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折々のチェスのレシピ(246)ダニッシュ・ギャンビット

今回からは数回に分けて白番の序盤定跡を取り上げたいと思います。これまで取り上げたことのないもので、ダニッシュ・ギャンビットと呼ばれています。すでにご存知の方、もしくはすでに愛用しているという人は読み飛ばしてください。

なぜダニッシュ・ギャンビットを取り上げるかというと、まずなにより、決まると気持ちのいい手筋が豊富にあるという点が挙げられます。これらの手筋は他の定跡や展開においても役立つことが多いです。また、チェスのレシピでは白番においてクイーンズ・ギャンビットを主として取り上げてきましたが、その知識が役立つはずだからです。というのは、ダニッシュ・ギャンビットは、クイーンズ・ギャンビットをファイルひとつ右に動かしただけだからです。しかし、ダニッシュ・ギャンビットを取り上げるのは、他に大きな理由がありますが、それはこの定跡の分析を終えてから説明したほうがよさそうなので、シリーズの最後にお伝えします。

ある序盤定跡を自分のものにしたい時、その定跡を検討・研究するにはそこにも定跡みたいなものがあります。それを億劫がらずにきちんとやるとその定跡に対する理解が深まり、相手が研究にない手を指してきた時にも対応できるようになります。

ということで、さっそくダニッシュ・ギャンビットという序盤定跡を検討していきますが、このやり方は他の序盤定跡を研究する際にもまったく同じことが言えます。自分で興味のある定跡に適用してみてください。

ダニッシュ・ギャンビットは次の駒組みを目指すものです。

第1図

手順は次のとおりです。

ここで疑問を抱いた人は序盤定跡の研究に向いているでしょう。つまり、第1図にならなかったらどうするのか?

どんな定跡であってもそれを相手は拒否する権利があります。その時にもこの定跡は有効なのかどうか、まずはそれを確かめる必要があります。つまり、この定跡は本当に使えるのか、を自分自身で確認する作業です。

初手e4に対してe5と受けてこなかった場合も考えなくてはいけませんが、八割ほどがe5としてくるというデータがあるので、1.e4、e5はひとまず固定してその先に話を進めます。

1.e4, e5 2.d4 に対して、

e4のポーンを狙うNf6が考えられます。

これに対しては、

あるいは、

どちらも白の形勢がよくなります。Nf6と来られても問題がないことがわかりました。

次回はNf6でなかった場合を検討していきます。いちいち面倒に感じられるかもしれませんが、これをやらないとどの定跡も使いこなすことができません。また、その過程でここをちょっと変えたらいいのではないかという発見があったりすることもあり、面倒であっても楽しい作業です。定跡と呼ばれている手筋は古今東西のさまざまな人がこのような作業を繰り返して今の形に進化したものですが、もしかしたらまだ別のいい筋が眠っているかもしれません。それを掘り起こすことができたら、こんなに楽しいことはないでしょう。それはまた、「折々のチェスのレシピ」を書いている人がかなえたい夢でもあります。


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