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『どですかでん』黒澤明全作レビュー&イラスト(24)

お疲れ様ですvintageです
さあ、問題作ですよ。合う人には合う、合わない人には全然合わないタイプの一作。リリー・フランキーがこの映画大好きみたいです
さてどんな作品でしょうか

ストーリーはこんな感じ

ここは貧しいドヤ街、少年がひとり機関車ごっこをする。住人たちは変わり者ばかりだ、下ネタ全開の共同炊事場の女たち、夫婦交換する奇妙な夫婦、浮浪者父子、妻の不倫で精神を病んだ夫、誰の子供かわからないが子だくさん一家、姪をいやらしい目つきで狙うクズなどなど、、

ここからレビューです、、
本作は黒澤映画初のカラー作品です。もともと画家志望だった黒澤さんの絵のイメージがそのまま画面にカラーとして現れたのでしょうか。見出しに描いたのは本作の空の色の模写です、かなりサイケというかどぎつい色をたくさん使っています。
白黒映画の巨匠の初カラー作となると色を強烈に意識するのでしょうかか、、、パッと思い出すのは

ベルイマンの初カラー作『叫びとささやき』

これは赤、とにかく赤が強烈でした。赤のイメージの中で4人の女性の複雑な感情のすれ違いが見事でした。

本作は群像劇で、貧民街で暮らす奇妙な人々の様子を描いた作品です。貧しいながらも、自由気ままで、性的に放縦で楽し気に暮らす人々。しかし不衛生ゆえの悲劇が起きます。また一人の少女の身の上に起きたこともキツイです、このあたりが本作に対し好き嫌いが分かれるかもしれません。白黒映画と違ってカラーだとえぐみが30%くらい増しますね。

決してハッピーエンドではないのですが、私が本作で魅力を感じる点は女性の性的パワーといいましょうかネガもポジも含め性的エネルギーが凄いのです。黒澤映画では女性が主人公の作品はほとんどなく、描き方というとしっかり者で男性をサポートする役回りが多いと思います。本作は女性が主人公といってもいいくらい存在感が強くって男性陣がむしろ右往左往しています。
特に好きなキャラはお蝶です。一度不倫をしてしまいそのことで夫は心を病んでしまう。お蝶は許しを請うが夫は心を閉ざしたまま。
これを演じているのは奈良岡朋子さんで、なんともいえない大人の色香があるんですね。ネットで『どですかでん』の画像を検索していたらイタリア版のポスターがありました。こんな感じ模写しましたがお蝶をメインにもってきています.

この『どですかでん』国内では興収も散々であり、あまり評価されていませんが海外での評価は高いようです。このイタリア版ポスターはさすがだなあとおもいました、目の付け所がなんともフェリーニのイタリア。

まあ個人的にも”ザ映画”としては『七人の侍』とかのような骨太でわかりやすいストーリーに心を惹かれるのは否定できないものがあります。
それはそうなんだけども本作の楽しみ方は違うと思うんです。絵を見るように途中で止めてもいいし、どっから見始めてもいい
、気に入った場面は戻して二度見してもいい、時系列の起承転結の物語を求めない、これは絵なので。
山本周五郎原作のタイトルは『季節の無い街』であり、それは言ってみれば時間が流れないということ。
この街には時間の経過はなく、ただ絵がそこにあるという感じ。

ただ黒澤さんは何も映らない場面を本作では作りたかった気がします。冒頭と締めで六ちゃんが空想で汽車ごっこをします。画面には貧民街の空き地しか映ってませんが六ちゃんには汽車が見えているのでしょう。
初期作の『素晴らしき日曜日』では、無人の公園でオーケストラがいるかのように演じる男が描写される場面もありました。
そこから23年後の本作でも、六ちゃんはなにも映っていない空き地に電車を走らせるのです。
映画というものはカメラ=機械で撮影するので絶対に何か映ってしまいますが、黒澤監督はあえて映ってないものを映して観客に想像させようとしたのかもしれません。

かなりとっつきにくい本作ですが、気軽に適当にみるといいですよ
ではでは

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