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折々のチェスのレシピ(153)

今回は黒がさまざまなテクニックを使って着々と白を受けなしに追い込んでいく一局をご覧ください。

いくつもポイントはあります。黒のキャスリングのタイミングやh6とポーンを上げて受けたタイミング、相手のキングを咎めつつ駒組みを進める流れなど、見るべきものはいくつもありますが、今回は、

第2図

この局面に注目したいと思います。黒がビショップをc7に引いた局面です。ビショップ2枚で白のキング方面を狙っているのは変わらないのですが、次に黒がQd6とする手が見えるので、白としてはなんらかの受けが必要になります。

ポーンで受けると守りが弱くなるので白はNg3として受けるのが最善ですが(本局で白はポーンで受けてしまっています)、そうすると今度は黒からQd5があり、白はまた受けないといけなくなります。こうして受けを続けていても、白のキング周辺から駒がいなくなってしまいます。

本局では、とどめとしてナイトのサクリファイスで守り駒を剥がされて負けに至ります。

こうして見ると、第2図でビショップを引いておくことで黒はクイーンの可動域を大幅に広げていることがわかるかと思います。上げた駒を引くという発想は案外思いつきにくいものです。しかし、クイーンという強力な駒を活かすにはどうしたらいいかと常に考えていれば、この一手は選択肢に入ると思います。

それとは対照的に、白はクイーンをあちらこちらに動かしているものの、自陣に追い返されてしまい、結局最後までほとんどなんの働きもせずに終わってしまいました。本局では黒にも疑問手的な手はあるのですが、ここまできっちり指されると白に勝ち目はないです。序盤中盤終盤、ほぼ黒には隙もミスもありません。


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