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折々のチェスのレシピ(367)少しだけ高度な知識をあなたに

では(では、というのは前回からの検討の続きだからです)、次の局面ではどうなるでしょうか。

前回の第1図から少し進んで上の局面です(これもよく出現する駒組みです)。黒のキングのコビンが空いた状態になりました。この局面であればBb5が効きそうな感じもします。

今回は、

白もあらかじめa3とポーンを上げているため、ビショップの逃げ場所があります。大丈夫と思いたいですが、次に黒からは、

逆にBg4という手が飛んできます。白としては、キングサイドにキャスリングをするとなると、このナイトを交換された場合、ポーンで取り返すのはかなり難しいです。よって、クイーンで取り返すしかないわけですが、

この手によってクイーンはd1に戻され、一手損してしまいます。つまり先手の優位をここで失ったことになります。さらには、白のクイーンが戻ったところで、黒はやはりb3のビショップを捌いてくるでしょう。

形勢自体は互角の範囲ですが、一手損を強いられ、大事な攻め駒(ビショップ)を失った白のほうが痛みを伴う展開です。

お互いに相手のナイトを狙う手(白はBb5、黒はBg4)を指しているのになぜ差が生じるのでしょうか。将棋を指す人にはすぐにピンとくると思いますが、キング(玉)に近いナイトはキングを守る役割も担っており、つまり、同じナイトであっても価値が異なるためです。

今回の進行において、黒はキングから遠いナイトを犠牲にする指し回しをしていますが、それはもうひとつのナイトと比較して価値が低いからです。前回と今回の検討で序盤におけるナイトの価値の違いが明確になりました。それまでの駒組みの違いでこれほど明らかに価値の差が出ないこともありますが、それはまた別の研究課題として、ひとまずは序盤におけるナイトの価値の相違やビショップの展開における進行の違いを憶えておいてもらえればと思います。前回と今回の知識があるかどうかだけでもだいぶ棋力(スコア)が違ってくるはずです。

以上のことをすでに知っている人にとっては「なんだよ、初心者講座かよ」と感じられるかもしれませんが、今回前回の知識があるかないかで下のような差が生まれます。

これ(上)は簡単な例ですが、今回前回の知識をもう少し敷衍していくと、

こんなプロっぽい指し回しも視野に入ってくるでしょう。まだ安心は許されませんが黒の優勢です。このぐらいの指し方ができるようになるとそれなりの高段者です。

ところが、相手の出方次第では、白がビショップを早々にb5に設置してしまう指し方が有効な場合もあります。これについてはまたの機会に。


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