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新しいコミュニケーションのレシピ|DIGITAL CONTENT EXHIBITION 「SEED 5」

六本木からこんにちは。
株式会社Ray コミニュケーションデザインユニット
クリエイティブディレクターの藤野と申します。

いきなりですけども、

SEED

というRayの自主イベントがございまして。今回はそのお話を。

何を隠そう、私が所属する部署は社内通称「デジタル部」。
普段は広義のデジタルコンテンツの企画・制作を行なっている部署なので、誰が呼んだか「デジタル部」。撚りゼロで清々しい。
そのデジタル部の精鋭達が、<自分たちが関心のあるテクノロジーを使って、自分たちが作りたいコンテンツを作り、ささやかなドヤ顔を添えてお披露目する>それが「SEED」というイベントなのです!
 
と言うのは半分本当で。もう半分は、「こんな技術があって」「それを使うとこんなことが出来て」「更にこんな風にすればあんなことまで」・・・という、作品としてカタチになったプレゼンテーションを通して、普段お取引をさせて頂いている皆様方にデジタルテクノロジーのトレンドと、Rayの一つの側面である「デジタル部」の存在とそのスキルを知って頂きつつ、ビジネスアイデアの「種(SEED)」をご提供できれば。とまあ、要はそういうことなのでございます。

そんなSEED。件のパンデミックもあって開催を休止していたのですが、この度約4年半ぶり(!)に「SEED 5」として復活、去る4月17日〜19日の三日間、六本木AXIS GALLERYにて開催と相成りました。
本記事ではその「SEED 5」に出展されたコンテンツのご紹介を中心としたイベントレポートをお送りしまーす。


こちらがSEED5のフライヤー。 中央の植物の種子をモチーフにしたグラフィックは、
新進気鋭のアーティストとしても活躍する弊社ディレクター竹中作。
会場であるAXIS GALLERY前にもポスターを掲出。
キーカラーのイエローが春の日差しに映えますね。
エントランス。
中はこんな雰囲気。
プロジェクションを多用している関係もあって必然的に薄暗くムーディーな空間に。


▼ 「SEED 5」アーカイブ映像




出展コンテンツ

コンテンツ紹介①|kairos

Dir:藤野卓俊 Eng:北島慎也

最初にご紹介するコンテンツは私藤野がディレクション、そして天才イケメンエンジニア北島がプログラミングを担当したインスタレーション、kairosです。
kairosはリアルタイムのライブ映像の上に様々な「異なる時間の流れ」に則った過去映像が次々とオーバーレイされていく、時間をテーマとした作品です。
過去と現在、エントロピーの増大と減少が複雑に交錯するアウトプットは「今」を見失う感覚を齎しそれは逆説的なメッセージとして・・・とかなんとかそれっぽいことを並べ立てようと思えばやってやれないこともないのですが、要はアレです、私も今年で43歳なんです。過ぎ去った時間や、残された時間・・・みたいなものに想いを馳せちゃったりもする、そんなビターなお年頃なワケです。
そんな風にぼんやりと「時間」というものを意識すること、を出発点としながら、テーマ性と小さな子供でも楽しめるシンプルにFUNな体験、という2点を両立させることを目標に制作を進めたのが本作品です。
結果、私と北島の趣味全開!なクールなコンテンツに仕上がったと自画自賛しておりますし、この作品が時間に対する思索のきっかけとなればこれほど嬉しいことはありません。・・・いや、あるかな。ありますねきっと。
ちなみに今回のSEED5では、弊社ショーテクニカルユニットの協力の下、湾曲可能な次世代LEDディスプレイ「RUBY」を半円型に設置、
映像装置として使用しました。曲がるって、良いよね。


コンテンツ紹介②|見えないAI美術館

Dir:田中蓮 Eng:細根和貴

次にご紹介するのは、入社3年目のディレクター「田中のフリー蓮」と、名は体を表す本当に細いエンジニア、細根のタッグによるコンテンツです。
中身のない、ブランクの額縁がポツンと宙に浮かんでいる様はコンセプチュアルなモダンアート作品を思わせますが、こちら、MRデバイスを通して鑑賞するコンテンツとなっており、体験者がピックアップした言葉の組み合わせをソースに、AIが生成した画像をMR上の美術館内で鑑賞する、という作品なのです。
生成AIを活用した作品をSEED5では3作品出展したのですが、まー、好きですね、若い子は、AIが。トレンドに敏感なヤング達は。トレンドに敏感でありたいと思っているミドルエイジのかく言う私も、今回のSEEDの制作において初めてきちんと生成AIに触れ、その進化を実感!
と言いたいところですが、癖がすごいです、AIってのは。変なやつです。気分屋なんですかね?
ぶっ飛び過ぎ!っていう画像が出来上がったと思ったら、フツー過ぎ!っていう画像が出来上がったり。その辺のフワフワ加減がなんとも発展途上な感じ。(逆に言うと、そういった発展途上感が生み出す奇妙なグルーヴ、が非常に「今」な気もします)
田中と細根も、そういった「癖」を上手く手懐けようとプロンプトやモデルの選定には四苦八苦していた様ですが、AIとMRというトリッキー?な要素を、美術館、という真っ直ぐなモチーフの中に落とし込むことで上手くバランスをとった、完成度の高いコンテンツに仕上がっていると感じました。


