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「にかほのほかに」のロゴが一つじゃない理由。

まずはこのサイトを見て欲しい。

 「にかほのほかに」とは、秋田県最南の町、にかほ市にある旧上郷小学校のあたらしい名前だ。二年前に閉校してしまったこの建物を、いまいちど未来のために活用しようと、そのプロデュースに手を上げた。

 ここで僕が何をしたいか。どんな未来を想像しているか。
 現時点での思いを書いておこうと思う。

 まずはその名前。

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 前から読んでも後ろから読んでも「にかほのほかに」。そんな回文の面白さ以上に、そこにある利他の精神をこそ僕は伝えたかった。

 右肩上がりな時代は終わり、限られた資源、人材、経済をシェアしながら豊かさを生み出すことが求められるいま、「俺が俺が」と主張しあうことには無理がある。全国の地域が人口を取り合う移住定住施策などに疑問を持っていた僕は、さまざまな地域が連携しあう具体的事例をここでつくりたい。その足がかりとして、せめて秋田県内の市町村がその枠組みを超えて互いを認め合う姿をここから発信したいと思っている。

 だからこそ「にかほのほかに」。

 にかほもいいけど、他所もいい。控えめながらも確固たるプライドを持つことを大切に、これからの日本に必要な「利他の精神」をにかほから全国へ届けるのだ、という意思を込めた。


 その根底にはもちろんダイバーシティ(Diversity=多様性)の考え方がある。様々なヘイト発言やセカンドレイプで溢れるこの世の中で、もっとも必要なことは自らの正義を疑うことだ。自分にとっての「正しい」は、全員にとっての「正しい」ではないし、その正義は多数決で決めるものではない。

 当たり前だけれど、多様性への理解は、多様な世界を知ることからしかはじまらない。同じ組織、同じ地域、同じ文化で居続けることは、とても居心地がよいかもしれないけれど、一つの地域にいてもSNSなどを通して、簡単に違う地域、違う組織、違う文化の人たちに発信ができる世の中は、そのことで簡単に他人を傷つけてしまう世の中でもある。

 だからこそ僕たちはいよいよ多様性を真に理解していかなきゃいけない。これからの地域編集において、そのことは欠かせない。地方の人たちが多様性を認める訓練をしていきたい。

 だからこそ僕は「にかほのほかに」のロゴを一つに決めたくなかった

 そもそもロゴが一つでなきゃいけない理由は、一言で表すならば「効率」だと思う。ビジュアルアイデンティティを明確にするためには、そのロゴ自体が揺らぐことにメリットなんてないのは当然だ。だけど僕は敢えて、ロゴに「揺れ」や「遊び」や「余地」を与えたいと思った。微妙な違いや差異を内包するロゴをつくってみたかったのだ。そのためには考え方や思想を共有することが大事だ。だからこそ逸脱できる。これは僕が思う成熟した社会の姿。

 人々を管理コントロールしようと思うほどに、組織の中枢はルールを定めたがる。だから大抵のルールは小さき者の声を無視している。マイナンバーのような、つまんないコントみたいな不毛ルールも、一方的な視点で効率を求めた結果でしかない。請求書のハンコのように、いろんなものがテクノロジーの進化や、時代の流れに乗れずに、本末転倒したままでいる。

 そんな効率重視を終えて、これからは面倒で手のかかる仕組みを愛していく方がいい。それこそが多様性を理解するスタートだ。「ここまではよいかな?」「いや、やっぱりだめか?」ひとりひとりがそうやって悩む余地を残すことが、これからのクリエイティブには必須。そうしていかなければ、間違い探しや、粗探しに生きがいをみつける人が減ることはない。

 冒頭で見てもらったホームページはリロードするたびに、メインロゴが変わる仕様になっている。

https://nikahonohokani.com/

 その理由はつらつらと書いてきたとおりだ。

 ここであらためて、ロゴのコンセプトを明記すると、

 にかほが誇る「北限のいちじく」と

 元滝伏流水や奈曽の白滝など、鳥海山が蓄えた「豊かな湧水」を

 一つに融合させることで、鳥海山と日本海が近い、にかほの美しい情景を表現した。

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 このロゴのベースをデザイナーの財部裕貴くんと、木版イラストレーターの尾崎カズミさんに作成してもらった。しかしそれが正式なロゴというわけではない。その考え方のもと、町の人たちや、関わってくれる人たちが同じ木版摺りの手法でつくるロゴ全部が、オフィシャルなロゴという考え方だ。

 そのはじまりとして、先日、にかほのほかにのロゴ木版摺りワークショップを開いた。

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 一つの考え方をシェアしたうえで、それぞれがそれぞれに違う、実に個性的なロゴがたくさんできた。

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 これらすべてがオフィシャルなロゴだ。今後もこの木版ロゴ摺りワークショップを何度も開いていきたい。

 あ、なぜ木版画なのか? については、以下の記事を読んでみてほしい。


 「にかほのほかに」で僕がやりたいこと。町のみなさんとともにつくりたい未来は、既存の何かではないから、とてもわかりにくくて、なかなか理解してもらいにくいと思う。しかしそれも覚悟の上だ。池田修三さんの時も、「いちじくいち」だって、最初は理解してもらえなかった。だからまずはこのロゴを理解し、楽しんでもらうことから、チャレンジしようと思う。


 ここからは定期購読いただいているみなさんへ。さらに僕の妄想をお届け。

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「にかほのほかに」のロゴが一つじゃない理由。

藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』『ほんとうのニッポンに出会う旅』共にリトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』など手掛けた書籍多数。
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