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飲食アルバイト50代お局様!第18話 人が失敗するのを見張ってるお局 ついに私はキレた   



 日曜日人が足りないので入ってくれと頼まれシフトを入れた。
憂鬱だ。一号さんがいる。また怒られたらどうしよう。
朝から店内はけっこうな賑わいを見せている。
職場の人たちに挨拶する。
会ったこと無い男性がキッチンにいる三十代半ばの浅黒い肌で黒髪の男性。バングラの人かな?
挨拶して自己紹介も簡単にした。男性はニコニコしていて感じがいい。
良かった。
「おおー、救世主。」
私を見てそう言う一号さん。この間の事すっかり忘れているらしく笑顔だ。この後何回怒られるんだろう。身構えてしまう。
 その後も洗い場のカウンター前でちょっとした会話をする一号さん。トレンチに使用済みのポーションのミルクがこぼれてしまったようだ。
「こうなるのやだよね。」と人懐こい笑みで話しかける。
警戒心を解くことができず作り笑いで対応する。

 日曜日だけあって忙しい。
使用積みの食器を回収し新規の客を案内する。オーダーを取りキッチンに伝える。コーヒーをカップに入れ配膳する。洗い場から戻ってきた食器を所定の位置にしまう。
ん?このプチサラダ用の食器ってキッチンに戻すんだっけ?キッチンの熊田さんに尋ねる。ついでに他の事も質問する。親切に答えてくれる。私は相槌を打つ。
「あ、はい、はい・・・このナイフもキッチンですね・・・」
熊田さんと話していたからその時そばに小さい人影がいたことに気が付かなかった。
「ハイハイじゃないでしょ~!」
例の意地悪な声にびくっと体がこわばった。
振り向くと一号さんがいた。虚を突かれた驚きと積もり積もった怒りで血が逆流し自分でもびっくりするくらいの大きな声で言った。
「はい、すみませんでしたっっっ‼」
あー、クソ!わざわざ人が失敗するの見張ってんのか、この人は!
待ち構えてたかのように出てきて!くだらない!怒りと動揺で手が震える。悔しさで涙がにじむ。私も怒っているけど一号さんはもっと怒っている。
「あのさー、そういう顔するのやめてくれる?」と私に言う一号さん。まだ頭に血が上っていて怒りが顔に張り付き一号さんの顔を見てはいないものの目が吊り上がっているのが自分でもわかる。でもこういう精神状態になるまで追い詰めた張本人はあんただろうが。また大きな声で言う。
「私だって嫌なんですよっっっ!」
あー。
また会話になってない。
何が嫌なのか伝えなくちゃいけないのに・・・。
キレる時漫画やドラマの主人公みたいにかっこよく啖呵を切りたいのに現実はキレるだけで精いっぱいで支離滅裂だ。
かっこ悪・・・。
(つづく)


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