Colaboの都委託事業における公金の過剰調達疑惑について

2023年3月3日
(3月10日更新 火災保険料の計算を間違えていたため修正)

  • 一般社団法人Colabo(以下、Colabo)の令和3年度の若年被害女性等支援事業の履行状況について、2022年12月に発表された都の監査結果に基づいた再調査が所管の東京都福祉保健局より行われ、結果が2023年3月3日に発表された。

  • 福祉保健局としての結論は「問題はあるものの、Colaboは当該事業に投入された公金以上の資金を支出しており、公金が不正に利用されているわけではなかった」ということになるだろう。

  • この結論に疑義があるので本稿を書いた。

  • 私の計算によると以下の表の通り約1,380千円程度は過剰な調達が発生している可能性が高いので、都議会議員等には是非問題提起をお願いしたい

  • なお、限られた情報による考察であるため、本稿を基に断定的なColaboへの批判は避けていただくようお願いする。

下記計算に基づく

再調査結果の分析

  • 上表のような考えにいたったのは主に「給食費」「宿泊支援費」に本来であれば除外されてしかるべき経費が混じっているように思えること、及び「各種保険料」の按分計算方法が不適切であることが理由である。

  • 以下、詳しく説明していく。

① 給食費

  • 監査で指摘されたのは「一回当たりの支出が比較的高額なレストランでの食事代」であり、その金額は「2万円以上」と定義された。

  • 再調査での見解は以下の通りとなった。

対応の内容等(PDF:407KB)より
  • なお、本件に関するColaboの見解は以下の通りである。

監査結果を受けた弁護団声明より
  • つまり、まとめると大人数での会食の内、5回あった一人当たりの単価が高くはない(3,400円以下)ものは交流のための会食、3回あった単価が高い(4,952円以上)ものは「お祝い」のためであり、とにかく自立支援に必要なものであったとのことである。
    (その説明も公金の支出理由としては個人的には納得し難いが)

  • しかしその説明が事業の仕様に照らして適当かどうかは疑問である。

  • 当該事業の被支援者向け業務は大別すると声かけ、相談、面談、原則数日以内の居場所や食事提供等の日常生活支援である。

  • 「自立支援」も項目として存在はしているが、2週間を超える長期保護対象者に提供するものとされており、Colaboは当該対象をゼロ人と報告している以上、支出対象にはなり得ない。

  • よって、当該「自立支援」目的の支出の8件 計 284千円は事業仕様に合わない不適切なものと捉えるのが自然であろうと思う。

仕様書より
実施状況報告書より

② 宿泊支援費

  • 監査で指摘されたのは「都外遠隔地での宿泊」である。

  • 再調査での見解は以下の通りとなった。

対応の内容等(PDF:407KB)より
  • なお、本件に関するColaboの見解は以下の通りである。

監査結果を受けた弁護団声明より
何故か合宿のことが書かれていない。
  • 上述の仕様書によると支援対象者との「その後の相談」も業務の一つではあるようである。

  • それを理由に遠隔地へ宿泊を伴う出張が行われることが想定された事業設計になっているとは思えないが、明らかに不適当な支出ともいえない。

  • 一方で、「合同合宿」等大人数での旅行は給食費と同じく「日常生活上の支援」や「相談」から逸脱した支援であるようなので、この支出は不適当なものだと捉えて差し支えないように思う。

  • よって、仮に2~3名での出張は面談目的と仮定し、それ以上での出張(旅行)に係る費用を不適当な支出だと捉えることができると思う。

  • 交通費にも当該出張の費用は含まれているだろうし、理由はよくわからないが会議費にもスタッフの合宿時の宿泊費を算入しているようである。

  • それらも不適当な支出に一定程度加算する必要があることを踏まえて、宿泊支援費全額をとりあえず事業外の経費だと仮定すると、623千円が不適当な支出だということになる。

③ 各種保険料

  • 対象は火災保険料と社会保険料(法定福利費)であり、問題になるのは後者である。

  • 当該費目は下記の通り、監査では指摘されていない。なぜなら、都の委託事業用の帳簿に当該支出が記載されていたからである。

  • colabo弁護団も当該費目について「勝利宣言」をしている。

監査結果本文(PDF:494KB)より


監査結果を受けた弁護団声明より
  • しかし実際は以下の通り、都の委託事業向け帳簿に自主事業等と分別した金額を記載しておらず、全事業の社会保険料を記載していたとのことである。

  • これは委託者である東京都を偽の帳簿を用いて騙そうとしたが、その試みがバレたという理解が自然であり、大問題だと思うのだが特にそれについて何の見解も付されていない。何か理由があるのならば教えて欲しい。

対応の内容等(PDF:407KB)より
  • なお、福祉保健局は再調査にあたり、改めて都の委託事業に配賦すべき社会保険料を「都の事業の業務が占める割合」で計算しているが、この計算方法は恣意的な配賦が可能かつ根拠が不明なので、適当ではない。

  • 社会保険料は支払い給与の概ね15~16%になると決まっている。(厳密には標準報酬月額が基準になるので、支払い給与と完全に連動はしないが)

  • そのため、単に給与支払額に応じた社会保険料支払額を転記させるのが恣意的な解釈を行う余地がなく、適当である。
    (例えば自主事業に20万円/月、都の委託事業に10万円/月と給与を配賦しているのであれば、前者は約3.1万円、後者は約1.6万円という配分になる)

  • 実際は従業員一人一人に対する給与支払総額及び社会保険料支払総額がわかるはずだが、当然ながら我々にはその情報を知る方法がないので、当該事業に係る給与支払額に概算の社会保険料率15.5%をかけることで計算した。

対応の内容等(PDF:407KB)より
  • 給与支払額は8,805千円であるそうなので、15.5%を乗じた1,364千円が適正な社会保険料ということになる。

  • なお、社会保険への加入には要件があり、短時間のパート従業員等には支払いが発生しないが、とりあえず都の委託事業に従事する従業員の全員が社会保険加入者だと仮定して計算したため、理論上の最大値の計算となる

  • 2021年度活動報告書によるとColabo全体の法定福利費(社会保険料)は3,350千円、表(3)で認められた都の委託事業の「各種保険」は3,601千円なので、火災保険料は差引251千円だということになる。

  • よって、火災保険料251千円、社会保険料1,364千円、計1,615千円が正しい「各種保険料」ということになる。福祉保健局が認定した金額は3,212千円なので、1,615千円との差額1,597千円は不適当な支出ということになる。

まとめ

  • 以上をまとめると、冒頭に掲載した表の通り、約1,380千円は公金を過剰調達していることになるので、返金が必要なように思う。

  • 繰り返すが、これは限られた情報による考察であるため、真実であるかどうかはわからない。

  • 監査結果に付された意見の一つは『本事業の実施に必要な経費を正確に報告させ、これを精査』することである。

  • 3月3日に発表された再調査結果は「支出があったかどうか」に終始しているといっても過言ではなく、特にその経費が実際に事業に投じられたかの検証が不十分である

  • 支出を事業経費と認定した理由をもう少し入念に説明しなければ、第三者にとってそれが適当かどうかを判断できない。

  • もしも上記のような疑念が事実と異なるのであればColaboにとっても不本意であろうから、東京都福祉保健局にはきちんと監査意見通りの『精査』を行ってもらう必要がある。

以上

履歴

3月3日 本稿公開
3月10日 火災保険料の計算を誤っていたため修正
      


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