20190702ピピンLP

『ピピン』2019年日本版が面白かったよ、という感想

ブロードウェイミュージカル『ピピン』の日本版を観ました。
日本版というよりも『PIPPIN』そのものに言及しています。

ピピン初鑑賞でしたが、めちゃくちゃ面白かったです。
日本版がキチンとクオリティを保っているから面白いと思えるのでしょう。
東京公演は6月で千秋楽を迎えますが、地方公演がございますので、気になる方は是非に。

今後一生見れなさそう(物理的に)

ブロードウェイ(リバイバルのオリジナル)版のチームが演出など手がけていること、現地の舞台装置、役者の質などからしてめちゃくちゃお金かかってます。
先月同じくオーブで3年ぶりに再演された『キンキーブーツ』同様、そうそう公演できないでしょう。(ほぼ同じキャストで再演出来たの奇跡的!)
字幕を介さず、ただ舞台上を見るだけで話が追えるのは日本語版のいいところです。視点の大移動がいらず、ダイレクトに伝わるの本当に有り難いです。

「優しい物語」だが「易しくない」

ストーリーは自分探しの物語としてめちゃくちゃベタで王道を往くものだと思います。優しく自分の人生を肯定してくれます。
ただ、作品の捉え方が観客に託されてるので「易しい」とは言い難く。サーカスは見てて楽しいので万人で盛り上がれますが、各自で解釈が必要なところが作品としての好みは分かれそうです。
常に「凄い!」とはなるのですが、終演直後に「面白かった!」となる作品ではなかったです。あくまで私はですが。
帰宅して落ち着いてから、あのシーンどういう事だったんだろうかと考えながらこの文章を打つ今。反芻するとジワジワと満たされていく。

観劇前に感想を探して辿り着いた方へ

全体に細かい演出やストーリーについて濁しているのは、このnoteは既に観た方向けと言いますか…これから観劇予定の方は公式HPのあらすじと「劇中劇である」という事だけ頭に突っ込んでこの画面閉じてください!初見の方は公式HPのあらすじだけ押さえて頂ければ大丈夫…いや、むしろあらすじは見た方が良いです。

『劇中劇』――このポイントを掴めないまま見終わると、おそらく本作は単純に「アクロバット凄かったわ」で終わると思います。
いや、それでも十分面白いんですけどね!
お楽しみポイントや見どころを事前に見ていると100%素直に楽しめないので、なるべく前知識なしで行って欲しい作品です。
公式以外見なかった私はとても偉いと思いました(自画自賛)
しかし、それゆえに上手くオススメが出来ないのが難点だな~~~


※以下、主観混じりなので公式設定に基づいているかは不明です。

リーディングプレイヤーが見せるは、人生の大いなる意味を模索する若き王子・ピピンの物語。そして着席する我々は「一座が見せるショー」を見に来た観客。
オーケストラも照明も、全てが演者なのです。言ってしまえば我々観客すら「観客」という役の一つとも言えますね。
サーカスやアクロバットに関する道具以外、例えば王冠や農具、動物などが若干チープだなぁと思ったのですが、全ては劇中劇ゆえなのだと後から気付きました。
いや、劇中劇であることは観る前から知ってたのですが…それすら忘れるほどサーカスに魅入られてたので。正しく“Join us”な状態。
どこからどこまでが一座のショーなのか…
現実と虚構の境目が曖昧になるのがこのミュージカルの醍醐味でもあります。

『ピピン』がミュージカルである必要性

命綱なしのアクロバットの数々で、見てて興奮したのですが心のどこかで「ミュージカルである必要があるのか」と途中ちょっと思ったりもしました。
ただ、あの現実をガツンと突き付けるにはサーカスくらい現実離れした魔法が必要だったのか! と帰りの電車で一人勝手に納得しました。
ちょっとチープな作り物の小道具、都合よく蘇らされる国王、言葉一つで明るくなる照明――虚構という平面が続くからこそ、「劇」が終わった時の奥行きや実際の暗闇の強さがより引き立つ。
実際に、すべてが無くなったときの奥行き(物理)はすごかった。ああ、これが現実、と突きつけられました。

