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リザエレ! エレミネイション+ウィンクルム EPISODE 02 『いきなりトレーニング? まだ素人なんですけど…』 Vol.1
はじめに
この度は数ある記事、作品の中から本作品(「リザエレ! エレミネイション+ウィンクルム」)をお手に取っていただき、心より感謝を申し上げます。
度々のお願いで恐縮ですが、お読みいただく際の注意事項を以下に添えさせていただきます。
本作品は現在『note』のみで連載しております。その他のブログサイト、小説投稿サイト、イラスト投稿サイトでは連載しておりません。この作品は一部無料にて公開しているものですが、掲載されている画像、文章などは著作権フリーではありません。無断転載、コピー、加工、スクリーンショット、画面収録、AI学習はお控え頂くよう、ご理解の程よろしくお願い致します。
この作品の物語はフィクションであり、登場する人物、場所、団体は実在のものとは一切関係ありません。また、特定の思想、信条、法律・法令に反する行為を容認・推奨・肯定するものではありません。本作には、演出上一部過激な表現が含まれております。お読みの際は、十分ご注意ください。
闇の願い 1.0
私には才能がない。
何をするにも中途半端で、すぐに情熱が冷めてしまう。
恋愛だってそう。嫌なところが見つかると一瞬で興味がなくなる。
気がつけばこの二十年間、何一つ達成できていない自分がいる。
みんな私のことをいいモノを見るように語るけど、全然そんなのじゃない。むしろその逆。見た目が良いだけのロースペックな人間だ。
自分よりできてる人には嫉妬するし、実績解除目的のサブカルオタクとマイルドヤンキーは嫌いだし、人の弱みにつけ込んで見下すインテリ系も嫌い。
こんな性格をしているから、攻撃されたり、ネットに作品を投稿しても再生回数や閲覧回数が増えないのかも。
みんな何が欲しいの? 何を求めてるの?
お金? 名声? それとも…………愛?
私だって欲しいよ。
でも、欲しがり過ぎるのは愚かだよ。
聞くほう、見るほう、描くほう、作るほう、みんな羊の群れのように同じ方向へしか進まない。
どこが選択の自由なの? 全然自由がないよね。
自分自身の未来は諦めてないけど、みんなが支えている社会には絶望しかけている。
今の私たちは、質の良いものや自分が望んでいるもの、完全親切で丁寧なサービスが当たり前のように手に入ると勘違いしている。
第一声から笑える落語や漫才、一小節目、書き出しから人を感動させる音楽や小説なんて存在しない。
物語が進むにつれて、パズルのピースがはまっていくから面白くなるんだ。
あの有名宇宙海賊漫画だって、最初は物語の面白さよりも設定でわくわくしていた。
次はどこの惑星を冒険して、どんな宇宙海賊と戦うのか、仲間はどれくらい増えるのか、このキャラのもしもの力の実は何なのだろうとか――。
Chapter 11 「EとEの話」
私立マリトワ女子高等学校。
先日約束した通り、愛叶は希海たちと一緒に学校へと登校した。 個性的な身なりで――リボン、シュシュ、カラーエクステ、ジャギー、パーマヘアー、缶バッジを付けた鞄、リュック、短めのフリルソックス、踝下まであるスカート、GANSのスニーカー――校内を歩く生徒たちの姿を見て、また新たに学校生活が始まるんだと思うと急に不安が襲ってきた。しかし二人が同じクラスの一年C組であることを知ると、その不安はすぐに解消された。だが、この後の自己紹介は無茶苦茶緊張してしまった――。
出席確認、ホームルームが終わると、早速クラスメイトから質問責めに遭った。
好きな食べ物、好きな歌、推しの配信者、何のアニメが好きなのか、彼氏はいるのか、どこの部活に入る予定なのかなど――愛叶は答えられるものはすべて答えた。
*
午前の部が終わり、昼休みの時間となった。
朝質問責めをしたクラスメイトたちがまた愛叶に群がりはじめた。
「ねえ、勇木さん。一緒にお昼食べない?」
「今日晴れて暖かいし、屋上開放日だから外の眺め良いよ」
「え、屋上でお昼? 楽しそう! あっ、今日お弁当持ってきてないんだ。売店いかないと」
「案内してあげようか?」
「みんな、ちょっと悪い。あたし、こいつと話があるんだ。遠慮してくれないか」
愛叶を囲むクラスメイトたちに割って入ってきた希海は彼女たちにそう言った。クラスメイトの何人かは表情を曇らせた。
