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コロナに私たちは対処できない。

2015年にTEDにてビル・ゲイツはきたる疫病の大流行に向けて最善の方法やアイデアを実現し今こそが対策を行うときだと訴えていました。

今回は実際にビルゲイツが語っていた様子をまとめます。


The next outbreak? We're not ready. |  Bill Gates 

子どものころ、私たちが一番恐れていた災害といえば核戦争でした。地下室にはバレル(胴の膨らんだ樽)がありその中には缶詰や水が蓄えられていました。核ミサイルが飛んで来たら私たちは地下へ降りてうずくまりバレルの食料を食べるのです。

今最大の世界的危機はこのような戦争ではなくウイルスでしょう。もし1千万以上の人々が数十年でなくなるような災害があるとすれば災害があるとすればそれは戦争というよりはむしろ感染症の高いウイルスが原因の可能性が大いにあります。

ミサイルではなく微生物なのです。その理由の一つはこれまで私たちは核の抑制に巨額の費用をつぎ込みましたが、疫病の抑制システムの創出についてはほとんど何もやってきてないことです。

よって私たちは次の疫病の蔓延への準備ができていないのです。

エボラの例でみてみましょう。皆さんきっとエボラについて新聞などで知っているでしょうがとても厳しい状況です。我々がポリオ撲滅の状況を追った時のケース分析ツールを用いてエボラの状況を追跡しました。

観察して分かったことは、「システムが不十分で状況に対処しきれていなかったという事ではなくそもそもシステム自体すら存在しなかった」ということでした。

事実非常に明らかないくつかのミッシング・ピース(欠けていたもの)は急な招集にも応じ出動できる、そして出動するべきだった疫病学者の一団はいませんでした。疫病の感染拡大状況を観察し分析する人々です。

症例レポートは紙ベースで送られてきました。報告書が電子化されるまでにとても時間がかかり、しかしその内容は間違いだらけでした。招集に応じ出動する医療従事者のチームもおらず、人々の準備や体制を整える手立てもありませんでした。

国境なき医師団は大変うまくボランティアたちを指揮しましたが、それでも私たちはこれらの国々へ何千人もの支援者を送り込むのに無駄な時間を要したのです。

規模の大きな伝染病が起こると何千万という支援スタッフが必要となります。現地では治療が適切に行われているかを確認する人員すら一人もおらず診断方法を見る人も、どんなツールが使われているべきか判断する人もいませんでした。

スタッフがいれば生存者の血液を摂取し、それからつくった人々に注射し免疫を作ってみたりできたでしょう。しかし、それは実現されませんでした。つまり見落とされたことがたくさんあったのです。

これらは実にグローバルな規模の失敗です。WHOには疫病をモニタリングするための研究費はありますが、こうしたことを行うための資金はありません。映画は現実とはかなり異なります。

「CONTAGION」(2011年のアメリカのスリラー映画。高い確率で死をもたらす感染症の脅威とパニックを描く)に出てくる疫学者たちは常に準備万端で現場に駆け付け救護に成功します。でもそれはハリウッドの空想世界です。

あらかじめ対策ができていないだけで次の疫病がエボラよりも劇的に危機をもたらすかもしれません。今年(2015年)エボラが蔓延した段階で見てみましょう。およそ10,000人が亡くなり、ほぼ全員が西アフリカの3か国の住民でした。

これ以上に感染拡大しなかった理由が3つあります。

1つ目はヘルスワーカー達による英雄的な努力です。エボラ患者を発見し感染が広がるのを防ぎました。

2つ目はウイルスの性質です。患者が感染源となるまで悪化した頃には通常症状が重すぎてベッドから動けません。

3つ目は感染は都市部にあまり行きつかなかったことです。これは単なる運です。もしエボラが都市部に感染拡大していたら症例数はもっとずっと増えていたでしょう。


次はそう運に恵まれないかもしれません。ウイルスの中には感染しても症状が無く、そのまま飛行機に乗ったり市場に行ったりするケースもあります。ウイルスの感染源はエボラのような自然由来の疫病だったりバイオテロでもあり得るのです。

よってシナリオが劇的に悪化する理由はいろいろとあるのです。この空気感染によりウイルスが広がるモデルを見てみましょう。1918年のスペイン風邪の例です。

猛烈な勢いで世界中に瞬く間に蔓延し3千万以上の感染者が亡くなりました。これは危機的な問題です。深刻にとらえなければなりません。

しかし実は私たちは優れた対策システムを作ることができるのです。私たちには既に活用できる科学や技術があるのです。私たちは携帯電話で公開された情報を得てまた逆にこちらから情報を発信できます。

衛星画像により人々の居場所や移動する様子を知ることができます。生物学における発展のおかげで病原体に応じて薬やワクチンを作る時間が劇的に短縮できます。

私たちにはツールがありますが、これらは世界規模のヘルスシステムの中に組み込まれなければなりません。そして危機に備えた体制作りが必要です。そのためのレッスンは繰り返し必要になりますが戦争に備えることから学べると思います。

兵士たちは常時招集に備えています。対策部隊の規模をスケールアップする為の人員や資源は潤沢にあります。NATOには非常に迅速に現地へ赴ける機動部隊がいます。

NATOは頻繁にウォーゲームを行って確認します。人員が十分に訓練されているか?燃料や物流の状況が理解出来ているか?無線周波数の設定は?そうして人員は常に完璧に出動可能な状態なのです。

こうしたことが疫病への対策にも必要なのです。では主なキー・ピース(重要な要素)は何でしょう?

第一に貧しい国々にしっかりとした病院・健康保証システムがある事。母親が安全に出産出来て子供たちが必要なワクチンをすべて受け入れられるような仕組みです。

アウトブレイク(感染症の突発的発生)の初期の兆候もそこで把握できます。次に医療従事者達の待機部隊が必要です。医療に携わるよう訓練され経験のある、いつでも招集に応じられる専門知識のある人々です。

そして彼らと軍隊を連携させます。軍隊の機動力を利用し物流を確保し感染地の隔離等を素早く行えるようにです。戦争ではなく細菌の拡大シュミレーションをして対策に欠けている要素をあぶりだすのです。

前回アメリカで最近シュミレーションが行われた際は2001年でしたがいい結果ではありませんでした。細菌との戦いは今のところ人類の負けです。

最後にワクチンの診断の分野での研究開発がもっと必要です。例えばアデノウイルス系ワクチンのように非常に速く効く目覚ましいブレークスルー(困難や障害を突破すること、またその突破口)もあります。

これに正確な予算はわかりませんが、予期されえる被害に比べれば大したことない額だと確信しています。世界銀行は世界規模でのインフルエンザ大流行が起これば世界の総資産が360兆円以上の打撃を受けると推定しています。

加えて何百人という死者が見込まれます。こうした投資は単に疫病への準備が出来るという事以上の大きな利益を生みます。プライマリケア(身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)研究開発。

これらは世界的に健康における公平性を向上させ、世界をより公正で安全な場所にすることでしょう。ですから私はこれが喫緊の課題だと考えます。パニックに陥る必要はありません。

スパゲッティの缶詰を買いだめしたり、地下室へ逃げ込む必要はありません。でも時間は味方してはくれません、今すぐに取り組み始めなければ。実際エボラの蔓延から得る何か一つ良い教訓があるとすれば、私たちが準備を始めるための警鐘となったということでしょう。

今始めれば次の疫病への対策は間に合います。





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