コンテンツ紹介③|音を視る

Dir:小松弘樹 Eng:辻栄晃

続きましては、こちらも入社3年目、まだまだフレッシュな小松ディレクターと辻栄エンジニアによる作品です。
視線をトラッキングできるデバイス「アイトラッカー」を活用したコンテンツなのですが、この作品の肝は、<「視覚」を入り口にした「聴覚」作品>であること、です。
特定のものを視る、つまり何かを注視することは日常生活において誰しもが当たり前のこととして行なっていますよね。
しかし、特定の音を聴く、となると途端に困難になります。人々の靴音、交わす会話、車や電車の走行音、街頭ビジョンに流れるCM・・・様々な音が飛び交う中、例えば「あの30m先の自販機の前に立っているNew Jeans風の可愛い女の子達の会話だけを聞きたい」と願ったとしても、悲しい哉、ニュジ風の可愛い女の子達の会話だけを抽出して聴くことは叶いません。ニュジ風の可愛い女の子達(しつこい)の声は、渾然一体となったノイズの濁流に埋もれるばかり。ああ、ウォンヒちゃん(それはILLIT)。
が、しかし、それを可能にするのがこの「音を視る」です。特定の対象を注視することでその対象が発する音だけが耳に届く、逆にいうと、対象以外が発する音が消失する。そんな新感覚・視聴覚体験。個人的には、超人的な集中力を擬似体験、とそんな風にも感じました。
「視ること」を「聴くこと」に繋げるなんて、なかなか「着眼点」が良いですよね(上手く言ったつもりが全く成功していません)。


コンテンツ紹介④|Wonder Wall

Dir:猿渡啓太 Eng:伊藤一平

4つ目です。
こちらは入社2年目のホープ、ディレクターの猿渡と、デジタル部エンジニアチームを束ねるリビングレジェンド、伊藤による作品です。
以前のSEED4でMagical Frameという作品を出展したのですが、今回のWonder Wallはその進化版、という位置付け。前Magical Frameはヘッドトラッキングにより鑑賞者の頭の位置・角度に応じてモニター内の映像のアングルが変化する、という作品でしたが、Wonder Wallはそれに「プロジェクション」と「立体視(3D映像)」という要素を加えたものです。
つまり、鑑賞者の頭の位置・角度に応じてアングルがリニアに変化する没入型3Dプロジェクション映像、ということですね。没入、と聞くとVRや最近流行りの「イマーシブシアター」のように映像世界を鑑賞者の周囲に(全方向的に)展開する、という方法を思い浮かべますが、この作品における鑑賞の対象はあくまで1枚の平面スクリーンである、というのがポイント。
あたかも<もう一つの世界が”不思議な壁”の向こうに広がる>様な一風変わった没入体験を味わえます。ハードコア文系な私は全く理解していないのですが、ヘッドトラッキング × プロジェクション × 3D映像、となると視差の計算?が?何やら?すごく?複雑?なようで、伊藤は自分で自分に困難な課題を課してえらく燃え上がっていました。流石の変態です。


コンテンツ紹介⑤|Armic

Dir:田村芳亮 Eng:鈴木亜希子

続いては、主食はアロエヨーグルトです、みたいな顔して実は二郎系ヘビーユーザーである田村がディレクション、エンジニアチーム紅一点である鈴木がプログラミングを担当した作品。
「腕」armと、「真似る」を意味するmimicを組み合わせたタイトルを持つこの作品が2つ目の生成AI活用コンテンツなのですが、どんな内容かと申しますと、ツマミをいじるとロボットアームがグネグネ。その動きを認識したAIがロボットアームを真似っこする形で生成した映像がまたグネグネ。と過剰にグネグネするグネグネ系のコンテンツとなっております。
ロボットアームの手前に設置した透過液晶に、AI生成による映像が映し出される重層的なプレゼンテーションとなっているのですが、なんというか、有機的に映るロボットアームの動きと、生成された映像の奇妙な味わいのマリアージュが絶妙で独特の存在感。良い意味で、とっても気持ちが悪い。人工の身体(ロボットアーム)と頭脳(AI)が浮かび上がらせる不気味の谷。個人的には大好きな世界観です。
余談ですがSEED5開催の1週間前に、プログラム調整中にアームがショート、執務室内に焦げ臭い匂いが漂ったのも今となっては香ばしい思い出です。