「高乃さんが言うなら……しょうがないね。華山さんもいるし……」
クラスメイトの一人がそう言うと、愛叶を取り囲んでいた生徒たちはその場からはけていった。
「え、え~……リザエレの影響力すごくない?」
購買部にて、愛叶はいちごブレッドといちごミルクティー、芽瑠はメロンドーナツとヨーグルト牛乳、希海は鮭おにぎりと緑茶を購入後、三人は校内で海が一望できる中庭へと移動した。
ベンチに座る三人。一昨日の寒さとは打って変わって変わって、今日は嘘みたいに暖かい。吹いてくる風は春の心地よさだ。
愛叶はしぼみかけの風船のように体の力を抜く。
「ふぅい~、やっと落ち着ける……」
「午前中はずっと質問責めされてたね」
「うん。あんなに取り囲まれたのはじめてだよ~。フェイスラインのフレンド登録もしたし、ちょっと疲れた……くぅう~」芽瑠に返事をしながら、愛叶は両腕を前に出し、背伸びをした。
「これからはもっと疲れるからな。今のうちに疲れておけ。今日はあそこでトレーニングするからな」
「えっ、いきなりトレーニング? まだ素人なんですけど……。それってどこでするの? スポーツジム?」
「ルート東浜辺支部の中にある訓練施設でする。訓練って言っても、警察や軍隊のようにやるわけじゃない。普通に基礎体力を鍛えるトレーニングだな」
「ふーん……あっ、でもわたし、まだリザエレの正式なメンバーじゃないよ? 一緒にトレーニングしちゃってもいいの?」
「正式じゃない方法で変着しちゃったんだからさ、やっちゃっておいても損はないだろ」
「……そうだよね。しないと怪我したりいろいろ危ないもんね。それで、トレーニングってどのぐらいキツイの? あんな怪物と戦えるぐらいだから相当なものでしょ?」
「内容による。今日予定してあるものは、そうだな……バスケ部並みにキツイかもしれない」
「バスケ部並み? う~きびしそうかも。でも、中学のとき陸上部に入ってたからいけるかな」
ストローを咥え、愛叶はいちごミルクティーを飲む。
「あ、そうだ」
慌ててストローから口を離し、愛叶はまた希海に訊ねる。
「ねえ、この間の話の続き、聞きたいんだけど……」
「この間の話? ああ、システムとイヴィディクトの話か」
そう答える希海は何故か鼻でため息を吐き、言いたくなさそうな表情をする。
「ややこしいんだよ。説明するのがさ……」
「それでも聞きたい! なんで変身できるのか、なんで服を収納できるのか、怪物はなんで現れるのかとか色々!」
「全部のこと言うと昼休み終わるから、今言った三つな。じゃあまずはなんで変着できるかだな」
希海はエレメティアをタッチし、目の前の空間上に現れた九つのアイコンから歯車マークの設定を選択。『ガイドブック』と記載された項目をタッチして、ページ6を展開させる。
映し出されている青白い半透明のディスプレイには変着に関する説明が図を用いて表示されている。
「あれは今いる空間と別空間とのアクセスを可能にした技術で変着している」
「別空間とのアクセス?……」
「別空間は常にあたしたちの身の回りにあるもので、エレメティアを使うことによって物を呼び出したり取り出したりすることができる。変着は今着ている衣服を書き換えて変身している。だから登録してない服は消滅したんだよ」
「書き換えてるんだ……。やっていることは単純に見えるけど、あれってすごい技術だよ」
「この技術は今は限られた機関にしか提供されていなくて秘密裏にされているけど、あたしたちはルートから提供されているから普通に使用しても問題ない。近い将来、スマホが無くなってエレメティアみたいな時計型ケータイが一般化するかもな。とにかく、技術的な細かいところは置いといて、肉眼では見えない別空間と繋がっているから変着と収納ができるってわけ。で、これを可能にしているエネルギー源についてはガイドにも名前だけ載っている――これ」
希海が指さす箇所には、『イフタナル』という文字が。
「イフタナル?」
「イフタナルは別の次元から来た万能物質っていわれている。今はそれしかわからない。詳しい話は開発者たちから直接訊いてみないとな」
「スケールすご……。別の次元って本当に存在したんだね」愛叶はいちごブレッドを口にする。
「ふぅう……次はイヴィディクトだな。これも説明するのが難しい」
緑茶を一口飲み、希海はページを『イヴィディクト』に切り替えて説明を続ける。
