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散ると言うほど儚くはない

ありきたりな話だ。
好きになった相手が偶然にも私のことを好きになって、一緒に歩いていた先で道が2つに別れていて、繋いだ手を離してそれぞれ違う道を進むことにした。
ただ、それだけのこと。

別れてから3ヶ月くらいになる。
私は元恋人の顔も、声も、もう忘れた。

今日、ふと思いたって彼の住んでいたアパートを検索してみた。
もうすぐ空き部屋ができるらしい。
そろそろ契約更新の時期だと言っていた。
部屋の位置からしても、おそらく彼が、引っ越すんだと思う。

なぜこのタイミングで見てしまったのか。
それならいなくなった後にわかればよかったのに。
そこまで考えたところで、そもそもこんなことしてる時点で我ながら女々しいなと、すぐに画面を閉じた。

新しい就職先を見つけたのだろうか。
次の女の子を引っ掛けているのだろうか。
その後どうしているのかは知らない。
彼のその後の人生に責任が持てないから、私は別れたのだ。

彼とのことは、いい思い出だ。
きっとこれからの人生の中で、今日みたいにふと思い出すだろう。
でもそれだけだ。今は特に思うことはない。

楽しいときもあったし、面倒なときもあった。
でも結局、誰かを愛するということが、すごく私の心を豊かにしてくれた気がする。

彼はたしかに、その点で私を幸せにしてくれた。
是非とも今度は、私じゃない誰かをしっかり確実に幸せにして、そして、幸せにされてほしい。

元カノの分際で、願うことはおこがましいかもしれないが、幸せになってほしいと思う。
付き合っていた頃の思うところが消えたわけではないけれど。
長くも短い人生の中で、自分が関わることのできた人が不幸になるのは、やっぱりそんなにいい気持ちがしないものだ。

しばらくは恋なんてできそうにないけれど。
私は私で、彼のためにも幸せになるつもりだ。

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