折々のチェスのレシピ(400)少しだけ高度な知識をあなたに
白が少し珍しいオープニング(序盤戦術)を採用してきました。
大抵のオープニングには名前が与えられていて、これはご存じの人もいると思いますが、レティ・オープニングと呼ばれています。今ではほとんど採用する人がいないため、出会うことは稀かもしれません。
こうした例の少ないオープニングをぶつけてこられると、次の一手に悩むことがあるかと思います。これを機会にレティ・オープニングに対する対応を網羅的に研究してみよう!というのも、悪い考えではありません。
しかしながら、実際問題として、数あるオープニングのすべてについてその専門家になることは、かなり難しいだろうと思われます。一旦これで研究し尽くしたというところまでやったとしても、レティ・オープニングのような珍しい形でこられた場合、あまり出会わないので、出会った時にはたぶん忘れてしまっているでしょう。
レティ・オープニングに対しては、d5かe6という対応がよく知られています。しかしそれでは、レティ・オープニングをやってくる相手のほうがよく知っている可能性が高く、向こうの思惑どおりになってしまいかねません。
それではどうするか?と問われた時、チェスの序盤の基本に立ち返ってみると、レティ・オープニング対策をまったく知らなくても、指せる手があります。
お互いに序盤においてはクイーンで紐づいているdファイルのポーンは強いポーンであるということは何度か解説してきましたが、黒は初手でc5とポーンを突くことで白のdファイルのポーンの進出を牽制しています。
普通はいないとは思いますが、
もしポーンをぶつけてこられたとしても取ってしまえばいいことです。ナイトであろうがクイーンであろうがどちらで取り返したとしても、形を悪くするのは白でしかありません(白は重要なセンターポーンをひとつ失います)。よって、黒のc5は当面手付かずのまま残る可能性が高いポーンとなります。また、c5のポーンは黒がeファイルのポーンをひとつもしくはふたつ上げることによってビショップの紐が付きます。
ここから先の進行はさまざま考えられるため、事前の研究には限りがあると思いますが、dファイルのポーンを自由に使えなくなった白はやや窮屈な展開を強いられる可能性が高くなります。
というように、ありとあらゆるオープニングを知らなくても、「チェスのレシピ」や「新・チェスのレシピ」、そしてこの「折々のチェスのレシピ」でご紹介してきた基本的な知識を駆使すれば、相手が嫌がる手を指すことは可能です。