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【IR系AC】IPO準備にIR担当者が参加する意義

1.はじめに

株式会社リアルゲイトのIR担当です。当社は2023年6月22日に東証グロース市場に上場しましたので、ちょうど半年が経過しようとしています。IPO実務を担当したIR担当として、東証の鐘を鳴らす機会を与えられたことは、自身のキャリアの中でも最も印象深い経験の一つです。

東京証券取引所(2023年6月22日)

さて、この度は、Lawyer’s INFO COO&法律事務所forkのシゲマツさんの企画した「裏IR系 Advent Calendar 2023」に参加します。IR研究室の柳瀬光太郎さんの株主資本コストにかかる素晴らしい記事の翌日となりますが、今年上場したばかりということもありますので、「IPO準備にIR担当者が参加することの意義」についてお話したいと思います。
IR担当者がIPO事務局にコアメンバーとして参加することで、主に三つの要因によってIR活動の質の向上に繋がると考えます。一つ目は、IPO準備をとおして自社の事業理解が深まることです。二つ目は、マーケットのプロたちの目線がどのようなものかを学ぶことができることです。そして三つ目は、IPO後のIRを見据えた開示体制を主体的に構築できることです。
以下、IPO準備から現在に至るまでの経緯を説明した上で、それぞれの要因についてお話したいと思います。なお、IR担当者がIPO事務局にコアメンバーとして参加した舞台裏については、noteのIRを担当されている三浦さんの記事がとても臨場感があり、共感することが多かったです。


2.IPO準備から現在に至るまで

主幹事証券である大和証券とのキックオフミーティングからはじまり、証券審査、東証の上場審査、機関投資家へのロードショーなど、実際に上場するまでに、膨大な量の質疑応答・資料作成、ディスカッションを経る必要がありました。私はDD(デューデリジェンス)されるの大好き!という、質問項目の数が多ければ多いほど、内容が複雑であればあるほどテンションがあがる、割とハードコアな性格(※菊池(←公認会計士な経理部長、2024年1月からは執行役員)からは「ソルジャー」と揶揄されています)なので、終盤に近付き質問の数が少なくなり内容が単純なものとなってくると「なんか物足りないというかつまらないですね」というような若干調子にのっている発言を、上司である横山(←公認会計士な取締役)にしていたのを思い出します。並行して、コーポレートサイト刷新・IRサイト構築を行いつつ、日々のTO DOをこなしていくうちに、親会社変更(入社直後一発目の業務!これも驚くほど短期間!)・主幹事証券変更からは、極めて順調な進捗(別名:超特急)で上場を果たすことができました(※上司である横山の目線だとまた違うとは思います)。
そして上場後の決算発表・メディア取材・機関投資家取材・個人投資家の皆様からのお問合せ対応・上場後初の株主総会、と並べたらきりがないですが、IR担当者としてステークホルダーの皆様との対話の場面にほぼ全て同席しています。

3.IR活動の質の向上に繋がる三つの要因

①IPO準備をとおして自社の事業理解が深まる

IPO準備は、証券会社や東証への自社の事業内容の説明が大きな比重を占めます。特にⅠの部・各種説明資料・ロードショーマテリアル・事業計画及び成長可能性に関する事項の開示資料といったIPO準備の中でも重めの資料を作成するには、自社の事業内容の深い理解が不可欠となってきます。資料ありきの説明ではなく、説明ありきの資料にしたかったので、常に「代表である岩本がどう説明すればリアルゲイトの成長性が伝わるか」を意識していました。このスタンスは現在も変わっていません。
さて、事業説明をする、つまり、言語化をするためには、徹底的に事業内容を理解する必要がでてきます。例えば、「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 作成上の留意事項(2022年4月版)」では、競合優位性やマーケット環境といった項目が記載事項として挙げられています。これらの要素を落とし込んで事業説明をしていく必要があるわけですが、言語化の過程で気づかされた、事業の「強み」もあったりして、結果的には深い事業理解に繋がっていきました。

