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野球が好きなのにサッカーを習っていた私 【中編・中学校】

 友だちに誘われ、野球が好きなのにサッカークラブに入った私。
 あまりに下手すぎて、その友だちに試合中に叱責され辞めた。
 5歳で周りに流される経験をし
 7歳で、もう周りに流されない!と決心した。

 おかげでかなり意志の強い子どもになったと思う。付和雷同しなかった。
 例えば、小学校の卒業式。終わってから児童と保護者はバスに乗り込み、どこかへ向かう。謝恩会だ。
 その存在は、前から知っていた。
 6年になって、各家庭に、参加の有無を問う通知が配布された。内容をそこで初めて知る。
 教職員は、午後も仕事だから、誰一人参加しないらしい。
 はて?誰に対する謝恩の場なんだ?誰かの懐を潤すための行事ではないのか?確か大人・子どもの別なく一人5000円だった。それまで一食5000円の食事なんて経験がない。ボッタクリだと思った。
 僕は、不参加と返答した。調べた訳では無いが、毎年全員バスに乗っているように見えた。疑問に思わなかったのだろうか?と疑問に思った。
 全校児童85名で、不参加は二人だけだった。片割れのIくんは、親に、出ないから、その分会費をよこせと言ったと聞いた。僕は、そこまでの発想はなかった…
 二人で駄菓子屋にいった。Iくんは格ゲーが町で一番上手で、大会優勝歴もあるほどだったので、教えを請うた。

僕は格ゲーほぼ未経験
生ダラで木梨憲武が作ったキャラを希望して教わった

 ふと気づいたら、参加した友だちの姿が見えて、もう終わったの?やっぱボッタクリじゃん、と思った記憶がある。

 こういった、半強制感があるイベントにも正面からNOと言える日本人に育つことができた。末はソニーか東京都知事か。

 中学に入学した私。同じクラスのTさんが好きになった。あるとき、そのTさんとOさんが話しかけてきた。Oさんは学年で1、2を争う人気の美人である。
 「ねぇ、好きな人、誰?」
 面と向かって話すだけで、ドキドキなのに。
 何と言ったか覚えちゃいないが、ゴニョゴニョ誤魔化したと思う。

 なぜそんなことを聞いてきたのか?後の世ではこれをフラグと呼んでいるらしい。なぜそんなことを?なぜ?なぜ?なぁぜなぁぜ?
 曰く、
 二人と同じ部活の違うクラスのMさんが、私のことをいいと思ってる。
 というのだ。
 なんだそりゃ、想像したフラグと違う。
 向こうは私の名前は知らないで、姿を見ただけ。3人で誰なのか洗い出した結果、私らしいという結論に至ったらしいのだ。
 わが校は1学年7クラス!もあったので、1年時は知らない人はたくさんいた。それは不思議ではない。
 私も、Mさんのことは知らない。
 そして、多分それは迷探偵・毛利小五郎と銭形警部のトホホな推理で、いいと思ったのは僕じゃないって想像がつく。

 語るのは、入学してすぐに恋愛感情を抱いたTさんである。傍らには、自己紹介の掲示物で「将来の夢 ファッションモデル♡」ってたいそうなことを書いてるのに、真実味しか感じない美人なOさんだ。
 Oさんに目移りするのは、良くない。とにかくTさんが好きなのだ。
 Mさんは知らない。

 僕は、
 僕は、流されることにした。
 いや、ただ流された。
 「うん、付き合うよ」
 その瞬間、TさんとOさんのテンションは爆上がりだった。
 僕は冷静だが、相変わらずドキドキはしていた。
 流されずにまっすぐ生きようと決めていたのに、好きな人にキューピット役になってもらうってどうかしてるぜ?それ以上に、Mさんのことは何も知らない。それを二人が知ったらドン引きだろうな。どうかしてる。

 次の休み時間にMさんを見に行った。ぽっちゃりめだ。人のこと言えないが、モテる感じではないことはわかった。

 TさんとOさんは数人の男女を巻き込み、着実に外堀を埋めていった。
 Mさんはどういう感情だったのか… 絶対に人違いなのだが…
 ひとから好かれて嫌な気はしないから、それはそれでありだと思ったのだろうか…?

 ある日の放課後、屋上へと続く階段の踊り場、つまり人気のない場所で、私がMさんに告白するという段取りが組まれた。
 僕が言うのか… 全く会話したことない人になんて言えば… 遠巻きにギャラリーいるし恥ずかしいなあ… どうしてこんな事になったんだろう。でもさ、彼女がいるっていうのは悪いことじゃない。

 現地につくと、Mさんは、座り込んでいて、うつむいて、顔を覆っていた。表情は見えないが、顔から耳から真っ赤だ。あのときのMさん以上に顔から火を噴いている人を見たことがない。

 僕は何も言えずに見つめてしまった。膝は笑っている。まじまじと見て、この人と付き合うのか、この人と、この人と、そればかり考えた。それは負の感情ではなく高揚からくるものだ。だが、現実離れしていて、何かを畏れていた。なんか変だ。そして、何も言う言葉が思いつかない。好きとか、恋愛とか、付き合うって何なんだろう?

 グダっていると、ギャラリーから横槍というか、助け舟が入った。
 Aくんが、「だからー『I need you.I want you.I love you.』って言えばいいんだって、早くしろよ!」と何度も言う。そんなセリフ言えるわけ無いだろ!

 すごく時間をかけた後、ゴニョゴニョゴニョ、付き合ってください。ボソボソボソ。と言ったら、か細い声で「はい」と返事があった。
 一件落着ということで全員解散した。
 あとは若い二人で…というお見合いパターンもなく、全員解散した。

 付き合うことになった翌日以降、恋愛の達人たちがアドバイスをくれた。
 「電話してんの?」
 してない。
 「俺は毎日2時間くらい電話してる。したほうがいいよ。」
 そうなんだ!こいつら、そんなことしてるんだ!
 僕は、連絡先も知らないし、我が家でそれは難しいなあ‥(携帯電話はありません)
 というか、相変わらず話したことありません。

 TさんとOさんは相変わらず盛り上がっています。
 曰く、僕とMさんはテストの成績が一番違いの連番だったらしい。Mさんは部活の学年別のランキング戦で1番だったらしい。色々話してくれます。
 Tさんのことが好きなので、話す機会が多いのは単純に嬉しいものの、その内容、経緯を踏まえれば、Tさんとどうこう良い方向に発展することはありえない。まあ、それも自らの選択。
 Mさんとこれからどうすればいい?どうすれば…?

 TさんとOさんが、週末のデートをセッティングしてくれた。ボーリング。TさんとOさんも来る。TさんとOさんとボーリングなんてこうならなければ考えられなかった。それはさておき、Mさんだ。Mさんとこれからどう付き合っていけばよいのか。どう付き合えば。

後編に続く

 

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