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「買物は投票」を感じて心震えた夜。

 買い物は社会に対する投票だ。Z世代の消費の特徴として言われることが多いこの言葉を体感した。昨夜。

 昨年からプロデュースのお手伝いをさせていただいている『秋田巡吟醸』というお酒がある。

 秋田県内28蔵が参加してくださり、各蔵の蔵人たちがまさに丹精込めて醸してくれた合計14,784本のお酒が、購入予約締切日、数日前だというのに、まだ3,342本も残っていた。ここ12年ほどの間で、秋田県内各所の酒蔵をまわり、秋田の蔵人たちの矜持を感じてきた僕は、みなさんが心血注いで醸してくれたお酒を、無駄なくすべて届けたかった。けれど、たった4日で3,342本はどう考えても難しい。けれど諦めたくなかった。

 特に今年秋田は夏の豪雨災害で、幾つかの蔵が甚大な被害を受けた。なかでも、ゆきの美人は、本企画の参加も危ぶまれるほどの被害だったけれど、多くの人たちの支援もあり、なんとか酒造りを再開された。だから、この企画に参加できそうだと返事をもらったときは、飛び上がるほど嬉しかった。ゆきの美人も、僕は大好きなお酒のひとつ。

 コロナ禍がようやく開けたと思った矢先の豪雨災害。当然、酒米にも影響が出ており、大変な試練が続いている秋田の酒蔵。秋田巡吟醸は、そんな蔵のみなさんを支えるべく、全量買取して進めているので、このお酒がきちんと完売して企画が続いていくことは、酒蔵の応援に真っ直ぐつながる。だからどうしても、多くのかたに応援してほしい。そんな気持ちで、以下をXでポストした。

 いつになく長文のポストで、暑苦しく感じられるかもしれないと思ったけれど、それでも、とにかく現状を伝えて、助けてもらうしかないと思った。そんな僕のポストを、秋田の友人や先輩たちが見てくれていた。

 秋田で活躍するフリーアナウンサーの相場詩織ちゃん。

 ご当地ヒーローの先駆けで、10万人以上のフォロワーを誇るSNSのプロ、超神ネイガーさん。

 大切な友人であり、心から尊敬するミュージシャンの高橋優くん。

 そんな友人たちのおかげもあって、秋田に愛をもった人たちが、次々にリポストしてくださり、インプレッションがどんどん上がっていく。まるで映画サマーウォーズのクライマックスを観るような気持ちだった。

 そして、たった数時間で84setも購入していただけた。

 一番買いやすい2本setを購入してくださった方が多く、本数にすると決して多くはないのかもしれないけれど、それでも僕は、みなさんの消費が、あきらかに僕たちの行動に対する応援であり、社会に対する大切な1票だと思って泣いた。

 ちなみに昨年は、コロナ禍の補助金を活用させていただいたので、送料込みに出来ていた。けれど、今年はそのような支援もなく、送料込にすることができなかった。そもそも、できるだけ買いやすい値段にしたいという思いから利益率の低い設計にしているので、送料込みにしてしまったらそのまま赤字になってしまうのだ。

 正直、送料込みなら買うんだけどなあ。というようなポストも拝見したし、その気持ちもとてもよくわかる。だけど送料を込みにするということは、それを運んでいる人たちへのリスペクトをも込みにしてしまうことではないだろうかというのが、僕の思いだった。送料を払うことが再び当たり前になってほしい。それは物流の現場の人たちへの敬意の表明でもある。つまりは、それも社会に対する1票だ。

 僕たちの消費は、あきらかにステイタスではなく、ステイトメントへと変化しつつある。たとえばクラウドファンディングのように、わかりやすく、買い物=応援という構造になっていなくとも、限りなく消費の選択肢のある現代で、何を消費するか、何を買うかということが、ある種の意思表明になるのは当然のことだ。そしてそのことは、買い物から純粋な喜びを奪ったのではなく、あらたな喜びを僕たちに与えてくれている。

 だからこそ、一晩のうちに購入を決めてくれた84人の方に、僕は社会を変化させるようなチカラをも感じて、嬉しかったのだ。そしてまだまだ僕は諦めたくないと思った。秋田巡吟醸も。社会のことも。

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