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ミレトスに見る日本の未来

立花隆の書いた「エーゲ 永遠回帰の夢」を読んだ。

若かりし頃の立花隆は、エーゲ海に浮かぶ島々の遺跡群を旅していたのだという。本書はその思索旅行紀だ。

古代ギリシャからローマ、キリスト教布教後の世界までが描かれていて、旅をしながら歴史を学んでいるような気持ちになれる。

特に興味深かったのは、本の後半に書かれてあった、ギリシャの港湾通商都市、ミレトスの盛衰についての話だ。

ミレトスは、古代ギリシャにあって、海軍力と経済力で栄えた国だ。

近代でいうとイギリスやアメリカに近いかもしれない。

ミレトスでは、貨幣経済が発達し、金融の仕組みがここで生まれたと言われている。

さらに、こうした経済発展にも貢献したであろうとされている人物が、哲学の祖と言われるタレスの存在だ。

この人は、哲学者でもあり、天文学者でもあり、数学者や外交官、はたまたビジネスマンでもあったという、古代ギリシャにおけるダビンチのような存在だったようだ。

彼が発見した天文や数学に関する知見は、例えば北極星を目印にした航海や、三角測量等、実生活上大きな便益をもたらしたのだという。

経済発展と知識基盤の向上、この両輪によってミレトスの社会はしばらくの間栄えた。これまでのアメリカや日本に酷似して見える。

これが、タレスの死後約半世紀余りで衰退していくことになる。

衰退の大きな要因はペルシャの存在で、当時領土を拡大しつつあったペルシャはギリシャ諸国を呑み込もうとしていた。

ミレトスは当初はペルシャ側と同盟関係を結ぶことで、侵略から逃れようとしていたが、次第にペルシャ側の圧力に押され、開戦に踏み切り、敗れてしまう。

さらに、港湾都市を支えていた湾が、長年の間に土砂で埋まってしまい、その機能を果たせなくなってしまう。

こうして軍事力、経済力ともに、その基盤を失っていってしまったわけだが、ここから日本が学べることは何だろうか。

ミレトスを支えていたのは、小国でありながらも知識基盤に力を入れていたということだと思う。

地理的に有利な位置にあったということに加え、おそらくそれを最大限に生かし得る資源の配置が行われたのではないか。

現在、大国の接近に迫られている日本も猶予している余地はないと思う。



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