見出し画像

伊勢武史×兼松佳宏 リコネクトークvol.3 -RE:CONNECTでつながって、ワクワクとほわほわを-

森・里・海のつながりを総合的に研究する「RE:CONNECT(リコネクト)」。RE:CONNECTは、日本財団と京都大学が共同で行っているプロジェクトです。本プロジェクトのリーダー・伊勢武史と、本プロジェクトでの取り組みを社会や市民へとつなげていく役割を担う兼松佳宏が語り合う「リコネクトーク」。
vol.3は、そもそも自然とは何か、そして改めてRE:CONNECTについて振り返り、新たな考えに行き着いたというお話を。

「vol.1-プロジェクトリーダーが語る、リコネクトについて-」はこちら
「vol.2-面白い人とテクノロジーがつなぐもの-」はこちら

そもそも自然とつながるって何?

自然とのつながり、取り戻す自然など、自然という言葉は理解できるのですが、そもそも何を指しているのでしょうか。

2人に、自然とは何?自然とつながるって何?についてお話ししていただきました。

伊勢「僕は進化生物学を学んでいました。なぜ、そもそも人類が自然に対する興味を持っているかというと、基本的には自然淘汰の結果なんですね。特に原始時代、自然で起こることや自然で生きるもののことを知らないと生きていけませんでした。

獲物となる動物のことを観察しないと捕まえることができない、そのことを他の人たちにも伝えなければ集団で狩りができない。ラスコー洞窟の壁画がすごく丁寧に描かれているのもうなずけます。だから元来、人間は自然に興味を持っている生き物なんです。その遺伝子が受け継がれているから、今、自然を忘れるような生活の中でも、ふと自然とつながった時に心地良さを感じることができるのだと思います。

コロナ禍で外出できなくなって自然を求めたり、身近に植物があることで救われたり。自然とつながることは、実は人間にとって必要不可欠ですね。」

兼松「そもそも私たちって関係性の中で生かされていますよね。それは人間に限らずですが、植物が酸素を出してとか、太陽の恩恵を受けているとか。生かされているという謙虚な気持ちを思い出すことが、自然とつながる瞬間だし、豊かに生きるための秘密だと思うんです。

ちょっと話が飛ぶんですが、昔、屋久島の花乃江河(はなのえご)という日本庭園の原型みたいな湿地帯があるんですが、そこに行きました。しかも、若気の至りですが、台風が近づいている日に。そこで1人で1時間くらい瞑想していたんですが、何だかね、もう自分ってちっぽけだな、このまま包まれて死んでもとても幸せなのかもなって、不思議な気持ちになって。いや、死にたいとかではないですよ。笑。

ただ、こういう風に思える瞬間があったことが、人生観を変えたんです。

こういう分断を超えたつながりの世界に浸る、というか、ゼロに戻るような感覚を取り戻すことが、僕にとって自然とつながるということですね。

例えば、これからRE:CONNECTで絵本を作ったり、スマホのアプリを作って、自然に触れるきっかけを作りたいのですが、そこで実際に自然と触れた時に『朝日、きれいだな』という感覚になって欲しい。その感覚がもっともっと深まっていくと、本質的なエコロジーに近づくんじゃないかなと。

ソーシャルイノベーションという領域について、さまざまな取り組みをしているのですが、その際に大事なことはどんどん広げて大きくしていこうという”スケールアップ”だけではなく、より本質的なものを立ち上がらせようとする”スケールディープ”が重視されているんですね。

で、RE:CONNECTでディープラーニングをやって。(ディープでつながって)ディープ・・・ほう!ってなりました。笑」

「ディープ」でつながった兼松さんですが、実はもう1つつながった言葉があります。それが、「リコネクト」でした。

Works That RecconectsからRE:CONNECTへ

兼松「僕が大好きなワークショップに『つながりを取り戻すワーク』というものがありまして。それを体系化したのが、ジョアンナ・メイシーさんという、もう90歳になる仏教活動家の方なんです。

実は、そのワークの英語名が『Works That Reconnects』なんですよね。だから、RE:CONNECTというプロジェクトに誘われた時にビビビッてきました。うわ、リコネクトでつながった!って。

『つながりを取り戻すワーク』では、私たちが世界に対して感じている痛みに蓋をすることなく、じっくりみんなで向き合うことを大切にしています。とはいってもいきなりそこに踏み込むとキツいので、まずは感謝からはじめるんです。それは、関係性のなかで生かされているという確かな奇跡を思い出す、ということ。

