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折々のチェスのレシピ(374)少しだけ高度な知識をあなたに

局面が膠着しているとまでは言えないものの、指し手に悩む局面というのはあります。例えば、

第1図

白はcファイルのナイトをビショップと交換して黒の駒組みを乱しています。その分だけ白がややいい局面だといえます。しかし、この後の手がなかなか難しいです。今回はよく出現するであろうこの局面から少し深く検討していきます。

まず、

ついやってしまいがちなのがこの手でしょう。

なんとなく白にとって良くなっているように見えるかもしれませんが、黒は手が遅れているとはいえ、その分だけ守りが堅く、白から手出しをできるポイントがありません。また、白からすると黒がどんな形でキングを守ってくるのかがまだわからないため、はっきりとした攻めの糸口が見えません。

よって、第1図では別の手を考える必要があります。

一見、意図が不明に見えるかもしれませんが、少し進めてみます。

黒は動かしていないマイナーピース(ナイト)を二手かけてg6に動かすのが基本的な手筋です(それ以外だと形勢を損ねます)。そこで白はその間に、クイーンをd3に動かしておき、そこでc4の手が有効です。これでd5地点に効いている駒の数が黒に勝ります。これがやりたいがために第1図でナイトを引いておいたのですが、さらに引いたナイトは黒のナイトが進出してきても対応する役割もあります。

黒はキャスリングに備えないと危ない局面です。

黒のキャスリングを阻止する手はもうないので、キャスリング後を考えて白は手を作ります。ルークをeファイルに移動させたのは、いずれこのファイルに黒が瑕を抱える可能性が高いからです(白としてはいずれeファイルを素通しにできれば理想的です)。

上の局面で形勢にそれほど差はありませんが、黒の手がかなり制約されているのと比べて白には指したい手が複数あります。一度出したナイトを一旦引くことに抵抗があるかもしれませんが、こうして手が進むといい形になっていることがわかると思います。

また、黒がg8のナイトを二手かけてg6に出さないと駒組みを悪くすることを知っていれば、そこで白は二手もらえることを事前に知っていることになり、今回のような少々手損めいた指し方でも局面をよくしていくことが可能です


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