②マーケットのプロたちの目線を学ぶことができる

証券審査・東証審査をとおしてマーケットのプロたちから様々な質問が投げかけられ、資料作成等で事業内容を言語化する必要がありました。「質問の数は向けられた銃口の数ではなくラブレターの数」という心持ちでディスカッションを続けていったわけですが、どの質問もマーケットのプロならではの示唆に富んだもので、学ぶことばかりでした。また、これは①と重複しますが、質問に答えていくうちに、自社の事業内容の理解がさらに深まっていった感覚がありました。上場承認後のロードショーも同様で、機関投資家の皆様からのシャープな意見は今でも参考にしていることが多いです。聞かれることが多い内容ほど、説明が不足しているのだなと、その分資料での説明を掘り下げたりしています。参考にした機関投資家のバイネームと助言内容、それに対してどう弊社が対応したかを具体的に挙げたいところではありますが、それはまた別の機会に。
ちなみに、IPOに際して最も長い時間を過ごすことになった主幹事証券である大和証券の公開引受部のPJメンバーの皆様に対しては「戦友」のような感情が芽生えます。楽しくIPO準備が進められたのは、公開引受部の皆様のご尽力ありきだと今でも感謝しています(横山・菊池からだけでなく、大和証券の皆様=戦闘力の高い凄腕証券マンたちからも武闘派だと思われているのが解せないですが……)。
そして、審査に携わっていただいた、主幹事証券公開引受部や審査部の皆様はもちろん、シ団の皆様・東証の皆様・関東財務局の皆様・機関投資家の皆様からの赤ペンが入るたびに、頭脳のキレキレっぷりに感銘を受けていました。もちろん、こちらもきちんと主張すべきことはして、ときにはバチバチにディスカッションをするわけですが(すごく楽しい!)、こういう優秀な方々がマーケットを支えていると思うと、自分も可能な限り努力を続けないとなと反省することばかりでした。

③IPO後のIRを見据えた開示体制を主体的に構築できる

IPO準備の段階から、どうしたらリアルゲイトの成長可能性を伝えられるか、何をKPIとして開示すれば投資家の皆様の参考材料となるのか、そんなことを考えながら審査書類を作っていました。審査書類をクリアするため、ではなく、IPO後を見据えて審査に臨んでいたことは、今の自分の業務の土台になっていると感じます。
IPO準備は本当に楽しいことしかなかったな、と思っているのですが、私の記憶力(及び屈強なメンタル)の問題の可能性も否めません。その証拠に、「(ひたすら楽しかったから)もう一度IPO準備みたいなことやりたいですね!!!」と上司である横山に話すと、首を大きく横にふられます。
さて、ここからは推測でしかないですが、IPO準備をやりきったことで、社内の信頼を獲得できたことも大きいと思っています。IPOで結果を出したからこそ、IR担当者として大きな裁量を与えられているのだと思います。IR noteもそうですし、ログミーでの書き起こしIRTVでの決算動画録画説明と組み合わせた決算発表当日のQAウェビナーの実施など、やるべきだと思った施策に対しては、すぐにGOサインがでます。今も発展途中ではありますが、開示体制をIR担当者自らが主体的に構築できているのは、とても幸運なことだと思っています。

4.おまけ(IRあるある)

「我が国経済」「であります調の呪い」「数字の半角全角ルールは廃止すべき」「宝印刷のWizLabo Searchは神」「MECE警察がきた」「相関するってp値どこ」「ご都合ポジショニング・ミルフィーユ」「XXX控除前利益ってその控除がキモなのでは」「有報って監査法人と記載例参考にしたい同業他社しかみない気がする」「この資料はXXX(特定のコンサル会社名)に違いない」「"so what?" って幻聴が聞こえる」「(開示項目「その他発生事項/決定事項」に対して)決定したら発生するし、発生したら決定するのでは?もはや哲学的な問いの可能性すらある」「Yahoo!掲示板に書き込んで反論するしかない(※しない)」「急にSNSが静かになったときは、不穏な発表の前触れ」「株価は意識してもコントロールできるものではない」etc.