僕はRE:CONNECTによって生まれたシチズンサイエンスのためのツールが、痛みをしっかりと感じることはもちろん、世界に感謝できるようなものになるといいなと思っています。

社会の分断って言葉をよく聞くのですが、その解決にサイエンスやテクノロジーからアプローチするというのはまだまだ始まったばかりですよね。見えないつながりや関係性を解いたら、こんなにも面白いことがあって、全然違うあれとこれがつながっていて、親戚くらいの近さにいたよってのが分かると、なんだかワクワクしますね。」

伊勢「まさに、そういうことを知りたいです!研究者はワクワクするし、そのワクワクを市民の方々にも感じてもらいたいです。今までは研究者がイメージできるものしか解明できませんでした。

テクノロジーを使うことで、研究者が思いつかなかった、あれとこれがつながっているということが解明できると、本当にワクワクできます。

また、環境を守るためには意外な所に着る口がありましたと、なので市民の方々も一緒にやりましょうって伝えることもできるはずですね。領域が違う研究者同士も祖先レベルではいとこぐらいの近さで、実は全部つながっているかもしれないということを解明したいですね。」

ディープとリコネクト。また言葉だけではなく、さまざまなものがつながっているということ。そして、そのつながりの可能性を解明してくということ。その果てにワクワクと出会うことがこれからの楽しみになりそうです。さいごに、2人に今までの話を踏まえて、改めてRE:CONNECTって何?という話をしてもらいました。

画像1

みんなの広場や交差点としてのRE:CONNECT

伊勢「今いろいろ話をしていて、人と人がつながることもRE:CONNECTの取り組みだなと思いました。

原始始代の頃の農村ってコミュニティが狭いんですね。なので人間関係も濃厚で。狩猟だとか、農耕・牧畜だとか、1つのことしか私はやりませんではなく、いろいろなことを助け合いながらマルチタスクでやっていたと言われています。そう考えると、今の時代、分業化が進み、別の領域やジャンルの人との接点が作れない現代ですが、RE:CONNECTをきっかけに異分野の人たちとつながることも重要なのではと思いました。

それはRE:CONNECTの源流を遡るというか、つながりを手繰り寄せるというか。今、改めてそのようなことに気づきましたね。」

兼松「伊勢さんの話を聞いて、みんなが通れる場所、交差点や広場みたいな場所になりたいなと思いました。

いまは誰でも研究者になれる「サイエンスリーグ」というアイデアを構想していますが、つながり直すことについて真剣な仲間たちが集うことで、さらにつながりを感じる機会が増えていくといいですね。

つながるという感覚って難しいですが、なんか、ほわほわする感じだと思うんです。あれです、『鬼滅の刃(吾峠呼世晴 著)』でイノシシの人(嘴平伊之助)が、おばあちゃんや仲間たちからやさしくしてもらったり、炭治郎にありがとうって言われたりしてほわほわしているじゃないですか。」

伊勢「そうか。ほわほわしたことで、つながりを感じる。ほわほわして心が温かくなったから、その後、痛みを共感できる、だから新しい目で見れるし、前に進めるということですね。それは、とてもRE:CONNECTっぽいです。笑」

画像2

自然と人、人と人とのつながりを感じるという感覚を持ち、自然と再接続できるように。RE:CONNECTはプロジェクトを通して、多くの方々にとって広場や交差点のような存在として、さまざまなデータやファクト、取り組みを発信していきます。
ぜひ、ご興味ある方はご参加ください。


画像3

伊勢武史
森里海連環学教育研究ユニット 研究プログラム長
京都大学 フィールド科学教育研究センター 准教授


これまで、地球温暖化と植物の関係をシミュレーションするなど、環境問題を広い視点で考えてきました。近年はドローンやディープラーニングなどの新しい技術の活用を進めています。
このプロジェクトでは、水や養分、土砂などの物質が流れることで、森や里が海とどのようにつながっているかを解明します。



画像4

兼松佳宏
「グリーンズの学校」学長/「さとのば大学」副学長(仮)


1979年生まれ。
秋田県出身、長野県在住。一児の父。
ウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。その後、ソーシャルデザインのためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、10年から15年まで編集長。16年より21年まで京都精華大学人文学部特任教員として、ソーシャルデザイン教育のためのプログラム開発を手がける。現在はNPO法人グリーンズに復帰し、「グリーンズの学校」の学長を務める。
著書に『beの肩書き』『ソーシャルデザイン』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?