果より経費総額。
給与や専門家向け報酬から成る人件費は9,005千円と認定。
再調査結果より人件費の内訳。
給与額は8,805千円。
  • 上記の通り委託事業向けの支出と認められたのは8,805千円です。

  • 下掲の2021年度活動報告書によるとColabo全体の給与額は28,051千円ですから、委託事業費の給与額はColabo全体の給与額の31%を占めることになります。

  • 「委託事業に従事している職員の給与は22,478千円」だったそうですが、都の事業費を記録している管理台帳にその記載がなかったため、13,675千円は経費として認めなかったとのこと。

  • 次に「各種保険」

上記ページ内の「別紙」より
  • 監査で「各種保険」の支出総額とされたのは3,601千円です。結果として3,212千円が事業費として認められたとのこと。

  • 上掲画像中の「団体全員の保険料」には下掲の2021年度活動報告書によるとColabo全体の法定福利費(社会保険料)3,350千円が入るはずですから、3,601千円との差額の251千円は「火災保険など」が該当するはずです。

  • よって、上記を整理すると委託事業向けの法定福利費(社会保険料)の支出は2,961千円、自主事業分は389千円、他の火災保険料等が251千円認定されたことになります。

  • 2,961千円という数字はColabo全体の法定福利費(社会保険料)3,350千円の88%を占めることになります。

Colaboの2021年度活動報告書より。
  • 元々まったく按分されていなかった法定福利費(社会保険料)をどう按分するかを「職員の委託事業への従事割合」で決めた結果、9割になったそうです。

  • 給与の支出は管理台帳に記載されている3割しか認めていません。

  • 給与の決め方は厳格なのに、法定福利費(社会保険料)の決め方は随分と曖昧で解釈の余地が大きいように思えます。

  • その結果、同じ人件費なのに給与は3割しか認めず、法定福利費(社会保険料)は9割を認めないというおかしなことになっています。

  • この認定は上記の法定福利費(社会保険料)は『(給与と法定福利費を同一の人件費とカテゴライズした上で)按分の考え方に基づき按分すべき』という監査の考え方に合致していないことは明らかです。

  • この事実だけでも裁判で東京都の調査の適正性を否定することは可能なように思います。

参考:上記解説とかなり被りますが、以前書いた記事

参考:新情報が出る前、再調査結果を見た私のツイート
(詳細がわからないので社会保険料を少し高く予想している)

2、新情報からわかること

① 新情報について(2023年6月29日)

  • さて、上記を踏まえて新情報を見ていきましょう。

  • Colaboは今回、都に認められなかったものの、実際は委託事業に支出していたと主張する費用の明細を出してきました。

参考:⁠一部公開された『実際』の資料


  • その結果、法人全体の給与額や法定福利費の総額及び内訳が明らかになりました。

  • 総額に対する再調査で認められた金額の割合は、給与額は28,477千円に対して8,805千円で31%、法定福利費は3,295千円に対して2,961千円で90%ということのようです。

  • 2021年度活動報告書上のColabo全体の数字と微妙に合いませんが、とりあえず最新資料記載の数字を真の数字だと捉えましょう。

訴訟資料より

② 都が過大な支出額を認定していた事実

  • 再調査で東京都が「委託事業分の社会保険料」と認定した金額は2,961千円ですが、Colabo自身が認識する「事業按分をして算出した委託事業向けの社会保険料」は2,663千円ですから、東京都は何故か事業者が自認する以上の金額を「委託事業費」と認定したことになります。

  • Colaboが偽の帳簿等を出したという疑いもないではなかったのですが、裁判で堂々と明細を開示してきたあたり、東京都がColaboの認識を無視してあえて実際と異なる数字を事業費と認定した可能性が高そうです。

  • このことは、東京都の調査が正しく行われていなかったことを示唆しているといえるでしょう。
    (他の費目でも見受けられることですが)

