折々のチェスのレシピ(76)
駒得をしてもそれが必ずしも勝ちに直結するわけではない、という例をこれまでに何度かご紹介してきました。
黒は駒得しているのになぜかクイーンの交換を促してきました。ここからわかることは、黒は駒得を生かすことができず、局面を苦しいと判断しているということです。しかし、クイーンを交換してしまうとさらに局面は難解(ほぼ互角になってしまいます)。
クイーンを交換した後の局面が上です。これでほぼ互角です。なぜ駒得しているのに黒はこんなに苦しい展開を強いられてしまったのでしょうか。白のナイトを取って駒得したすぐ後の局面にヒントがあります。先後入れ替えて見てみます。
黒がこんなに窮屈な駒組みを強いられているのは、まずセンターポーンの進出を許してしまったこと、次にクイーンがe6にいるせいでc8のビショップを展開しずらく、仕方なくbファイルに出口を求めたことが挙げられます。
ということは、相手のミスで黒は駒得をしたものの、実は序盤からかなりまずい駒の展開をしていたことがわかります。せっかく駒得してもそれを十分に活用できないのが序盤のせいでもあるとわかると、いかに序盤の駒組みが大切かが心に染みると思います。
「チェスのレシピ」や「新・チェスのレシピ」で序盤を多く取り上げたのはそのためでした。
ちなみに、上の対局は白が勝っていました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?