コンテンツ紹介⑥|Picture-monogatari

Dir:新岡陸 Eng:北島慎也

6つ目はAI活用コンテンツの3/3、Picture-monogatari。
青森出身、生野菜が嫌いな新岡がディレクションを、kairosに続き2度目の登板、北島がプログラミングを担当しています。
こちらの作品は、体験者がアップロードした写真を「現在」と定義し、その写真を基にしてAIが「過去」と「未来」を連想し生成、テキストと画像で「もうひとつの物語」を紡ぎ出す、というコンテンツです。
物語(ストーリー)のテイスト/ジャンルと、時間軸を任意のものに設定可能で、最終的に出力される「物語」はポストカードに印刷され体験者が持ち帰れる仕様になっています。(来年の年賀状にいかがすか?)
人物が写っている写真はもちろん、例えば、風景や食べ物の写真からもきちんと筋が通った物語が生成されるところが凄いぞAI。
今後の進化を考えると末恐ろしいと同時にワクワクしますね。ぶっ壊されればいいんですよ、いろんなものが。あ、急になんかごめんなさい。なんか変な感じになっちゃいました・・・と、ここでネタバレすると、皆さんが読んでいるこの文章も実はAIで生成したものなのです。ビックリしました?嘘ですけどね。


コンテンツ紹介⑦|VENATION

Dir:竹中遼太郎 Eng:黒田圭

大トリを飾るVENATIONは、新進気鋭のグラフィックアーティストとしても頭角を現す竹中がディレクターを、そしてヒゲとメガネとサラサラロングがトレードマークの黒田がエンジニアを務めました。
計測した体験者の脈拍を基に曼荼羅風、と言うかフラクタル風、と言うか、な唯一無二のパーソナライズアートを生み出すこの作品、アウトプットのデザインモチーフは植物の「葉脈」です。
この辺りのテイストが非常に竹中らしい。(本稿の頭でもご紹介した)フライヤー内の種子をモチーフにしたグラフィックにも顕著なように、竹中の作品には一貫した「有機性」が見られます。
多く用いられる曲線に血が通っている感じ、と申しましょうか。バイタルデータのビジュアライズ、というテッキーな作品でありながらそのアウトプットは非常にオーガニック。滲み出る作家性が頼もしい限りです。
バイタルを取るものの、煩わしいオペレーションもなくストレスフリーに体験できるコンテンツになっており来場者の評判も上々。ダウンロードした自身の「葉脈」を愛おしげに見つめる皆さんの姿が印象的でした。

VENATIONに隣接するブースでは、これまでに竹中が手掛けたグラフィック作品の展示も。
コンペティション受賞作を含むアートピースを掲出しました。爆イケ。


コンテンツ紹介⑧|REPEVENT®・Selfie JAM®

おまけ。
会場内では、今回のSEEDの事前予約・入場受付システムとしても活用した「丸ごとイベント管理システム」REPEVENT®、みんなの自撮り動画を素材としたコラージュムービー自動生成システム Selfie JAM®、2つのRayオリジナル商材の展示も実施しました。
絶賛サービスインしていますのでご興味のある方はぜひ―。
https://raydigital.jp/REPEVENT/
https://raydigital.jp/selfiejam/


まとめ

というわけで以上、出展コンテンツのご紹介を中心にお送りしましたSEED 5レポートでした。

冒頭でもお伝えしましたが、SEEDのコンセプトはその名の通り「種」。言ってみれば出展したコンテンツはデジタル部の初期衝動であり、あくまでもプロトタイプです。
そのままエイッ!案件に転用!、と言うよりは、これらの「種」を今後どうやってビジネスに育てていくか、というところからご一緒できればこれ幸い。と考えておりますので今後ともひとつご贔屓によろしくお願いできればと、このように思う次第であります。

個人的には、4年半ぶりの開催となった関係でコンテンツを手掛けたディレクター・エンジニアともに「初SEED」である若手が多数、というところがポイントなSEED 5だったと思います。(普段のクライアントワークとは異なり)まっさらな白紙の状態から自分たちが作り上げた作品をお客様にご体験頂き、その生のリアクションを目の当たりにすること。そこで得られた手応えや実感、或いは後悔は、今後「作り手」としての自覚や矜持に繋がっていくのではないか、と。彼らの心にもキラリと輝く一粒の種が蒔かれたのではないか、と。そう思うのであります。
とかなんとか言っちゃって柄にもなくエモめな感じで締めちまおうと思います。

今回のSEED 5は三日間を通して500名以上のお客様にご来場いただき、大盛況の内に幕を閉じることが出来ました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。
次回SEED 6の開催がいつになるかはGOD ONLY KNOWS、ではありますがいつか、きっと、また会う日まで。

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