③ 正しい福利厚生費(社会保険料)の支出額

  • もう1点重要なことがあります。

  • 上掲の私の記事にも記載していますが、そもそも東京都により認定された法定福利費(社会保険料)の計算は意味不明で、給与按分の計算と合致していません。

  • 再調査で認められた給与額はColabo全体の31%に対して、法定福利費(社会保険料)は90%になっており、不均衡です。

  • 法定福利費(社会保険料)は『(給与の)按分の考え方に基づき按分すべき』とした監査の指示を無視した方法で福祉保健局が再調査結果を出したことは前項で既に判明していたことですが、具体的にいくらが妥当な金額なのかを知る術はありませんでした。

  • 今回の新情報によりそれが明らかになりました。

再掲・加工
  • Colabo全体で社会保険に加入している(またはしていた)労働者や役員は8人いるようです。彼らへの給与支払額に対する法定福利費の割合は概ね14%前後であることがわかります。
    (2名極端に低い方がいますが、彼らは途中で働き方が変わったのでしょう)

  • 当該給与には社会保険加入義務のない労働者への支払いも含んでいるはずなので、実際はもっと小さい金額になる可能性が高いですが、委託事業費として認定された給与額8,805千円に単に14%を掛けると大体1,200千円になります。

  • よって、委託事業に支出した法定福利費(社会保険料)は1,200千円程度が上限だということになります。

  • ちなみに、法定福利費(社会保険料)は厳密には給与とは連動せずに標準報酬月額で決まります。実際にはあり得ないにしても、給与額が月によって著しく異なる場合、あくまで理論上は給与額8,805千円に対して法定福利費(社会保険料)2,961千円が支払われていることがないとは言い切れませんが、新情報でそんな特異な可能性すら排除された形になります。

④ 委託事業費の返還請求が必要なこと

  • 以上より、委託事業向けの法定福利費(社会保険料)は2,961千円の支出だと東京都より認定されていましたが、実際は最大値でも1,200千円程度のようです。

  • よって1,761千円(2,961千円-1,200千円)は委託事業費から差し引く必要があります。

  • 再調査で東京都に認定された総事業費は27,131千円、委託事業費26,000千円を1,131千円超えているので公金の不適正な支出はないとされていました。

  • しかしこの法定福利費(社会保険料)を是正するだけで、実際に支出された委託事業費は公金から支出された委託費を600千円程度下回るので、その前提が崩れてしまいました。東京都はColaboに対して返金請求をする必要がありそうです。

上記Tweetの画像を更新

以上を踏まえると、東京都は返金請求(=公金の支出が不適正であった証拠)を避けるため、あえて正確な調査を行わずに不自然で過大な数値を事業費として認定したというシナリオが想像できてしまいます。

3、結論

  • さて、訴訟の原則ですが、原告が被告の不法行為を問う際、原告に立証責任があるというのが大前提で、立証には具体的な数字や記述が不可欠です。

  • しかし民民の訴訟ではそうでしょうが、原告側の情報が制限される住民訴訟でそこまで厳密な立証を求めるべきかどうかは議論があり、可能な範囲で立証すれば良いという見解が主流です。

参考判例・裁判例

  • 図らずともColaboは今回、具体的な数字を出したことによって原告である暇空さんの『立証』に大きく寄与したと言えます。

  • 今回の新情報で、上記の通り東京都が ① 法定福利費(社会保険料)について根拠なく高額な支出を認定したこと、 ② それは誤った公金支出の事実を隠す目的であることが想像できること、以上2点が明らかになったからです。

  • 本件は一費目に対する事象とはいえ、東京都の調査のいい加減さを際立たせる内容ですから、他の費目の真実相当性もまた疑わしいと捉えられる可能性は十分にあります。

  • 裁判官の心証に大きく影響することは想像に難くなく、東京都は補助参加人のColaboにより厳しい立場に置かれたと言えるでしょう。

  • また、他の3団体に対する裁判にも影響しそうです。

以下、参考。
記事の公開後数日が経ちましたが、私の意図とは違った反応が多く見られたので、余計なお世話かとは思いますが以下のtweetで説明をしています。

以上

7月4日 公開
7月5日 画像を追加したり文章を微調整したり
7月6日 記事の意図に合わないColaboバッシングめいた言説があまりにも多いので図解説明を末尾に加えました。その他微調整。
7月11日 暇空さんの記事へのリンク追加

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