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【書評】慎泰俊「正しい判断は、最初の3秒で決まる」

概要

 著者は五常・アンド・カンパニー株式会社の代表取締役。Forbes JAPANが選ぶ「日本の起業家ランキング2024」で1位に選出されている。
 
 この本は、直感や信念とは何か、それらが個人や組織の発想や意思決定にどう影響しているか、直感や信念を鍛えるためにはどうすればいいか、という点について、著者の経験を踏まえて書かれれている。

 第1章は、経験の重要性に触れつつも、新しい事業を作る際には、経験が正確な判断を阻害し得ることを説明している。
 第2章は、直感や信念が事業を行う際にどのように役に立つのか、直感や信念の特徴について説明している。
 第3章は、直感と信念を高める方法を説明している。
 第4章は、直感や信念が他社との競争においてどのように役立つかを説明している。
 第5章は、直感や組織を組織内でどのように活かしていくかを説明している。

感想

〇 人間の思考の全てが言葉にされるわけではない。しかし、その一部だけ   でも言葉にされることにより、それは人の思考を進化させ、さらに進化した思考はさらに新しい言葉を生みだす(55頁)
 noteをやろうと思ったきっかけの一文。読書そのものは面白いし、少しだけ博学になった気もするものの、自分の行動を変化させるためには、本を読んで感じたことを整理する必要があると感じていました。読書そのものを楽しむことを前提として、自分の考えをより洗練することで、良い意思決定ができるようになりたいと考えています。
 読書そのものを楽しむことだけを目的とすることを否定するわけではないです。今の自分の状況に照らすと読書をより能動的に行う必要があるというイメージ。

〇 マルクスとエンゲルスが話したように、重要なことは世界を解釈することではなく、変えることだ(30頁)
 自分が世界を変えることができるとは全く思っていないのですが、読書することによって何となく気持ちよくなり、インテリっぽく振舞うのは違うな、と思っています。好き勝手に解釈するだけでなく、小さくてもいいので何らかのアクションに繋げることが大切であると思っております。

〇 事業のプロセスにおける直感の役割(図、68頁)
 自分が事業を起こす(起業する)時に、どのようなフェーズに区切ることができて、各フェーズにおいて何が必要かを示した図。一般的な起業の本では、シード期、アーリー期といった時系列に沿ったフェーズ毎の整理や、資金調達、仲間集めなど主要なアクション毎の注意点が整理されているように思うが、平易な言葉で分かりやすく解説されています。即効性があるアドバイスではないですが、本質的な考え方が示されて、汎用性が高いと感じました。

〇 課題に取り組もうと思う意欲が強い人の多くは、人生においてこのギャップを何らかの形で経験していることが多い(69頁)
 自分は幸いにもあるべき世界と現実世界とのギャップを感じることが多いと考えられる、いわゆる少数派に属した経験が著者に比べると少ないように思います。ではどうすればいいのかという点について、著者は、「あるとき、あるところで、感動を受けたたった一度の経験の中に、そのときだけにとどまらない意味が存在している。それがその人の思想というものだ。(71頁)」とも述べており、自分の人生で印象的だった経験を振り返る重要性を説いています。
 少し話は逸れますが、一般的に裕福な家庭ほど多様な経験を子供に提供させることができると思うのですが、だからといって社会で活躍している人が幼少期に良い経験を得られるような家庭環境にあったとは必ずしも言えないですよね。人の個性や能力は生まれながらにして一定程度決まっており、社会での活躍はそれに左右されるとは思うのですが、なるべく愛情を注ぐことは当然として、ベストな子育てって何だろうか、ということを少し考えています。

〇 ただ漫然と本を読むだけではなく、それをもとに何らかの出来事を追体験し、沈思黙考するような読書でなくてはならない(142頁)
 これもnoteを始めようと思った理由。読書で得られたことすべてについて「追体験」をすることは難しいと思うが、心に刺さった本の内容についてはなるべく実践していきたいと考えています。

〇 一体生産者の使命は何だろう、(中略)それは簡単に言うと、この世の貧しさを克服することである(188頁、松下幸之助の著作からの引用)
 高度経済成長期は貧しさを克服するぞ!という誰もが納得する分かりやすい目標を立てることができました。ある程度なんでも手に入る現在の成熟期においては、万人が納得する分かりやすい企業理念を掲げることは難しくなっていると思います。以前から、ユーザーは自分が欲しいものが分からないということが言われますが(車が市場に出回る前に一般市民が求めていたのはより速い馬車であったとかなかったとか)、満たされている現代ではよりその程度が大きくなっているのではないでしょうか。
 そうであれば企業の様々なアクションの礎となる企業理念の重要性は以前よりも増しているように思います。そして企業は社会の要請に応える必要があるところ、社会の理解を深めるために、普遍的な価値がある哲学等を学び長期的利益を生む組織を作る必要があるように思います。
 他方で、キャッシュがないと会社が回らないのは事実で、先に書いたとおりインテリぶるだけではどうしようもないので、日々の儲けにも真摯に向き合う必要があるのでしょう。従業員を雇うようであればなおさらだと思います。

一発目の投稿、大変でしたが要領は掴めたような気がします。とりあえずは50本の書評を書くことを目標に頑張ります!

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