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患者さんの自己治癒力を引き出す診察室とは

以前勤めていた病院の院長先生は、患者から、
「何もしてくれない」と言われる先生だった。

診察中に、話しを聴いているのか、いないのか、
どんな話も、何も言わず静かにうなずいてくれる。

よく見ると、こくりコクリ…
「先生…いま、絶対寝てたでしょっ?! (# ゚Д゚)」
と、キレられたという逸話をきいたことがある(笑)


また、ある事務長さんから聞いた話、
以前勤めていた診療所の院長先生は、
ご年配にも関わらず、患者からしたわれ、
毎日100人くらい患者さんの話しを聴いていたが、
実は先生は難聴で、ほとんど聴こえていなかったそうだ(笑)


また、別の診療所の院長先生、
患者さんの言われるがままに、
なんでもかんでも、処方してしまうのだそう。
そのクリニックでは、
医者任せにしてたら身の危険を感じ、
患者さんのほうが、治療に積極的で、
薬にも詳しくなってしまってる(笑)


僕はそういう、世間的にはアウト!の先生の話しを
聴くと、すごくほっこりした気分になる。

患者さんが、前医の不満をこぼしてくれる時、
その憤りのお気持ちや不信感は、
全くもって正当だし、共感して聴くのですが、
密かに僕は、その先生の存在価値に、敬意を払う。

真剣に回復を求めている患者さんからしたら、
ふざけた話に聞こえるかもしれないが、
そこには、確かな自己治癒へのヒントが隠されている。


もう一つ、
こちらのRカフェ図書の中のエピソードから、引用。

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・・・腕のいい精神科医の話・・・

ある国で、ひどい戦争があった。
戦争の中で、多くの人が心を病んだ。
しかし、病んだ心を治せる医師は、その国には一人もいなかった。
医師もまた心を病んでいたからだ。

ある時、腕がいいと評判の精神科医が遠い国からやってきた。
何人もの患者がその医師を頼ってやってきた。
驚いたことに、その医師は、患者にほとんど薬を出さなかったという。
それなのに、患者はみるみる回復していった。

どんな診察をしているのかと興味を持った人が、
こっそり治療室を覗いてみたという。
そこには不思議な光景が広がっていた。

医師は何も質問せず、患者が一人話しつづけていた。
医師は、おだやかな笑みをたたえて、そこに座っているだけだった。

この医師が聞き上手だったのは無理もない。
この医師は、この国の言葉がわからなかったのだから。

ー 「生きているうちに」ジョン・キム著 より抜粋


主体的受動性。

医師である、ということは、
もちろん病の回復を援助したい、
という主体的な姿勢。

しかし心療内科の診察室は、患者さんの主体性を回復する場。
何かしてしまいそうになる衝動を手放して、
「受動的であること」をサービスとして、積極的に提供する場なのである。

ここが世間的な心療内科に期待するイメージと、現場の感覚の大きなズレがあると思う。
ここは、精神科医自身も、意識しないとすぐにぶれてしまう。
繊細で経験と修練のいる在りようなのだ。


このテーマ、しつこく、
何度も取り上げてきたような気がします。

なんだか、自分の診療が大して何もできないことの、
言い訳をしているような気がしてきますが、、、


はい、スイマセン、
言い訳でした(笑)



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