偶然の出会いは最高の喜び
偶然というものは素晴らしい。出会おうとして出会えるものではない、きっかけと成り行きの重なり合い。
最近、偶然が出会わせてくれる嬉しい発見が多い気がして、このささやかな喜びを書き記しておきたくなった。
嬉しい偶然の話1つ目は、新しい靴の話。
わたしは今までずっとスニーカーが大好きで、どこに行くにも、どんな服を着ても、スニーカーばかり履いていた。
歩きやすくて楽ちんだし、スポーティな見た目も可愛くて好きだった。
靴はスニーカー以外履きたくない! というくらい、足元は常にスニーカーだった。
ところが、わたしのそんなこだわりは、一足の靴と出会ったことで覆された。
駅前通りにある、小さな個人経営の靴屋さん。見るからに高そうな店構えだったから、自分一人では入ろうという気にはならなかっただろうそのお店。
…そう、普段のわたしなら、チラッと横目で見ただけで通り過ぎてしまうようなお店だった。
そんなお店に、なぜ入ってみる気になったかというと、きっかけは職場の店長に話を聞いたことだった。
靴が好きだと教えてくれながら、駅前通りにある靴屋さんでとてもかわいい靴を買った、ととても嬉しそうにしていた。
その話を聞きながら、わたしは不思議なくらい強く、「わたしも見に行ってみたい」と思った。
スニーカー以外の靴にはほとんど興味がなかったわたしが、素敵なパンプスやサンダルの話を聞いて興味を惹かれたワケは、その靴達がヨーロッパから買い付けられていると聞いたからだった。
外国のものや文化が大好きなわたしは、途端に心を動かされた。「ヨーロッパの素敵な靴」だなんて言われたら、見に行かない手は無い。
ちょっとお高めと聞かされてはいたけれど、わたしももう社会人、そろそろいい靴の一足でも持っておこうかなという気持ちもあって、次の休日、わたしは友達をランチに誘い、靴屋さんにも付いてきてもらうことにした。
店長が話してくれた通り、素敵な大人の靴がたくさん並ぶ店内。高そうなバッグもいくつか置いていて、「物の価値が分かる人のためのお店」という雰囲気。
普段、デパートに入っているお店くらいでしか靴を買ったことなんて無いわたしは、緊張しながら店内を一巡してみる。
私たちの他にお客さんはいなくて、一通り見たしそろそろ帰ろうか……と、もう一度入り口近くの陳列を見ていたとき。
はっと目を奪われた、真っ白な合皮の靴(形状からして多分シューティーと呼ばれる靴だろうけど、正しいかどうかは分からない)。
よく見ると、つま先とかかとの部分が薄紫色のグラデーションになっていて、凝ったデザインは他ではなかなか出会えなさそうだ。
一瞬で心を奪われてしまったわたしは、1万円のその靴をほぼ即決で購入。
履いてみたときも驚くくらい足にピッタリで、この出会いはもう運命としか思えなかった。
そして、似たような出会いが、その1週間ほど後に再び訪れる。
街を歩いていて、何度か入ったことのあるファッションビルに久しぶりに入ったときのこと。
今までは行ったことのなかった上層階に、そのときなぜか行ってみようという気になった。
大概心の赴くままに行動しているわたしは、その時既に他の店で買い物していたから、もう買わないようにしよう……と頭では決意していたものの、足を止めて引き返すことはしなかった。
そうしていざ足を踏み入れた上層階で、わたしは思わず「参ったな」、と思ってしまった。
とんでもなく私好みの、可愛いお店を見つけてしまったのだ。
どうやらヨーロッパの商品を揃えた古着屋さんのようで、その雰囲気、品揃え、全てが本当に私好みだった。
入り口に掛かっていたブラウスに早速目を奪われたわたしは、とても感じのいい販売員さんに話しかけられたのだけれど、話していてとにかく馴染みやすい。
形の似ている可愛いブラウスを色々見せてもらったり、奥の方に置かれていた、これまた可愛い靴を履かせてもらったりしているうちに、なんとその販売員さんが、わたしと同じ町出身だということが判明した。
結局、ボタンが可愛いブラウスと、赤茶のローファーを購入。選んでる間もずっと楽しくて、販売員さんに「また来てくださいね」と言われるまでもなく「また来よう」と思えるお店だった。
偶然なんて、成り行きの結果に過ぎない。それに意味を見出すなんて、馬鹿げてるのかもしれない。
それでも、偶然が出会わせてくれる喜びはやっぱり特別で、エピソードがある分、ずっと思い出に残ってくれるものだと思う。
意味なんてないかもしれないけど、わたしはそんな「偶然の出会い」を大事にしたいし、何か意味があると思いたい。
偶然が重なって出費が嵩んでしまった結果を突きつけられてしまった今ですら、やっぱりそう思う。
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