ベランダのセミ

暑い。暑すぎる。どう考えても暑い。
気が付けばもう8月になり、一週間が経とうとしている。
朝起きて窓を開けた時聞こえてくる蝉の声がこの猛暑に拍車をかけている。

私の周りの学生たちは長期休みに突入し、海に旅行にお祭りに、早くも夏を満喫する中、私は一人へこたれてしまいそうな自分を抱えて、毎日を必死に生きている。

そんな私のちっぽけな日常の話を誰かに聞いてほしくなった。

ベランダに出て外の空気を吸うことが好きな私のマイブームは、小さな折り畳みの椅子を出して、サンダルを履いて、右耳にだけイヤホンをつけて音楽を聴きながらベランダでボーっとすること。

その一人の時間にいつの間にか転がり込んできた一匹のセミ。

数日前はひっくり返りながらじりじり音を立てていて、時折少し動いたりしてその度に私のことをビビらせていたセミは、気付けばびくともしなくなっている。
死んでしまったのだろうか。

ここで死んでいったセミはどうなるんだろうか。
人の手が出るまでここにいるのか、それとも風とか鳥とか何らかの形でいつの間にかいなくなるのか。

ねぇお前はどんな気持ちで死んでいくの。人生は楽しかったの。
この暑さはつらくないの。
私はつらいよ。
毎日暑いし、家の中に居てもなんか鬱々しちゃうから外に出ようと思うけど外に出たら暑さに疲弊するし。
夏ってキラキラだけど、自分がキラキラできない夏はただただ周りのキラキラが眩しくて痛かったりして。
私もこの夏を全力で楽しんでやりたいのになんかうまくいかなくて、そんな日が続くと、自分を見失いそうになったりして。
抜け出したいこの低空飛行の毎日をどう扱っていいのか分からなくなったりして。
私、今を抜け出せるのかな。
抜け出せなかったらどうしよう。
もう嫌だな怖いな。
でもまだへこたれたくない。あと少し躓いてしまったらもうしばらく起き上がることのできなさそうな今のこの私を、私はまだ諦めたくない。
大丈夫だって、きっともうすぐ抜け出せるって、この夏を自分のものにできるって、まだ強がっていたい。

まとまらない思考も、誰かに語り掛けるスタイルをとると意外とまとまったりする。

この夏が終わるまでこのセミは私の傍に居てくれるだろうか。
私の今年の夏を見守っていてくれるだろうか。

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