子育て社会の終焉と介護社会の今後
保育と介護
昨日の大きなニュースを見て、遂に時代がここまで来たかと痛感したので書いておこうと思った。背景として、私自身、2016~2019年の3年間、「日本の子育ての現状を変えたい」「誰もが安心して子育てできる社会にしたい」「未来の日本を支えるのは子どもたちでしかない」という思いを持って、保育事業に邁進していた。(当時)国内6~7番手、西日本最大手の保育事業会社で営業部門の責任者として全力を尽くしていた。その頃に気付き、叶わなかった理想が、(崩れたとは世間に気付かさせないまま)次のステージに入ったのがこのニュースだ。
結論から言うと、保育事業は介護事業の「おまけ」になり、介護事業は「生命保険事業」の「おまけ」になるということ。東京に一極集中した大企業は常に「儲かる場所」でビジネスを行なう。その結果、未来社会がどうなるとかよりも、究極は「儲かる場所を維持し、占拠する」ことが最優先だ。そのために企業献金と法人税減税のセットで、政治と大企業のズブズブは脈々と築かれてきた。その一端がこの介護事業の行く末であり、保育事業の行く末だ。
夢の子育て社会
私自身は大学入学直後の18歳で仕事を始めてから、「保育事業」には全く縁がなかった。一方で、子育てには非常に熱心に取り組んできて、自身の子育て経験から(今でこそ珍しくないけれど)「お母さんのワンオペ育児とかあり得ない」「育児はプロが担い、親は愛情を全力で注ぐ」環境が必要だと訴えてきた。共働きが当たり前の時代になることを含め、日中の育児を担う保育事業は更に進化が必要だと取り組んでいた。
だが、大きな壁が国の政策だった。保育事業は、下記の介護事業と同様で、そのほとんどが国の補助金でまかなわれている特殊な事業だ。民間事業とは根本が異なる。補助金がもらえるために事業を行なっていて、補助金がもらえないことは(事実上)何もできない。つまり、国が「この国の子育てはこういう方針でやるんだぞ」と言われたら、それに従うしかない構造だ。だから、現場は疲弊する。とことん疲弊する。なぜなら、国=霞が関の官僚の皆さん、は子育て現場や事情を知らなすぎるから。特に決裁権限のある幹部職、その声を政策に反映するズブズブの政治家先生、などは「ワンオペ育児で我が家は何も問題がない」と思い込んでいる人たちばかりだ。そんな国を相手に、九州の一民間企業の幹部がガーガー言ったところで、少々荒っぽく接待漬けしたところで何かが変わることはなかった(これが私が保育事業の夢を諦めた理由)。
そんな歪んだ保育指針が根っこにある状態で、更に火に油を注ぐように少子化を全く止める気がない(選挙に行かない子育て世代や、そもそも選挙権がない子供の声など聞くわけがない)ので、ようやく待機児童問題に歯止めが掛かり、保育士の待遇改善も社会問題化しつつあった矢先に、そんな声を無視するかのように、「もっと出生数や出生率も減れ~」と願っているかのごとく、少子化対策は「ポーズ」と化していく。。国の指針が逆を向いていたら、保育現場はそっちを向かざるを得ない構造だ。こうして、この国の子育て支援を終了した(と、私は思っている)。
現実の介護社会
そこになぜ介護の話なのかというと、前述のとおり、保育事業と介護事業は同じ「国から補助金をもらって運営する事業」なのだ。純粋な、お客様からお金をいただき、サービスを提供して運営する民間事業ではない。
更にいうと、保育事業者と介護事業者はほぼイコール。なぜなら、国の補助金事業は利益率が低い。それを継続するにはノウハウが必要だ。国からもらった補助金の範囲内で、人件費を抑え、販管費を使わず、デジタル化せずにアナログなオペレーションを継続し、僅かだが安定的な利益を上げるビジネスだ。(上位企業の大半がHDで上場しているので)当然ながら、売上増・利益も微増、という形を取り続けるためには規模拡大が必須(補助金ビジネスの構造的に利益率の改善は困難)。そこで同じ類の保育と介護を両方行なう事業者が非常に多い。今回のニチイ学館は、学校給食から保育事業、介護事業へ発展していったケースだ。
更に親和性が高いのは、実は保育施設・介護施設は使い回しが殆ど効かない特殊な建築物だ。だからこそ、両者は使い回しが容易で、保育施設を介護施設に、介護施設を保育施設に、という転用は多数存在している。
今後、高齢者の数が増え続け、高齢者施設のニーズも増え続けることを考えて、しかもその方々が貴重な固定組織票だと考えると、政府が介護事業の存続に熱心になることは誰もが理解できるところだ(今話題の、高齢者の社会保障費負担を若年世代に負わせることの不合理など関係ないのだからw)。
今後の介護とは
そして膨れ続ける介護事業においては、まずは衰退していく保育事業をどんどん吸収し、「子供の未来に向けて」などの大義名分など忘れてしまったかのような流れが進むだろう。現在の政治家の方々が死んだ後のことまで想定して政策を立案しているとは思えない。。残念ながら。
そして、国民の半数以上が高齢者という時代が訪れ、その受け皿である介護事業は国にとってはなくてはならない事業となって、絶対に民間に手放すことなく、補助金ビジネスとして残り続けるだろう。その頃には子育て支援は終わっているかもしれない(終わって、真の民間事業となった方が正しい子育て事業が行われることになるだろうと思うけど)。
(結果的に)子育て支援を潰して、生き残る介護事業。そんな国に未来があるのかどうか。。
今どきのM&A
これはXにも投稿したおまけだけれど、国の恩恵(手厚い支援w)を受けてお金を貯めに貯めまくった大企業は、M&Aをどんどん増やしている。未来に向けた外向きのM&Aはどんどん進めるべきだけれど、今回のような内向きのM&Aは要注意だと感じる。利益を増やすための「売上増」「利益率増」が自力では難しい中、株主に対しては「力ずくでも」結果を出さないとならない。多くの上場企業が販管費を激減させて「見た目は利益激増だね!」とやっちゃうように、固定費(販管費)を減らすのは、夢のない経営者(現実的な経営者)なら誰もが狙うところだが、固定費の最大を占める「人件費」が日本では減らせない。要するに解雇ができない。その裏技として、M&Aで事業を購入し、一瞬、将来への期待感で株価も上がり、人員を動かす大義名分もできる。その結果、元々の事業をそれほど大きくできなかった際には、事業ごと捨てることはできる。その際には、解雇ではなく、自主退職が容易だ。。悲しいかな、これは経営企画の人たちなら考えてしまうところ。。