「イヴィディクトは、EDCカードを使用して体に鎧機を纏い、常人とはかけ離れた力を発揮できる状態のことをいう。これはこの間説明した。イヴィディクト状態には制限時間があって、約六十分間、その姿を維持できる」
「えっ、結構長いね……」
「これがそのEDCカードだ」
希海が表示させた画像には、動物や昆虫などの生き物のデザインが施されたカード型の小さな記録媒体が映し出されている。色鮮やかで玩具のような見た目は一見、危険なものには見えないが、何者かの強い意志、情熱とは反対の怨念が込められているようなそんな負のパワーを感じる。
「なんか怖い……これを使っただけであんな姿に変身しちゃうのか……。こっちもすごい技術力だよね」
「体のどこかに挿して変身しているらしいけど、装置的なものは今まで見たことがないんだよな。体を鎧に変えられるはずなのに、身体への副作用がほとんど無いらしい」
「あれでリスクが低いの? 逮捕されるリスクのほうが高いよね」
「あん。こんなものが東浜辺市内にある、あの地区というところで売買されているらしい」
「ん? 何か聞き覚えが……」目を上に上げる愛叶の隣で芽瑠はメロンドーナツをほおばる。
「あの地区は市内で一番治安の悪い地域って言われてる。あたしは行ったことないけど、小さいときからあそこには近づくなって、よくじいちゃんに言われてたからな。実際、あの地区で大ごとになることが起きて、そのとき見つかったEDCカードは一度取り締まりを行って根絶までしたらしいんだけど、何故かまた最近出回ってる」
「へっ、なんで?」
「それはわからない。誰かが何か企んでいるんじゃね? でなきゃ説明がつかない」緑茶のペットボトルのフタを閉める。
「企んでるのかな……そうかもね。希海たちでも分からないことが多いんだ」愛叶はいちごミルクティーを飲む。
メロンドーナツを食べ終わった芽瑠は包装紙を綺麗に折り畳み、ごちそうさまでしたと手を合わせた。
「でも、最近イヴィディクトの出現数は少なくなってきているし、売買されているとしても使わないで持っているだけかもしれないよ。使ってくれないほうがウチらにとってはいいことだよね」
「だな。これで一応説明は終わりだ。ほぁあぁ~……」希海は大きなあくびをしながら背筋を伸ばした。
午後のチャイムが鳴る。昼休み明けの授業は担任の阿賀先生による国語Aだ。
Chapter 12 「ルート東浜辺支部」
――放課後。今日一日学校生活が終わり、気疲れをしているが、このあとには基礎体力訓練が待っている。
専属トレーナーによる厳しい指導が……。そのようなことを頭の中で思い浮かべながら、愛叶は自己紹介の時と同様、嫌な汗をかいていた。
◇
学校から北東へ徒歩で約二十分ほどのところにある最寄り駅、琴球駅に着いた。
琴球駅はこれから向かうルート東浜辺支部に最も近い駅で、駅から直接支部へとつながる遊歩道がある。街路樹に囲まれた道の先に、海、太陽、月を模した三つの建築物が見える。コンベンションセンターとよく似た造りの建物――ここがルート東浜辺支部である。
ルートとは、世界平和を目的とし活動する超常情報調査機関。
主に怪物・超人事件や超常現象の調査及び対処、各国の対外情報局と連携して行う特殊作戦活動の他に、学術や文化等の交流、地域問題の解決を図る活動なども行っている。
世界各国に支部があり、日和には七つ、核となる本部はエッグザード国に設置されている。
一説によると、ルートの創設者はエッグザード国の秘密組織『M・I・F』の元長官とされているが、その情報は都市伝説、陰謀論として片づけられている。
今日希海たちが利用する訓練施設はルートの会員であれば誰でも利用できる。しかし階級によって利用時間、使える設備等が異なる。ランクはAからFまであり、ネオボランティア活動を行うリザエレ!は、一番下のFランク。
ネオボランティア活動を行うためにはルートの会員にならなければならないが、特別な理由がない限り、資格条件を満たせば一般人でも取得が可能。条件は性別問わず、日和国籍を持つ15歳から30歳までの過去三年間に学歴、職歴のある者。入会費は無料。ただし、年間五万バースコインの会費がかかってしまう。リザエレ全メンバー分の年会費は華山芽瑠が代表で支払いを行っている。
特別な理由――政治団体、宗教団体、反思想団体などに属している人間はルートの会員になることはできない。
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