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【SSW08:WORKS】ミステリアスな美しさを持つ楽曲群と、こだわりのセルフ・プロデュース

浜松を拠点に活動するピアノ弾き語りシンガーソングライター、藤田充(ふじた・みつる)。彼の楽曲の特徴や、これまでに発売したCDの詳細などに迫った。

透き通った声で紡がれる世界

自分のアピールポイントは『声』だと言う藤田。「『声が良い』と評価されることが多いので、これを生かして自分の音楽を伝えていきたいです」。

確かに彼の声は美しく、どこか神秘的な響きを湛えている。

『深く、広く、あおい。海のような歌声と、脈々とした生命を感じさせるエネルギッシュなピアノ。“深海系”シンガーソングライター』というキャッチコピーがぴったりだ。

「このキャッチコピーは、Twitterで公募したものなんです。幾つかの案が送られてきたなかで、『すごくいいな』と思って、採用させていただきました。僕のイメージを上手く言語化してくれています」。

そんな藤田の代表曲は、1st Album『螺旋階段』の一曲目に収録されている『あお』だ。

「音楽活動を本格的に始める直前に作った、自分の名刺代わりの曲です」。去り行く恋人への未練をロマンチックな表現で綴った失恋ソングである。

「『あお』に限らず、自分の経験をもとに詞を書くことが多いです」と彼は語った。「最初からAメロ・Bメロ・サビと構成を固めて、歌詞カードのようにがっちりと書いてしまいます。それをプリントアウトして、眺めながら、ピアノでメロディをつけていきます」。

こだわりは、言葉のアクセントだ。

「たとえば『星』という言葉は、『ほ』より『し』の音の方が高いですよね。メロディをつけるときに、なるべく日本語のアクセントに逆行しないように意識しています。色んな表現の仕方があると思いますが、僕のポリシーとして、日本語が伝わるように歌いたいんです。声優としての経験にも繋がっています」。

同アルバムの最後に収録されている『飛来地』も、ファンから好評を博している楽曲だ。

「色んな場所で弾き語っていると、他の出演者の曲を聴く機会が多くあります。『この人はこんな思いで曲を作っているんだな』『こういう表現の仕方するんだな』と考えるうちに出来た曲です」。

「何ヶ月も飛んできた鳥が降り立つ場所が、飛来地です。自分の歌を渡り鳥に喩えて、どこか遠くへ、知らない誰かのところに届けばいいなという気持ちを込めました」。

どんな人に自分の曲を聴いてほしいですか?と訊くと「特に、同世代の方には共感してもらいやすいんじゃないかと思っています」と藤田は言う。

「自分が小さいころに聴いてたアーティストの影響を受けていたり、自分の経験を歌詞にしていたりするので」。

美しいメロディに乗せた美しい言葉と、それを表現する綺麗な声とピアノ。深く青い海に潜っていくような時間を味わってみてはいかがだろうか。

3枚のオリジナルCDと、コンピレーションアルバム

2017年1月に『SMILE SONG』、18年11月に『根』と、ピアノ弾き語り音源を3曲収録したCDを発売した藤田。満を持して18年12月18日に発表した『螺旋階段』は、全曲フルアレンジのアルバムとなっている。

「何年も前からアルバムを作りたいと思っていましたが、腰が重くて、なかなか進まなかったんです」。彼は苦笑して、「弾き語り音源を収録するだけなら時間はかかりません。だけどやっぱり、学生時代から打ち込みを習ってきたので、ちゃんとアレンジした楽曲をアルバムとして出したくて」。

一曲一曲、自ら編曲しただけではない。

「スタジオを借りて、自分の機材を持って行って、セッティングして、メインボーカルとコーラスを録音して、データを持ち帰って、編集して、ミックスして……。最初から最後まで全部ひとりで、頑張って完成させました」。

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音源制作以外の部分もセルフプロデュースにこだわった。

「CDをプレスする業者を選んだり、ジャケットのデザインを作ったり、販路を探したり、大変でした」。

フォントや色遣いなどは、デザインの本を買って勉強したという。

アルバムは、個人レーベル『タコツボレーベル』から発売。ロゴを制作したのは、デザインスキルに長けた友人だ。

「壺にはオクト(OCTO)マークがついています。足が3本出ているのもポイントです」。蛸壺からひょっこり頭を出したタコが足を出している図は、なんとも言えず可愛らしい。

藤田の名前をあしらったロゴマークも、同じ友人に依頼した。

「僕の好きな深い青色で、好きな数字の『8』にちなんだ八角形になっています」。2つのロゴは、ホームページやグッズなどにも使われている。

次回作について訊ねると、「作りたい気持ちはずっとあります。ただ、なんといっても腰が重くて…気づいたら時間が経っています。近いうちになんとかしたいですね」。

彼の楽曲は、20年1月発売の『はまあこんぴ ーはまあこばこコンピレーションアルバムー』でも聴くことができる。

はまあこばこさんは、浜松の地元アーティストを応援するボランティア団体で、とてもお世話になっています。フリーアコースティックイベントを企画してくれたり、アルバムを出したり」。

はまあこばこイベントに出演経験のあるアーティスト同士で、期間限定バンドを組んだこともある。

「メンバーがシンガーソングライターばかりなので、面白かったです。30分の演奏時間の中で、一曲ずつボーカルを交代して歌いました。会場は盛り上がったし、僕にとっても楽しい時間でした」。

藤田が次はどんな作品を世に送り出してくれるのか、待ち遠しい。

text:Momiji photo & hair-style:LuLux Hair Salon

INFORMATION

毎月第二火曜日 open 19:30 / start 20:00
「藤田充マンスリーワンマンライブ~envelope~」
[会場]Live cafe bar・なんでモール(静岡県浜松市中区上島5-22-26)
[料金]¥1,500(1drinkとお菓子付き)
[出演] 藤田充 ※90分間のワンマンライブとなります。

2018.12.18発売 1stアルバム『螺旋階段』(10曲入/¥2,000)

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