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伊勢武史×兼松佳宏 リコネクトークvol.2 -面白い人とテクノロジーがつなぐもの-

森・里・海のつながりを総合的に研究する「RE:CONNECT(リコネクト)」。RE:CONNECTは、日本財団と京都大学が共同で行っているプロジェクトです。本プロジェクトのリーダー・伊勢武史と、本プロジェクトでの取り組みを社会や市民へとつなげていく役割を担う兼松佳宏が語り合う「リコネクトーク」。
vol.2は、伊勢さんと兼松さんの掛け合いスタイルで、リコネクトについて深掘りしていきます。

「vol.1-プロジェクトリーダーが語る、リコネクトについて-」はこちら


コミュ力高いギークたちの集まりが、RE:CONNECTらしさ?

ユニークなメンバーが集まるRE:CONNET。このメンバーを選ぶ基準はあったのでしょうか。

伊勢「(RE:CONNECTの選考基準は)基本姿勢として、自分の専門領域や研究に誇りを持っていることです。また、他の人と話したり、意見交換できるオープンマインドネス、そして、最終的に市民に届ける意識を重要視しました。」

兼松「コミュニケーション力を含めたソフトスキルの高さはかなり肝にしています。あと、今いるメンバーは全員ギーク!(※ここではテクノロジー好きやテクノロジーオタクを指します)。これがRメンバーたちの共通点であり、RE:CONNECTらしさかなと思います。

今までの研究手法では人手や時間がかかりすぎて解明されなかったことが、AIやビッグデータ、ディープラーニングやテキストマイニングといった最先端の技術によってその糸口を見つけようというのは、本当に画期的なことだし、ワクワクするなあと。」

伊勢「コミュ力が高いんだけど、ギーク性も持っているところが、本当にうちらしさですね。実はテクノロジーを使って、初めて分かることがたくさんあります。今まで環境問題は少し泥臭かったのかもしれませんね。われわれはテクノロジーを活かして、新たな真理を解き明かそうというのがモチベーションとしてあります。」

兼松「例えば、目に見える海ゴミは、そこに何があるか分かるのですが、四国の佐多岬のように人がアクセスできない場所にどんなゴミがあるかは人の目では分かりません。そんなときはドローンを飛ばせば、調査できるようになるかもしれない。そうした思いつきを交換しながら、じゃあやってみよう!みたいな空気はありますね。」

伊勢「そこを面白がれる人たちが集まっていますね。」

兼松「(そういった意味で)めちゃくちゃ将来有望な人たちだらけです。」

伊勢「正直、RE:CONNECTのプロジェクトは2年で一区切りなのでけっこう短いんですね。それでも成果を出してやろうと、個性的な人たちが集まってくれて非常にありがたいです。」

兼松「みんなお互いの技術や使えるテクノロジーの受け渡し合いに興味・関心がありますね。勉強意欲があるというか、向上心があるというか。」

伊勢「プロジェクトが始まってから、人工知能などのテクノロジーをバリバリ使いこなして研究できるようになって欲しいなって思っていたら、みんなすぐに自分のものにしてがんばってくれています。」

兼松「その空気感は伊勢さんが生み出していますよね。そもそも伊勢さんがテクノロジー大好き。」

伊勢「特に、ディープラーニングが好きですね。4年くらい前のゴールデンウィーク、1日だけひまだったので触ったら、割とできました。笑。たぶん好きだからですね。その時、ディープラーニングで識別したのが苔でして。苔も好きなので、好きだったら何でもできますね。」

兼松「苔とテクノロジーが掛け合わさるだけで、こんな面白いことができてしまう。そういう視点で世の中を眺めてみると、まだまだやれることだらけですよね。そこに面白さを感じています。」

元高校教師や予備校講師をやっていたメンバーも集まるRE:CONNECT。自分が取り組んでいる研究を、世間や市民に面白いことであると熱意を持って伝える人たちは、同時にテクノロジーに情熱を注ぐギークでもありました。

次は、そんなRE:CONNECTを支える伊勢さんと兼松さんの出会いから、RE:CONNECTの醍醐味について。

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市民とテクノロジーをつなぎ、自然とファクトをつなぐ

2人が出会ったのは2014年に開催された、研究者を表彰するシンポジウムでした。伊勢さんは表彰される側として、兼松さんは基調講演をする側として。公演後、研究者たちとのトークイベントのファシリテーターを兼松さんが担当し、伊勢さんと初めてお話をしたそうです。

兼松「(当時、伊勢さんの話を聞いて)もうね、目からうろこ。僕は理系の世界は詳しくないのですが、すごく話が分かりやすいし、面白いし、新しい世代の代表だなと思って。絶対、この人と何かしたい!と思いました。

その後、京都市とスターバックスコーヒージャパンによる「YES,WE DO KYOTO!」という市民を巻き込んでアクションする企画に参加した時、伊勢さんをゲストとしてお呼びしました。というのは、環境に関するアクションを行うのに、なぜ現場に科学者がいないのかと思っていたというのもあって。」

伊勢「そこでやった外来種いけばなは本当に面白かったです。外来種は悪だと世間では語られているのに、いけばなにしたらキレイ。何気ない雑草のうつくしさとともに、自然に人間が介入することで生じるいろいろな影響について、参加者に考えてほしいと思ったんです。」

兼松「で、伊勢さんがプロジェクトリーダーを務める2020年のタイミングでRE:CONNECTに加わりました。もともと『greenz.jp』の編集長をやっていたのですが、キャッチコピーが『いかしあうつながり』で、まさにRE:CONNECTの理念そのものなんですよね。テクノロジーが発展すればするほどツールも民主化できると思います。
そのような方法で市民を巻き込んでデータやファクトを集めていくことで、ちょっと遠いように感じてしまう”社会”との距離を近づけることができますし、社会的な活動を始めるときの解像度も高まっていくと思うんです。」

伊勢「兼松さんに加わってもらって、テクノロジーを使えば人々が無理をせず、苦痛を感じず、楽しみながら参加できるのではと思いました。環境問題は割と苦行というか、がんばってゴミ拾いをするとか、辛いけど環境のために取り組むみたいなイメージがあるかもしれなくて。テクノロジーを活かせば、ラクだし、楽しいって思って欲しいですね。」

兼松「あとは、サイエンスにおけるテクノロジーをいろいろな要素と掛け合わせたいです。だからこそ、研究者だけではなく、RE:CONNECTの理念に共感する絵本作家や映像ディレクターなどのクリエイターたちを巻き込んで、意見交換やアイデアを考える場を作ること。それが、僕の役割ですね。」

伊勢「あと研究者側としては、単なる思い込みじゃなく、環境問題についてのファクトの解明をしっかりとやっていきます。なんとなくや思いつきでやる自然保護ではなく、科学的に意味があることを実践したいですね。そうすることで環境問題に向き合うには、自然とのつながりを理解する必要があるんだと。そう思ってもらえるように取り組んでいきます。」

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環境保全のために、何が必要なのか。まずは多くの方々に、自然とのつながりを理解してもらうこと。そのことをみんなで楽しく行っていくということ。RE:CONNECTは、サイエンスと自然のつながりだけではなく、人と人とのつながりも生み出せるプロジェクトかもしれません。

リコネクトークvol.3 -RE:CONNECTでつながって、ワクワクとほわほわを- へつづく

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