花々のようなめまいを俺に

検査の結果、良性だった。半年に一度は検査をしなければいけないそうだが、手術はまぬがれてほっとした。支払いがあって今月で契約終了なのに入院したら終わる。

 とはいえ、体調不良は去年の12月から続いていて、ここ二、三ヶ月で十回以上病院に行っていてへこむ。金も飛ぶ。例の病気の後遺症なのか、体力弱っていてそのまま回復できていないのか。

 ただわかるのは、確実に体力が落ちていて特に視力が落ちた。パソコン仕事なので、細かいミスが増えてしまったし文字がみにくくて、本やパソコンで文字を見るのがつらい。

 本もあありよまなくなってしまった。というか、小説を書くのと仕事探しと病院と激務でそれどころではなかった。

 今月で終了なのに、繁忙期真っただ中で、ものすごく仕事が大変。それが終わったら首切りかよと思うと働く気も失せるが、元々そういう扱いなのだ。仕方がない。会社にとっては代わりがきく部品なのだ。

 メンタルも体調も悪いが、どうにあ小説は完成させた。自分ではそれなりに書けたかなと思うが、他の人にとってはそうではないらしい。俺は自分の書いた小説が好きで、自分が作った物を愛せる、それだけでもいいなんて若い頃は思ってきたけれど、金が無いどころか支払いもあり体調もすぐれないおっさんになってから、色々ときつくなってきた。

 それでも人生は続く。自棄にならないように。むりかもしれない。でも、何かを見て何かをつくれたらなと思う。

 先日久しぶりに美術館に行った。

渋谷Bunkamuraミュージアム『マリー・ローランサンとモード』見る。彼女のファンというわけではないが、楽しめた。平坦な塗りではあるが、やはり印刷より実物の方がすごく良くて、特に一番出来が良いのは、他の絵より明らかに顔の描き込みも多い自画像だと思ってしまった。

 後年の作品では淡さではなく陰影が強くなっていたり、立体派・キュビスムに近い手法の作品もあり良かった。少し不機嫌そうな少女の絵は、俺が好きな今井キラの絵に近い物を感じた(とても良かったという意味合い)

あと、展示のもう一つのテーマがモードということで、バレエ・リュスに関する展示やCHANELの黒のイブニングドレス(これは撮影不可)もあって、エレガントでよかった。シルエットは縦長で動きやすそうなのに優雅。190近い男の俺はドレスを着られないのに、見てるだけで幸福になる。

 正直全然期待してなかったのに、本物の絵画を見ると作品の力に気持ちがしゃんとなる。のっぺりした画、ではなく平坦な塗りではあるけれど油彩の筆致や存在感がある絵画は良いものだ。印刷とは違う(何度も書いてあるが、印刷では本物の色調や筆致など再現できないので。印刷された作品も画集も大好きだ)

 シャネルの昔の黒のイブニングドレスが展示されていて、とても素敵だった。シャネルの黒のドレス、俺が女だったら絶対に着たいと思ったはずだ。品があるのに着やすそうで、服を着る楽しみ、輝きがそこにはあると思う。

 素敵な服は着られなくても、それをみにまとう人間を描けたらな、なんて思う。嫌な事ばかりで前向きにはなれないけれど、綺麗な物や人を思うと背筋を正しくしなければと思える。俺が駄目になっているとして、でも綺麗な物をきれいだと感じる心を失ったら、その時が死なんだ。多分。

 ボサノヴァやビル・エヴァンスを好きだからか、スタン・ゲッツの演奏を耳にする機会がそれなりにあり、ピアノ以外はそこまで聞かないのだけれど、サックスもいいなあと自然に思えるようになってきた。エヴァンスとのライブ盤のbut beautiful がとても良かった。跳ねてごきげんでクールで、ジャズのライブってこういうものなんだなーと思った。

 先日行ったgreat3のライブもめちゃくちゃよかった。美術館には行くが、ライブにはあまりいかない(金が無いから)のだが、生の躍動感と彼らが生きて、いきいきと演奏している、というだけで嬉しい。嬉しかった。また会いに行きたいなって。昔の人のでもCDで会いたいなって。

 若い頃はお金がないのを言い訳に、図書館で借りた本は物凄く読むが減兄は行かなかった。それを後悔はしていないけれど、今は目が悪いし体調も悪くて思うように過ごせなくなってきた。きれいなものをみて何かをつくる、ではなく、休日は疲れ果てて何もできない日々。

 結構心は折れているけれど、また作品を作ったり美術館やライブに行って生き延びるしかない。徒花人生でも、まあ、花があるとしたらそれでもいい。

生活費、及び返済に充てます。生活を立て直そうと思っています。