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チョコレートな関係に必要なものは客側の想像力なのかもしれない

札幌の繁華街から少し歩いたところにある5坪の小さなショコラを出すバーがある。そこはチョコレートな関係という。

ショコラのなかでも焼菓子の定番ガトーショコラとその食べ合わせ、飲み合わせを楽しむお店としてオープンした。ガトーショコラの通販がメインであり小さいお店は味見に来るということになるだろう。

「情熱のガトーショコラ」は数日の刻を超え熟成させることで完成度を高める。口に残るチョコの粘りを楽しめる3日目。口の中でさらりと消え、まるで純度の高いチョコレートに戻っていくような9日目。そんなガトーショコラをつまみにお酒を楽しめるわけだが、一味も二味も変えるのがこの店の特徴でもある。ガトーショコラに合うトッピングを日頃から創造してくるのがこの店のマスター宍戸さん。そう、その関係性は無限大というのがこの店の趣旨になるだろう。

あなたはガトーショコラと梅干しが合うことを知らないだろう。
あなたはガトーショコラに大葉といぶりがっこを組み合わせるものを食べたことはないだろう。

そうしたケミストリーに似た体験を楽しませるフュージョンスタイル、いやガストロノミーなお店かもしれない。ガストロノミーとは料理そのものだけではなく、その文化、美術、自然科学や医学、そして科学などすべてを応用して美食しようというものである。世界一と讃えられたレストラン、エル・ブジをはじめ世界中で新しい調理方法として日夜生まれている。口の中で起こる新しい運動が料理そのものの味だけではなく、体験として感動をさせようというところにシェフたちがチャレンジしているのだろう。

今回私たちに用意されていたのは・・・
寿司のシャリの上にガトーショコラ、中とろマグロ、山わさび、アボカド、きゅうりにイチゴをごま油につけたものと海苔を乗せたものが目の前に並ぶとは誰も想像できるものではない

ひとくちで放り込むと口の中は、溢れるばかりの芳醇な脂身と中とろが顔を出す。しかし出るはずの生臭さを完全に抑えるのが胡麻油とアボカド。彼らが口いっぱいにいるはずのショコラやご飯をわすれさせる。完全に潤滑油となっている。その上シャリを噛むと初めてショコラの味が一気に広がる。体が驚きの反応を示すのだ。鼻から抜けるショコラを味わいながら、予想外のまとまりに感動をする。まとわりつきを防ぐようにキュウリも良い反応をしめす。それぞれを繋いだのは実は山わさびとイチゴだということに鼻から抜けて気がつくだろう。こんなイレギュラーなもの、普通は作らないし食べることを拒絶するだろう。驚きとともにうまいと声が漏れるんだから。

たとえば寿司屋で出されれば、普通怒る。食べてその感動を味わえた人が唯一の勝者ではないだろうかと気づかされる。

そういう意味で、この店にはいろんなものが足りない。お店の大きさも、マスターが一人しかいないのも、お酒の種類も道具も少ない。でももっとも足りないのは客の創造性なのかもしれない

毎回どのような形で新しいショコラの体験をさせてくれるか楽しみであるし、どんなお酒と合うかも楽しみである。

私の大好きなのは燻製ショコラアイスと焼きたてベーコン。これはウイスキーがすすむ。

ごく稀にのめるオリジナルカクテルもあるが、最近は作る暇がなさそうだ。


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