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医療従事者は決して嘘をつかず、誠実であれという嘘 | 医療倫理学解説
大学院で公衆衛生学を学び、健康的な社会を目指す理学療法士のジローです。
大学院生活が一段落し、今は、自分の研究も一段落しているので、次のステップに向けて、気の向くままの勉強をしています。
5月は、臨床倫理や政治哲学について、よく勉強をしました。
‖ 医療倫理を勉強している理由
大学院時代には、特に疫学に興味を持って学習を進めていました。
疫学と言って、パッとイメージできる方は少ないと思いますが、治療の効果や優劣の判定、エビデンスの構築などに大きく関わります。
現在の医療では臨床疫学的研究で得られた数値結果が、かなりパワーを持ちます。
その知見を実際の臨床現場で応用したり、社会に広めて行くためには、倫理的な振る舞いや行動指針が重要と考えており、疫学の勉強をしたら、その時間分は倫理の勉強をする時間にして、バランス感覚を何とか保つようにしています。
今回は、勉強した臨床倫理学の義務論(deontology)の中から医療従事者の嘘について記事にしました。
‖ ドイツの有名な哲学者、カントは言う。「絶対に嘘はついてはいけない。」 と。
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彼は、小さな嘘、苦し紛れ(困り果てて)の嘘も全て許されないと主張している。
嘘をつかないと言う真実性は、契約に基づく全ての基礎とみなされなければならない義務である。
たとえほんの少しでも例外が認められるとすればどのような時だろうか。
もしそれが許容されれば、全てぐらついて役に立たなくなってしまう。
契約の時に、嘘なんかあったら、大変ですよね。
私もできるだけ誠実に生きたいと心から思っています。
‖ 医療従事者が患者につく「嘘」
「私の命は、あとどれくらいですかね?」
「そうですね。1ヶ月ですね(サラッ✨)。それは、それは苦しい最期になりますよ。」
そんな事、言えないですわ。
リハビリテーション医学の大家 上田 敏先生も著書の中で
後遺症を伴うような障害をもった時、障害の受容へのプロセスで、以下のように述べています。
ショック期の次には「否認期」がくる。障害という現実が押し寄せてくるが、実際には押し返すことができない。そのような時に働き出すのが「否認」という心理的な防衛反応で、これは障害という現実を自分の心の中だけで押し返すことである。
自分が簡単に治らない病気になったことを一応は認めるが、このように突発的に起こった病気は、また治るのではないかという幻想を抱いていていて、それにすがっている状態である。
ただし、この時期には、そのような幻想もある程度必要である。患者さんには、たとえ幻想であっても、それが生きる支えになっているからである。
それに対して、「元通りには治らない」などど宣告する医師もいるが、これは患者さんをほとんど自殺に追い込むようなものである、別にうそをつく必要はないが、患者さんがすがりついているものを粉々にするべきではない。
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私のリハビリテーション観に多大な影響を与えた事は間違いない。
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あの頃に戻りたいような、戻りたくないような。
一緒に成長した本です。
この辺りの、バランス感覚ってとても難しいですよね。
学校で誰か教えてくれるわけでもないし。
人として言ってもいいこと。悪いこと。
PTが言ってもいいこと。悪いこと(職業倫理)。
前向きになってもらうために言うべきこと、言わない方がいいこと。
欺く嘘、貶める嘘
優しい嘘、思いやりの嘘
あー、難し。
‖ リハビリテーション教育としての倫理学
養成校で習う「倫理」って、国家試験対策かつ、出る内容は大体似ているので、学習する範囲も少ないし、そもそも、どういった肩書きの人が教えてくれたんだろうか?
義務、正義、道徳など、個人の主観や価値も入りやすいから、教える事ってすごく難しい領域だと思います。
病院で働いていると、昔以上に倫理的なジレンマで悩む事が多いです。
やはり、卒前教育をベースに、各施設で倫理的な問題点に主眼をおいた症例検討会、病棟回診が重要で、草の根活動で広げていくしかないのだと思います。
臨床倫理の専門家によるコンサルテーションや、病院倫理委員会の意見を参考にしたいところですが、一般病院にどれだけ専門家がいるのでしょうか。大学病院や地域の基幹病院などに研修に行くなどの工夫が必要そうですね(行かせてくれないと思うけど)。
一人一人の医療従事者が、倫理的な考える能力を持ち、倫理的に好ましい行動を自発的にとれる未来には、きっと健康的な社会と、今よりも良い医療の提供ができると信じて、学習と発信を続けていきます!
今後とも、よろしくお願い致します。
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