冒頭から火を持って、まだかまだか、とフィナーレを待ちわびている男がいました。最初見たときはコミカルだなぁと思ったのですが、ただ男は「フィナーレ」を待っていたのでした。
劇のあちこちに違和感があって、それが繋がったときのゾワッとした感じは快感ではなく、ある種の恐怖とも言えましたね。
おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさと、たまに見る不思議で不気味な夢のような気味悪さが混在するダークファンタジーだなぁ。

休憩明け、サーカス一座が客席に降りて盛り上げる演出は2階席にまでキャストが来ててビックリしました!(1階から3階は視野的に見えず)
随所随所で一座が観客を巻き込むことが多く、没入感を高める良い演出だったなぁ。

若さゆえの「自分は特別な何かであるに違いない」という考えから、遠回りをしながらも「ささやかな幸せでいいじゃない」という気付きに至る。
自分探しの物語としてはベタですが、見てる人の置かれている状況によっては刺さるなぁと。
ただ私は何よりも、アクロバットや歌で魅せた『魔法』が解けた瞬間の落差と驚きが本当に好きなのです。
演出と構成にしてやられました。 これが舞台でないと感じられない、舞台の醍醐味ですね。


以下、敬称略で箇条書きで個別の感想。

・ぶっちゃけ第2幕途中まで「アクロバットと歌が凄いで終わってしまうのか…」とぼんやり思った自分に右ストレート。

・城田ピピンは、ビジュアルで甘ちゃん王子って感じでした!青二才王子!笑
歌声のトーンがオリジナルと似てるなぁと思った。出ずっぱりなのでたくさんお肉食べて体力つけて倒れないように…!

・Crystal Kayのスタイルとリーディングプレイヤーの衣装、ベストマッチ。
ミュージカル初とのことでしたが、歌も舞台に寄せてきてましたね。フライヤーに入ってたのですが「ヘアスプレー」日本版にも出演されるのですね。
それにしても初ミュージカルがアクロバット付とは、恐ろしいぜ日本の演劇界…!
思った以上に宙に居てビックリしました。

・バーサおばあさま(私の見た回は前田美波里さん)の空中ブランコSUGEEEEEEEEE!
あのナンバー終わった後がカーテンコールなのかってくらい拍手止まなかったです。
え、70歳? サポート有りとは言え空中で吊るされてポーズ取りながらブレずに歌う70歳…?

・お母様も凄い回る回る。サーカス以外のキャストもダンス以外にも全体的に運動量多くてビックリ。
誰かしら、一回でも失敗したら大怪我ものなので、あんまりロングランさせられないなぁと。

・戦争の場面が、スローモーションで『暫くお待ちください』的な感じでコミカルだったのは、サーカス一座が演じる戦争ゆえにコミカル、という解釈でおります。
(サーカスでリアルな戦争を演じることはないと思うので)
だから首も吹っ飛ぶし、頭と体がバラバラでも喋れるし、リアルな死という怖さはない。まあ不気味は不気味でしたが笑

・ピピンが性に溺れるシーンがけっこうダイレクトでしたね。檻の中に男性もいたぞ…あれ…!?

・サーカスと言えばトランポリン! と勝手に思ってたのですが、普通の会場でトランポリンやったら天井にぶつかりますね(そりゃそうだ)
しかし、かなり小さいとは言え、よく火をあれだけ使えたなぁと。

・作詞作曲のスティーヴン・シュワルツの名前は『WICKED』で存じ上げていたのですが「Magic To Do」めっちゃ良い曲だなぁ。導入として最高ですね。
ところで『WICKED』の映画は…いつ正式に決まりますか…

・日本人は地毛が黒髪なので、ウィッグ取れると一気に現実が押し寄せてきました。

・彼にスポットがあたり、「Magic To Do」の冒頭が歌われた時が一番ゾッとしました。劇は演じる者が居る限り終わらない。演劇をお仕事にしてる方が見たらそれはそれで凄い複雑な気持ちになりそうだし、活力にもなりそうだなぁ。

まさかこんなどんでん返しのある作品とは思わず、勢いでP席(10列目以内保証付き・一番お高い席)取って本当に過去の私は偉かった。
素敵な作品を観ることが出来て良かったです!

#ピピン #PIPPIN #感想 #ミュージカル

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