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大動脈解離のリハビリテーション 病態

寒い季節になると、大動脈解離の患者さん増えると思いませんか?
「そういえば最近多いな」と思う方も多いのではないでしょうか。
今回は大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2020
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/07/JCS2020_Ogino.pdf
を中心にリハビリをする際に必要な知識のおさらいをしていきましょう。

こんにちは
心不全の患者さんが幸せになれるよう
日々勉強中の飯沼です。
今日は心不全ではなく、大動脈解離についてです。

疫学ではやはり、冬場の発生率が多く、
また,時間的には日中,特に6~12時に多いと報告されているようです。


病態生理

やはり、リハビリをする上では、病態生理を把握したうえでのリスク管理が重要かと思いますので、今回は大動脈解離の病態生理を見ていきましょう。

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そもそも大動脈は構造上内膜、中膜、外膜の3層になっています。
大動脈解離は大動脈の中膜の脆弱性を基盤として血行力学的な負荷が加わり、「大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し,大動脈の走行に沿ってある長さをもち2腔になった状態」です。

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大動脈解離となった大動脈の構造は、本来の大動脈の内腔(真腔)と中膜が避けて新しくできてしまった内腔(偽腔)に分かれます。
真空と偽腔を隔てる内膜をフラップ(flap)といい、内膜が避けた部分は、内膜裂孔(tear)とよばれます。真腔から偽腔へ血液が流入するtearをエントリーと言い,偽腔から真腔へ流入するtearをリエントリーと呼びます.


大動脈解離の病態

大動脈解離は動脈が裂ける場所によって様々な病態を呈します。
大きく3つに分類されますが、

①破裂
➁分枝灌流障害(malperfusion)
③その他(大動脈弁閉鎖不全やDICなど)

です。

病態 ①破裂

大動脈解離の中でも恐ろしい病態の一つが大動脈などの破裂です。
破裂は、

胸腔・腹腔内への大動脈破裂
心タンポナーデ

に大別されます。
なんと大動脈解離の直接死因の98.5%が大動脈破裂といわれています。


胸腔・腹腔内への大動脈破裂

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そのうちの胸部・腹部大動脈解離から破裂がおきると,胸
腔や腹腔内に出血が及びます.
死因となる大量出血が認められることが最も多い部位は左胸腔で,次に縦隔,後腹膜腔とされているようです。


心タンポナーデ


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➁分枝灌流障害(malperfusion)

分岐還流障害には真腔の狭小化によって引き起こされる
①dynamic obstructionと
解離が分岐部に及んでしまう
②static obstructionと
①+➁併存型の3つに分類されます。

①dynamic obstruction
下の図のように裂けた部位のエントリーから偽腔内に入った血液が偽腔内に血液が溜まって真腔を圧迫し,分枝灌流を阻害してしまいます。

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②static obstruction
また、下の図のように解離自体が血管分岐部まで及んでしまうことでも血流障害が引き起こされます。

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血流が障害される部位によって症状は様々で、脳梗塞、心筋梗塞、腎虚血、腸管虚血、脊髄虚血、四肢虚血が引き起こされます。


注意すべき病態

また、本来であれば大動脈解離の分類について見ていくところですが、リハビリを行っていく中で特に重要な病態にしぼって見ていきましょう。


偽腔は開存しているのか?いないのか?

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偽腔が開存しているかしていないかはリハビリを行う上でとても重要です。
図にも示しましたが、偽腔開存における死亡率は偽腔閉塞型が2%であるのに対し偽腔開存型では10%、合併症の発症率は38%と高率となります。
このため、偽腔開存型ではリハビリをの際、血圧管理を厳重に行う必要があります。


ULPの有無
ULP(Ulser-like projection)偽腔内小突出は,造影CT検査で偽腔内への潰瘍性病変として観察されます。

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なぜULPの有無が重要かといえば、「リスクが高くなるから」です。
ULPがあると大動脈解離が徐々に拡大して偽腔開存型に変化したり,
破裂の原因になったりするものがあるそうです.特に,上行大動脈,
左鎖骨下動脈分岐直後,横隔膜近傍の下行大動脈に存在するる場合は,さらにリスクが高く、注意が必要です。
これらの点については次回の大動脈解離のリハビリテーションの回で詳しくみていきます。


いかがだったでしょうか?

大動脈解離の病態の一部を紹介させていただきました。
大動脈解離のリハビリテーションを進めていくうえで必要な知識をコンパクトに、イラストを交えてわかりやすくまとめました。次回はリスク管理も含めた大動脈のリハビリテーションについてまとめていきたいと思っています。

ではまたお会いしましょう!

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