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50歳間近のスプラトゥーン3「小説風・ビッグランの奇跡」

バンカラ街は風雲急を告げている…いつもは辺境に追い込まれていた邪悪なシャケどもが、我々の生活圏にまで侵攻してきた。

今回の奴らの標的ターゲットは、皆の憩いの場「スメーシーワールド」だ。いつもなら笑顔があふれるこの場が今回の戦場となる。この戦いは「ビッグラン」と名付けられ、史上稀に見る攻防戦となるだろう。


その一報を聞くや否や、俺は普段の装いをロッカーに片付け、赤い作業着に着替えた。この作業着は動きやすいのは良いのだが、若干垢抜けないのが辛い。まあ、雇われ者だから支給品には文句は言えないのさ。

口入屋のクマサン商会のロビーには、バンカラ街の危機を救うべく、数え切れないイカ・タコ有志が集結し、否が応にも「打倒シャケ」の意気込みが盛り上がってくる。
人だかりで息苦しささえ覚えるロビーの中には、見知った顔が何人かいた。俺は彼らと咄嗟のハンドサインで意思疎通を図り、同時に活動すべく申し込んだ。

順番待ちの間、ロビーにいるイカ・タコ有志の出で立ちを眺めていたが、ある者は青い作業着、ある者は黄色い作業着でいる…へえ、エリート様は身なりまで違うってこってすか。

俺がムシャムシャスナックを食べながら減らず口を叩いていると、青の作業着を来た友人が耳元で、
「何言ってんだ。オカシラシャケを倒した時のウロコで交換出来んだよ!1個も持ってねぇのか?」と叫んだ。

俺は渋い顔をしながら作業着の胸ポケットを探ると、銅や銀のウロコがポロッと出てきた。
その様子を見ると、今度は黄色の作業着を来た友人が、

「それよ、それ。さてはサーモンラン全然やってないのね?」

そう言われると、確かにサーモンランはあまりやってなかったな。色んなブキを使わないといけないし、何より自由を愛する俺としては、他人にこき使われるようなことはしたくない。
だが、今回はバンカラ街の危機だ。俺たちゃ義勇兵みたいなもんだよな!?カッコいいじゃないか。


「俺たちの出番だ、行こうぜ!」
「気合入れて行くわよ!」

「やるしかねぇか…」

やけに乗り気の友人たちに背中を押され、俺は背中を丸めながらスメーシーワールドに向かうヘリコプターに乗り込んだ。

ヘリコプターの途中で冗談なんか飛ばして緊張を和らげてみていると、乗務員が「ここから先、ヘリは危険なので自力で現場まで飛んでいただきます」と冷たい一言。

「おいおい、サービス悪いぜ!」

と、また減らず口を叩いていると、青の作業着の友人にヘルメットをコツンとやられ、
「まさか、飛べねぇってんじゃないだろうな!?」と一撃を喰らわされた。

「わかったわかった。現場はあそこだな?こうなりゃ派手にやってやるぜ!」

俺はヘリのタラップから渾身の力を込めて飛び出した…

スメーシーワールドは不気味な色の雲に覆われ、シャケの惨禍に息絶え絶えだ。

俺と友人たちは飛び降りながら、その景色を目に焼き付けた。こんな気持ち悪い色の遊園地なんかあるもんか。一刻も早くシャケどもを追い払って、いつものスメーシーに戻さないとな。

いざ戦場に降り立つと、支給されたブキでそそくさと地面を塗り広げ、シャケの襲来に備える。

「あそこの壁を塗っておくと楽だぞ」
「ヒカリバエが来たら、あそこに登って戦うのよ」

うーむ、なかなか詳しいじゃないか。サーモンランは慣れてないから迷惑をかけてしまうとは思うが、ここまで来たら引き下がれない。

「あっちだ!来るぞ!」

青の作業着の友人の叫び声が響く。俺たちはブキを固く握りしめて、全速力で駆け出して行った…


戦闘は激烈を極め、2匹連なったヘビに囲まれたり、モグラに喰われたり、竹の水鉄砲の威力に嘆いたり、それはもう様々な経験をした。

何度も死に、何度も蘇った。

戦いの最中の記憶はほとんどない。無我夢中ってやつだ。でも、無我夢中でも正義のために戦ったってことだけは覚えている。

そして、何度かオカシラシャケと対峙した。綱を張るだけあって、何度挑んでもヤツは倒せなかった。それだけが心残り。


「もうそろそろ時間です。ヘリにお戻りください」

胸元の無線機から、ヘリの乗務員のアナウンスが聞こえてきた。

「いてて…俺は腰が痛くなっちまった」
「これだけ倒せば少しは楽になるでしょ」

友人たちも満足感・高揚感でいっぱいのようだ。
我々はスメーシーワールド付近の高台に停めてあるヘリに乗り込んで帰路についた。

「なんだ、オマエの作業着ボロボロだな!さては相当やられたな?」

俺の赤い作業着は、確かに何度も倒されてボロボロになっている。まあ、ほとんどサーモンランをやってなかったから、しょうがないってところだ。

そんなボロボロの作業着の破れ目から、キラリと光る何かが落ちた。

「これ、アナタの銀ウロコじゃない?」

黄色の作業着の友人が、何枚かの銀ウロコを拾って渡してくれた。

「ああ、そうみたいだな」

「合計何枚あるの?数えてみて」

俺は手袋を脱いで、若干老眼が入った目をこすりながら、銀ウロコを一枚一枚数えた。

「10枚…だな」

その声を聞いて、友人たちが歓声を上げる。

「銀ウロコ10枚なら、新しい作業着が交換出来るぞ」
「やったじゃない!」

そ、そうだったのか…ロクに交換品のチェックもしていなかったけど、交換出来るものなら交換しておくか。
そしてヘリがクマサン商会に着くと、足早に交換所に行った。

「銀ウロコ10枚だね、何色の作業着と交換するんだい?」

ああ、色が選べるのか。黄色は彼女とかぶっちまうから、俺は緑にしてみようか。

「じゃあ、緑の作業着を頼む」
「緑の作業着、いいわねえ。絶対目立つわよ」

交換員に太鼓判を押され、俺は新品の緑の作業着をもらい、袋を破いてさっそく着替えてみた。


「へえ、緑ってのもいいもんだな。ま、これからヨロシク頼むぜ」

俺は新しい作業着の胸元をポンポンと叩くと、興奮冷めやらない様子でしゃべり続けている友人のところへ走って行って叫んだ。

「ビッグランって面白いな。明日も行こうぜ!」




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