IR暗号通信(詠み人知らず、あくまで一般論です)

おまけとして、IR特に開示にまつわる、あるある(だと思われること)。TDNETやEDINETにアップロードをする瞬間のあの緊張感、時間ギリギリなのにTarget(※東証上場会社ポータルサイト)にログインできなくて焦るとか、EDINETの締め切りってなんで午後5時15分なの?!といつも腑に落ちなかったり、関財(※関東財務局)からの着信にひやひやしたり。
PDFのプロパティ削除といった基本動作もそうですが、TDNETで資料のアップロードミスを目にしたときには、「明日は我が身」という感覚でヒヤッとします。開示までにしつこいくらいPDFプレビューの機会(並びに東証担当者の確認)があるのですが、それをすり抜けてしまうことってあるのだなと恐ろしくなるのは私だけではないと思っています(そう信じたい)。
なお、数字の半角全角ルール(1桁は全角、2桁以上は半角)は、公用文のお作法に則っているのかな、と考え、「『公用文作成の考え方』について(建議)」を眺めていたら、以下のような記載が。

全角・半角は、文書内で使い分けを統一する 算用数字に全角を用いるか半角を用いるかについて、特に定めはないが、使い分けの考え方を文書内で統一する。その際、全角と半角が混在すると、印刷文字(フォント)の選択によっては、不ぞろいや不自然な空白などが生じ、読み取りにくくなる場合があることに留意する。とりわけ年月日などの一まとまりの部分では注意が必要である。また、データや金額等の数値を示す場合には、半角数字を用いる。全角の数字は、情報処理において数値として認識されない場合がある。

文化庁「『公用文作成の考え方』について(建議)」P15

もう全部半角数字で良いよ…… と思いながらも、ぼやっとしていると他の書類でも癖で1桁を全角にしてしまう自分もいますし、他にも「お作法」は多岐にわたりますが、何よりも「伝わる」資料でありたいなと思っています。

5.おわりに

リアルゲイトは上場一年生ですから、本格的なIR活動ははじまったばかりです。業績で確実な成果を示していくことが大前提ですが、同時に、まずは「リアルゲイトを知ってもらう」ことが必要だと思っています。認知度向上は急務ですし、IR活動をどうしていくか日々模索しています。
IR活動、特に任意開示については、自由度がある分、具体的なアクションに至るまでにいささか慎重になってしまう面は否めません。しかし、有価証券報告書の項目にサスティナビリティ情報の記載欄が新設されるなど、社会的な要請として非財務情報の積極的な開示を求められているのは明らかです。情報量の多さが100%正解であるとは考えていませんが、自分が知りたいと思うことはきっとステークホルダーの皆様も知りたいはず、という心を忘れず、透明性・誠実さを大事にしながらIR活動を推進していきたいと考えています。
IRは面白くてやりがいのある仕事
だと心の底から思います。そして、「上場ゴールでなく、上場がスタート」というのは、まさにそうだと思っています。IRに寄せられるステークホルダーの皆様からのご意見や叱咤激励について、いつも感謝しています。リアルゲイトという会社の成長性を一人でも多くの皆様に知っていただけるよう、今後も発信を続けていけたらなと思っています。

リアルゲイトについて

当社に興味を持ってくださった方がいましたら、ぜひ、弊社ウェブサイト等をご覧ください。また、11月25日に実施いたしました、ログミー個人投資家向けIR説明会の書き起こしをご覧いただければ、おおよその事業内容をご理解いただけると思いますので、ぜひご一読ください。

また、都内でオフィスをお探しのみなさま、弊社物件をご検討ください!下記サイトは弊社物件を検索できるようになっていますので、アクセスいただけると嬉しいです。

明日の裏IR系ACを担当されるのは、株式会社ランディックスの松村隆平さんとなります。楽しみにしています!

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