不登校

今回は、不登校について書きます。

学校に行かない状態を表す言葉は、かつて「学校ぎらい」「登校拒否」といった言葉が使われていましたが、現在は「不登校」で統一されているようです。

「学校ぎらい」、「登校拒否」は、学校に行かないことを肯定的に選択しているようなニュアンスがあります。しかし、なかには学校に行きたくても行けない子どもが存在することを踏まえ、「不登校」が使われています。

1. まずは定義から

「不登校」の定義から見ていきましょう。文部科学省は「不登校」について

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的理由による者を除いたもの

としています。

年間30日以上というのはあくまでも不登校児童生徒の数を調査するための基準だと思います。

欠席日数が30日に満たない児童生徒でも、不登校傾向がある子どもは多く存在すると考えられます。

また、不登校には、病気や経済的理由によるものは含まれません。


2.現状の理解

不登校の現状はどうなっているのでしょう。文部科学省は、毎年「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」をしており、暴力行為やいじめ、不登校、退学、自殺などの諸課題について調査を行っています。

最新版の資料「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」のデータを引用します。


【不登校児童生徒数の推移】

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こちらは、義務教育段階の児童生徒のうち、不登校の子どもがどれくらい存在するかを表すグラフです。

人口の増減もあるので、1000人あたりの不登校数で比較しましょう。

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1000人あたりのグラフにしても、グラフの形はあまり変わっていません。


H20〜H24までは減少傾向でしたが、その後は増加傾向に転じています。

平成23年に東日本大震災があったことが影響しているのでしょうか。


学年別に不登校児童生徒の数を見てみましょう。

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学年が上がるにつれ、不登校児童生徒が増加しています。特に、小6から中1に進学するときに急増しており、いわゆる「中1ギャップ」と言われています。

中1ギャップ
友人関係、学業など環境の変化についていけず、いじめや不登校の問題が急増する現象。


【不登校の要因】

次に、不登校の主な要因を見ていきましょう。

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多いものから、「無気力・不安」(約40%)、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(約15%)、「親子の関わり方」(約10%)となっています。


「無気力・不安」というのは、かなり漠然としているように感じます。

不登校児童生徒本人も、はっきりとした理由がなく、何となくやる気が出ない状態があるのかもしれません。


また、指導の結果登校できるようになった児童生徒は、全体の22.8%というデータもあり、学校に登校できるようになるまではハードルが高いようです。


3.不登校児童生徒への支援

肝心なのは、不登校児童生徒に対してどのような支援を行っていくか、ということ。

令和元年10月に「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」が出されています。そのなかで、

不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

と記されています。

元気に登校できるようになれば、学校も児童生徒も嬉しいと思います。ですが、学校に登校することを目的とするあまり、

「学校に行かないことが悪い」

という考えが染み付いてしまうといけません。学校に行くことができていない自分に罪悪感を持ち、悪循環に陥ってしまいます。


登校を促すために、頻繁に家庭訪問をするなどの登校刺激は、状況に応じた適切な判断のもと行われるべきです。


また、同通知では、

本人の希望を尊重した上で,場合によっては,教育支援センターや不登校特例校,ICTを活用した学習支援,フリースクール,中学校夜間学級(以下,「夜間中学」という。)での受入れなど,様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと。
   その際,フリースクールなどの民間施設やNPO等と積極的に連携し,相互に協力・補完することの意義は大きいこと。

とされています。

学校だけでなく、外部の機関と連携して支援していくことが大切です。


4.ICTを不登校支援にどう活かせるか

個人的に関心を持ったのは、ICTを活用した学習支援についてです。

GIGAスクール構想の推進により、児童生徒が一人一台、タブレット端末等を用いて学習ができる環境の整備が進められています。

昨年の一斉休校では、小中学校でもオンライン授業が行われました。現在でも、多くの大学では、オンライン授業が主流となっています。

つまり、環境さえ整えば、学校に行かなくても学習が可能ということ。


教室で行う授業を撮影し、その動画を不登校児童生徒に配信すれば、勉強することはできます。課題もGoogle classroomなどを通して配信することができます。


しかし、それだけで十分なのでしょうか。各教科に関する学習はできたとしても、特別活動、総合的な学習の時間や友人・教師との関わりなど、オンラインではどうしても学ぶことができないものもあります。

ICTで可能になることもありますが、できないこともあるので、ほかの手段と複合的に活用することが大事です。

また、不登校の未然防止も非常に大切であり、わずかな児童生徒の変化を捉えて、働きかけをしなければなりません。