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折々のチェスのレシピ(358)少しだけ高度な知識をあなたに

今回からはスコアが1500以上のプレイヤーと対局しても困らないようになる知識をご紹介していく予定です。といっても、20手先が読めないとダメですなどといきなりハードルが上がるわけではなく、むしろ細部にこだわっていくことになるだろうと思います。

というのは、それほどスコアが高くないうちは何気なく指しているかもしれない手が実は対局に大きな影響を与えている場合があるからです。序盤や中盤の一手(相手でも自分でも)の意味を理解しておくと、その後の展開がイメージしやすく、そうなると一手一手演繹的に先を読むのではなく、帰納法的に手を選ぶことが可能になります。

さっそくですが、

第1図

黒のこの一手からどんな進行がイメージできるでしょうか。ソフトやAIが最善手のひとつとして提示する手ですので、悪い手でないことはたしかです。しかし、その意味するところを正確に理解している人は少ないかもしれません。近視的には白のビショップがb5に来ることを事前に阻止している手であることは明らかですが、それだけではなく、しばらく対局が進行すると、

このような局面になっている可能性があります。このようなというのは、クローズドな展開で、お互いに急戦を仕掛けることがすでに困難であり、当面は自陣付近の整備を中心に手を作りあう局面です。これは黒が第1図でa6とポーンを突いたことによってほぼ必然的に誘導された展開です。よって、クローズドな展開を望まないのであれば、黒は第1図でa6以外の手を指すことになります。

さて、上の局面から白の次の手はほぼ一択です。

ビショップの交換を促してくるはずです。なぜなら、黒のマイナーピース(ナイトとビショップ)のうち、現況において比較的自由に動けるのが、d6のビショップだけだからです。このビショップを盤上から排除してしまえば、白は当面自陣を心配することなく手を作っていくことが可能になります。黒はこの交換に応じるしか実質的に選択肢はありません。

実は、第1図で黒がa6とポーンを突いた時点で、おおよそこのような展開になることはイメージが可能です。ある程度の棋力があるプレイヤー(白)であればこうした展開に持ち込んでくるはずです。上図の局面は形勢自体はまだ互角の範疇です。しかし、このような展開を嫌うのであれば、第1図でa6とせずに、別の手によってオープンな展開を志向することになります。

第1図でオープンな展開を目指す場合の進行については次回に。


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