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英国でリカバリーについて考えた〜その2

執筆者:あん

リカバリーカレッジ研修のため、英国上陸を果たしたあんちゃんは気づく。「そうだ…私…英語話せないんだった…」 まったく理解できないままに進行される研修。何か分かんないけど解ったような顔して頷きあう他の参加者たち。「通訳がくるまではみんなで助けあうはずだったのでは…?」 意を決してあんちゃんはある行動とる。 その先であんちゃんを待ち受けていたものとは!?


 研修1日目は、まったく英語が分からずに惨憺たる気持ちで帰ってきた。一日の終わりにみんなで集まって、その日の内容を確認したが、ほとんど私から提供できるものはなかった。 参加者の英語力は、留学経験がある人、コミュニュケーションが出来る人、聞き取れる人、私のようにほとんどお手上げの人…いろいろだった。誰がどれぐらい理解しているか分からないが、分かっている人だけで頷きあっているような印象だった。 お互いに遠慮や謙遜もあったと思う。

 もともと今回の研修は、諸事情で、通訳をお願いするのは日程の後半だけで、それまでは、みんなで力を合わせて何とかしよう、ということになっていた。 悶々として部屋に帰り、いろいろ考えて、翌日の研修の前に「私は英語が分からないので、もう少し講義の時に内容を伝えて欲しい」と、勇気を出してみんなにお願いした。りえちん以外、ゆっくり話をしたことがない人がほとんどだった。

 その日は、全体の理解を確認してもらえたし、私は英語が分かる人の隣に座って、時々フォローをしてもらった。ただ、講義の流れによっては、うまく通訳がはさめないところも多かった。研修日程の後半は、予定通り通訳が入り、言葉のハンディは大きく解消された。これで、すべてうまくいったように思えるのだが…実際は違った

 びっくりするほど、私は傷ついていた

 それは、イギリスから帰ってからもしばらく続き、もう2度とイギリスには行きたくないと思うほどだった。

英語を話すひとでいっぱいのピカデリーサーカス

 自分に力が無いこと(英語が分からない事)、それを伝えること、実際、助けてもらうこと、すべてが困難だった

 どうして、もっと配慮してくれないのか、と被害的になったり、馬鹿にされているように感じたりする中で、自分を無力だと感じ、気持ちが固く閉じていくのが分かった。 後半、通訳が入り、参加者の顔ぶれがだいぶ変わっても、一度、固くなった気持ちがほどけることはなかった。そして、周りに傷ついていることを悟られたくなかった

 英語が分からないことが、私のすべてではないのに、本来持っていた自分らしさが失われ、自分の力が奪われていくのを感じていた

 そんな中で、「ああ、これは…」と、気がついた。もしかしたら、精神的に困難な経験にあった人たちの世界と似ているのかもしれない。 
 環境の変化、能力の評価、自信の喪失、「こう思われているだろう」という猜疑心、不信感、被害感、疎外感、同情される感覚、そんな感覚の中で、本来の力が奪われていくスパイラル…。 そうか、こんな大変な状況からリカバリーを目指すんだ…。 それが、どんなに大変な事か、ほんの少し分かった気がした。 この研修で、一番学んだことは、この経験かもしれない

 また、機会があれば、イギリスに行ってみたいと思えるようになったのは、それから何年もたってからだった。

【執筆者自己紹介】あん
東京の病院で勤務した後、名古屋の事業所で働き、さらに西に流れて高知に在住。15年ほど前に、名古屋の住宅街の小さな事業所で、少人数の仲間と、メアリー・エレンコープランドさんに出会う。小さなワークショップでWRAPに初めて出会い、リカバリーの旅が始まる。夜寝る前のヨガと、コーヒーが元気でいる道具。


【お知らせ】

📣リカバリーカレッジ高知へGO!

 リカバリーカレッジ高知の誕生を記念して、7/23(土)「体験会」7/24(日)「わいわい座談会」と、二日連続でイベントを開催します。
 リカバリーカレッジに関心のある方、メンタルヘルスやご自身の心地よい生き方に関心のある方など、どなたでもご参加いただけます。みなさまのご参加をお待ちしております。

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